カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
260 / 421
第十章 黒の主、黒屋敷に立つ

251:獣帝国最強との邂逅

しおりを挟む


■エメリー 多肢族リームズ(四腕二足) 女
■18歳 セイヤの奴隷(侍女長)


「やはり【不死王の紅玉】はレアドロップのようですね」

「ご主人様も無理に狙う必要はないと言っておったではないか。出ないものはしょうがなかろう」

「す、すみません、私が錬金に使っちゃって……」

「いえ、それもご主人様の指示ですからユアが気に病む必要はないですよ。展示よりもアネモネの杖を強力にする方が重要なのですから」


 リッチのドロップ品を集めながら、フロロやユアとそんな会話をします。
 とりあえず二回ほど倒してみましたが【骨、髑髏、杖、衣】くらいですね。あとは魔石。
 なかなか【不死王の紅玉】は出ないようです。

 いっそ紅玉を集めるついでに骨を集めて髑髏と共にマネキンを作り、そこに衣と杖を装備させれば、等身大のリッチが出来上がるのではないでしょうか。

 そこまで骨が集まるかが疑問ですが……しかもどの骨も同じ部位のようですし。


 そうこうしているとサリュから報告が入りました。


「エメリーさん、どこかのクランが近づいてきますけど」


 クラン? 三階層での探索を主とするクランはいくつかありますが、『不死城』の最上階、この玉座の間まで来るとなると限られますね。しかもサリュの様子では一組。

 サロルートさんやバルボッサさん、ドゴールさんたちならば一組では来ないでしょう。
 となるとメルクリオ殿下たち【魔導の宝珠】か、もしくは……。


「なんだ、先客ってのはお前らかよ、くそが」


 玉座の間の入口から声を掛けて来たのは赤い髪で筋肉質な獅人族ライオネルの男性。
 そしてクランメンバーと思しき十七名の獣人系種族。

 ――やはり【赤き爪痕レッドスカー】ですか。

 ずかずかとこちらに近づく彼らの前に私が立ちます。
 しっかりと侍女の一礼。


「初めまして【赤き爪痕レッドスカー】の皆様。私はセイヤ様の下で侍女長を務めておりますエメリーと申します。申し訳ありませんがたった今ここを殲滅し終えたばかりですので、リッチと戦うのでしたら少々お時間を置いたほうが宜しいかと」

「けっ! リッチがどんなもんかって楽しみに来てみりゃ、【黒の主】も居ねえメイド連中だけで倒せるような雑魚かよ! くだらねえ! そんなんで四階層に行けずにいたとか、やっぱカオテッドの連中はレベルが低いんだな!」


 彼の後ろに控えたメンバーたちは大笑い。
 面白い要素がどこにも見当たらないのですが。


「おまけに俺をコケにしやがった角折れ鬼人族サイアンも居ねえ! ここに居たらぶっ殺してやったのによ!」

「彼女は所用で別の場所におりますので」


 ガブリオルの言葉に一部の侍女から殺気が出ましたね。すぐに睨みつけ、殺気を抑えるよう目で指示します。
 手を出すんじゃありませんよ? ツェン、ラピス。


 以前の打ち合わせで、【赤き爪痕レッドスカー】がこちらの情報を探っているという話があった時、ご主人様は相対する事も視野に入れておいででした。
 その際、戦う事になってもこちらの手の内を見せない事を言明されたのです。

 例えば、ミーティアの【神樹の長弓】、私とネネの魔剣、ネネの索敵範囲、サリュやシャム・マルの高位神聖魔法などなど。

 【赤き爪痕レッドスカー】が″悪″ならば殺す事も止むを得ないが、基本的にはただの・・・粗暴な組合員であろう。ならば殺さない前提で、こちらの情報を制限すべきだと仰いました。
 見せても良い手の内は、組合員としての常識の範囲内・・・・・・に収めるべきだと。


 今ここで戦うとなった場合、どうしたものかと私は<並列思考>を利用し、瞬時に考えを巡らせます。

 こちらを殺す前提で襲い掛かって来た場合、殺しても良いでしょう。
 しかしただ痛めつける目的で襲ってきたら殺すわけにはいきません。

 となると私も武器を用いずに倒すべきか。いえ、【騎士王の斧槍】ならば見せても問題ないでしょう。
 あの石突で骨を折るくらいならば問題ないはず。
 あちらには【聖女】と呼ばれる回復役ヒーラーが居るはずですし、<超位回復エクストラヒール>とは言わないまでも<高位回復ハイヒール>くらいは使えるでしょうから。


