カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十一章 黒の主、博物館に立つ

256:例の吟遊詩人の加入

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■23歳 転生者


「とりあえずその珍妙な歌はやめようか」

「ええっ!? な、なんでですネ!?」

「ふむ、セイヤにはこの歌の革新性が分からないですのか、残念ですね」


 サロルートはやれやれと首を振っている。帰れよ、お前もう。

 探索から帰って翌日、隣の物件を見に行こうかという所でやって来たのはサロルートと、奴隷になりたいとか言う角牛族バッフェルの吟遊詩人、リンネという女性だった。

 褐色肌に赤いショートヘア。頭の横から出て下から前へと向いた立派な角が特徴的な娘だ。
 二五歳という事だがスレンダーな体型と言動も合わせて子供っぽく見える。身長はエメリーと同じくらいだが。


 サロルートも律儀というか、責任感があるというか、俺たちの帰還を知ってすぐにリンネと共に来た。
 紹介すると言った手前、無下にも出来なかったのだろうが……断ってくれても良かったのに。

 そして何がどうなって奴隷になるとか言い出したのかと聞いてみた。

 結果は……よく分かんない。

 行商人から吟遊詩人になったのも、どの琴線に触れて奴隷になるとか言い出したのかも、あの歌のどこにサロルートが惹かれたのかも分からない。もう俺には何も分からない。


 路上でたまに見かける吟遊詩人はリュートを鳴らしながら、英雄譚を″喋る″もしくは″語る″といった感じのものだ。
 それに対しリンネの場合、音のリズムに合わせ言葉を乗せる――音程とかメロディとかは抜きにしても、これは″歌″だと思う。
 そういった意味で斬新ではある。革新的でもあるのだろう。

 が、何だよその歌詞は。

 なんとなく昔のロボットアニメのオープニングを彷彿とさせる。

 水木〇郎さんが歌ってそうだ。く・ろ・やぁ~~~~しきっ! って。


「まぁ歌はともかく奴隷になりたいって言われてもなぁ。基人族ヒュームの奴隷になるって事だぞ? それに見て分かるように奴隷の皆には侍女としても働いてもらうし、一緒に迷宮にも潜って戦ってもらってる。それを望むってのか?」

「はいっ! 是非ともですネ!」


 なんでそんなにノリノリなのか。
 聞けば、まず街で収集した俺やクランの情報・噂話から惹かれたそうだ。
 英雄的なのに見た目は可憐な侍女であるとか、普通の組合員ではありえない容姿と評価に。

 決定的だったのが屋敷の見事さに加え、ステンドグラスの芸術性、そして奴隷紋の美しさ。
 これは是非とも奴隷にしてもらい自分にも奴隷紋を刻んでほしい。
 ステンドグラス以外にも芸術的なものがゴロゴロとあるであろう屋敷に一緒に住みたい。そういう事らしい。


「実際に今日、エントランスに入ってビックリしましたネ! 魔物の素材をあんな風に展示するなんて見事と言うほかありませんネ! 特にタイラントクイーンの人形には驚かされましたネ!」


 一緒に作ったサリュ・ティナ・ネネが照れている。
 この娘は分かってる、みたいに頷いている。
 いやまぁ俺もあれはいいものだと思うけどさ。


「どうですかセイヤ。彼女を奴隷にしてあげては」

「お前がなんで勧めるんだ、サロルート。いつから仲介屋になったんだ」

「そりゃ紹介すると言った手前望ましい結果に持って行きたいじゃないですか。それに彼女の芸術性を手放すのは惜しいですよ」

「んじゃ【風声】に入れればいいじゃん」

「それは彼女が望みませんよ。それに【黒屋敷】に合ってると思いますけどね。うちや他のクランのように種族に一貫性がないですし、セイヤは意図的に多種族の奴隷を囲っているものだと思いましたが」


 別に意図したわけじゃないよ。たまたま入ってくるメンバーがバラバラな種族なだけだよ。

 サロルートがぐいぐい推して来るのも俺が嫌がる理由の一つなんだが。なんか思惑ありそうで。


 どうしたもんかと周りの侍女を見回す。
 うんうんと頷く者多数……入れるべきだ、さっさと受け入れろ、そんな心の声が聞こえる。
 特にエメリー、フロロ、シャムシャエルあたりから。


「はぁ、分かった。じゃあリンネを奴隷として迎え入れる」

「ほんとネ! やったネ!」

「いやはや良かったですよ。僕も肩の荷が下りたようです」

「じゃあこれから先はクランの話になるからサロルート帰って」

「ええっ!? まだ娯楽室に行ってませんよ!?」


 娯楽室に居ようがサロルートが屋敷に居たんじゃ話せない事もあるんだよ。察しろ。また明日にでも来ればいいだろ。

 そうしてサロルートは帰っていった。
 結局朝から紹介だけの為に来た感じになったな。今度フォローしておこう。


 さて邪魔者は居なくなったという事で説明をする。


「改めて聞くがリンネ。俺は奴隷となった皆に侍女として、そして共に戦う仲間として一緒に居てもらっている。行商をしていた事と吟遊詩人である事は分かったが、家事や戦闘は大丈夫なのか?」

「家事は大丈夫ですネ! 戦闘は砂漠の魔物と父ちゃんたちと戦ってたくらいですネ」


 角牛族バッフェルは商人として有名だが戦闘系種族でもあるんだよな。だからこその行商人なんだろうが。
 一応は女神に植え付けられた情報で知っているが、リンネ自身も戦闘の経験はあるらしい。一安心。

 今回はティサリーンさんの所で奴隷契約をする前に、皆が揃っている今がチャンスなので、粗方説明してしまう事にした。
 俺の素性、スキルなどに関して。
 当然のように理解出来ていない風だったが、今は漠然とした感じでも覚えて貰っておいた方が良い。

 侍女教育はエメリーに頼むとしてそこから徐々に理解していって貰おう。
 屋敷自体の事にも慣れが必要だろうしな。

 そしてステータスをチェック……やっぱ契約前でも見られるな。互いの同意があれば奴隷になるものなのか……。


「そんなわけで俺の<カスタム>でリンネを強くしていくわけだが……魔法は使えないな。前衛か? どうやって魔物と戦ってたんだ?」

「え、えっと、剣ですネ。ショーテルって曲剣なんですが知ってますかネ? それを二本」


 おお、なんとマニアックな。双剣ショーテルか。浪漫があるな。
 角もギュインとしてるから似合いそうだ。
 砂漠の民が曲剣を使うのか、角牛族バッフェルだから使うのかは分からんが。


「なるほど。前衛だが【敏捷】【器用】も必要って事だな……ジイナとティナの中間……ツェンっぽい強化になりそうだな」

「へぇ、曲剣ってのは速さも必要なのか」←ツェン

「多分な。でもステータス的には低い。防御寄りでもあるくらいだ。それは<カスタム>でフォローしよう」


 リンネのステータスは防御>攻撃>敏捷という感じだった。ドルチェを彷彿とさせる。
 しかし戦った事のないドルチェと違い、リンネはショーテルでの戦闘に慣れているそうだから、そのままショーテルを使う前提で伸ばすほうが良いだろう。


「ジイナ、ショーテルは作れるか?」

「作った事はないですね、さすがに。ちょっと挑戦してみますよ」


 ジイナは作った事のない剣を打てるとあって楽しそうだ。
 しかし釘を刺しておく必要がある。


「仮でいいぞ。多分すぐに作り直しになる」

「えっ、そうなんですか?」

「ああ、そろそろ魔法剣を作るからな」

『おおー!』「ひぃぃぃ……!」


 ユアだけが悲鳴だったが、フロロとアネモネの杖も出来たし、ユアの杖の魔石の問題はあるが、そろそろ魔法剣に挑戦しても良いだろう。材料は豊富にある。

 ミスリルの代わりに竜素材は使えるのか。ユアとジイナで果たして作れるのか。
 こればかりは試してみない事には分からないからな。頑張ってもらおう。


「えっ、私のショーテルも魔法剣になるんですネ!? そ、そんな……入れてもらったばかりなのに……」

「まだ分からん。計画段階だ。ジイナとユアに期待しよう」

「はいっ! 頑張りますっ!」「ひぃぃぃ……怖いです……」


 両極端な二人は置いておいて、改めて皆で分かれ、今日の仕事を始めよう。
 迷宮に行く者、家事をする者、ジイナとユアは早速作戦会議を始めた。

 俺はまずはティサリーン商館だな。それからユニロック服飾店。
 帰って来てからやっと隣の物件を見られるか。

 そっちが今日の本線だったはずが、なんか随分と遠回りになっちまったな。
 まぁ仕方ない。急ぐものでもないしな。

 そうしてエメリー他数名を引き連れてティサリーン商館へとお邪魔する。


「セイヤ様、やはり全種族制覇を狙って……」

「違います」


 案の定突っ込まれた。


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