 そんな事を考えていると、ガブリオルに近づき、言葉を掛ける者がいました。


「な、なあガブリオルさん。倒す手間が減ってラッキーじゃないッスか! さっさと四階層に行っちまいましょうよ! リポップしないうちに!」

「ああん? マイコー、てめえ、嘗められっぱなしでほっとけって言うのかよ」

「俺たちの目的は最初から四階層じゃないッスか! ね! 早く行きましょうよ!」


 この猫人族キャティアンの男性が【超覚】のマイコーですか。
 ヘラヘラと笑っている【赤き爪痕レッドスカー】の中でこの人だけが怯えた表情を見せます。
 ふむ、先ほどのかすかな殺気が<危険察知>に反応したのでしょうか。さすがは異名持ちの斥候ですね。


「ちっ! まあいい。てめえの言うとおりだ。おい多肢族リームズ、あの角折れに言っておけ。次に会った時にはぶちのめすってな!」

「申し伝えておきましょう」

「おい行くぞてめえら! とっとと四階層だ!」


 私たちの間を通るように、彼らは玉座の間の奥の扉から出て行きました。
 通り過ぎる際にもヘラヘラと笑いながら、しかしマイコーという人は逃げるように先頭で。

 居なくなった途端に侍女の皆が私の元に集まります。


「おいエメリー、いいのかよ、素通りさせて。ぶっ飛ばしちゃえばいいじゃねえか」

「そうよ。あんなの殺していいじゃない。迷宮の中で殺しても証拠隠滅出来るんでしょ?」


 ツェンはいいとして、ラピス、貴女は仮にも王女なのですから物騒な発言は止めて下さい。


「構いません。殺せばご主人様の御意思に反しますので。それに口は防げても我々のどこかから漏れるかもしれません。そうなれば不利益を被るのはご主人様です」


 我々の隷属契約は非常に軽いもの。未熟な侍女が多い中で契約に守られていない秘密を、どこで吐露するかも分かりませんからね。手を出さない方が安全というわけです。

 それに――。


「我らが手を出さなくとも勝手に自滅しそうな気がしますがね」

「ん? 四階層でか? 亀とかに会っても逃げ出すだろうぜ?」

「いえ、帰りがけにここ・・を通るのでしょう?」

『ああ……』


 四階層での目的はおそらく【黒曜樹】でしょう。
 【黒曜樹】を伐れば魔物の群れに襲われる。それを凌いでもトロールなど四階層の魔物自体が強いですから苦戦するでしょう。
 なんとか逃げきれても、ここへ戻って来てリッチとの戦いになるのは確実。

 リッチと戦うつもりでここまで来たのですから勝算があるのでしょうが、あの様子ですと……難しいでしょうね。

 嘗めきってましたし、初見でリッチとガーゴイル二体、デュラハン二十体を突破するのはたとえSランク相当の腕があっても厳しいように思えます。

 それこそ【聖女】が<聖なる閃光ホーリーレイ>でも撃てれば別ですが……考慮するまでもないですね。


 我々を見下した罪はリッチに裁いてもらうとしましょう。
 このの主ですからね。一応。


「さて、というわけで我々はリッチ狩りを継続します。いいですね」

『はいっ』


 ここを出る時はちゃんとリポップしているのを確認してからキャンプ地に帰りましょう。
 リポップしてない状態で彼らを通すわけにもいきませんからね。



■ガブリオル 獅人族ライオネル 男
■39歳 Sランククラン【赤き爪痕レッドスカー】クラマス


 螺旋階段を下りながら、俺は隣に並ぶマイコーを横目に見る。
 こいつ……さっきから様子がおかしい。


「おい、マイコー。ちゃんと斥候しろよ? てめえさっきから何なんだよ」

「い、いや、すまねえッス、ガブリオルさん……さっきのあいつ……異常だったもんで……」


 あいつって……あの多肢族リームズか?
 侍女長とか言ってたが、戦闘種族でもねえ生産特化のクソ種族じゃねえか。
 それが異常とかどういう事だよ。


「いや、あいつが一番ヤバイッスよ。鬼人族サイアンとか目じゃねえ……一瞬、俺の<危険察知>が今までに感じた事ないくらい反応したんスよ……」


 なんだそりゃ。ヤツがそれほど″危険″だってか? ありえねえだろ。
 恐らくリッチと戦う前提で乗り込んだから気が高ぶってるんだろうな。
 そもそも【超覚】のマイコーが″危険″と感じる機会さえ少ないんだしよ。

 今日は四階層の探索を少ししたら早めに休むのもいいかもしれねえな。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...