カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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第十一章 黒の主、博物館に立つ

260:めでたい事と不穏な事と

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■ラピス・アクアマリン 人魚族マーメル 女
■145歳 セイヤの奴隷 アクアマロウ海王国第一王女


「ほぉ~こりゃまたえらい大改造じゃのう! 腕がなるわい!」

「ええ、これはすごい……と言うかこんな詳細な図面は初めて見ますよ。さすが【黒の主】殿と言えば良いのか」

「出来そうかな? 何か不備とか疑問点があったら言ってくれ。勝手にイジるのはナシな」


 南東区と北西区から大工の集団がやって来た。
 どうやら【天庸】との戦いで屋敷の修繕をしたのがこの人たちらしい。
 鉱人族ドゥワルフ樹人族エルブスって全然分野が違いそうだけど大丈夫なのかしら。

 とりあえず博物館の改築はそんな感じで始まったわね。

 どんなものになるのか、展示品をブワ~っと置くのを想像すると楽しくなるわね。
 侍女連中はあまり楽しみじゃなさそうなんだけど。なぜか。

 私と同じくらい盛り上がっているのは新人のリンネくらいかしら。
 この娘も目新しい物好きだから、少し気が合うのよね。


 そんなリンネはある程度の侍女教育を受けたあと、早速迷宮に行く事になった。

 家事はもともと出来るみたいだし、魔物との戦闘経験もあるから、ほとんど侍女教育だけで基礎は終わったわね。
 ジイナも忙しい合間を縫って、ミスリルのショーテルを作ったらしい。

 このショーテルもすぐにお役御免と思うと少しジイナに同情するわ。
 応接室に飾り付けてあげましょう。


 さて、そんなわけでリンネの初探索。私も同行するわよ。
 面子は私とリンネ、そしてドルチェ、ティナ、フロロ、サリュの六名。
 リーダーはフロロ。私はこの面子だと後衛ね。


「なぜ我がリーダーなのだ……イブキはどうした? リンネの初探索なのだぞ?」


 エメリーもイブキもミーティアも別件なのよね。だからフロロでいいじゃない。
 え? 私? 嫌よ。ティナと戯れていたいわ。


「まぁうだうだ言っても仕方あるまい。リンネ、まずは組合員に登録するぞ」

「はいっ!」


 そうして組合に入る。リンネは初めて入るらしく「おお~」と見回していた。

 最近なぜか私たちが受付カウンターに向かうとメリーの前の列が自動的に空くようになった。誰が指示したのかしら、このシステム。
 まぁメリーが専属っぽい感じだから助かるんだけど。


「えっ、まーた増やしたんですか!?」

「うむ、リンネだ。登録を頼む」

「お願いしますネ!」

角牛族バッフェルとはまた珍しい……何人目です?」

「侍女は二〇人目だな。クランで言うと二一人目か」

「大所帯ですね~、さすがセイヤさん」


 多種族を従えるのが『勇者』なのだから仕方ないわよね。言えないけど。
 ともかく登録を済ませ、いざ迷宮への下り階段へ。

 ……という所で、階段を上がってくる面々に気が付いた。
 あら、殿下じゃない。


「おや、【黒屋敷】か。今から探索かい……ってまた新人か」

「うむ、リンネだ。よろしく頼むぞ」

「よろしくお願いしますネ!」

「【魔導の宝珠】は探索終わりか。で? どうだったのだ? 四階層に挑んだのであろう?」


 フロロは相手が殿下であろうがグイグイと迫る。
 ご主人様の奴隷になる前に組合で占い師として働いていた時から面識はあったらしいけどね。
 問われた殿下はニヤリと笑って親指を立てた。


「とりあえず黒曜樹までは行ったよ。【領域主】はトロールキングだけだけどね」

「おお! やるではないか! さすがだな!」

「君たちに言われると褒められてるのか皮肉を言われているのか微妙なんだが」

「いやいやいや褒めておる! これは祝いだな! で? リッチはどうしたのだ?」


 思わず皆で拍手し、迷宮前だと言うのに話し込んでしまった。
 リンネは「?」となっていたけど。後で「あの人、魔導王国の第三王子よ」って言ったら驚いてたわね。

 で、聞けばやはり黒曜樹装備に加え、人員を増やし、戦術を整えた事でリッチとも戦えたそうだ。
 行きよりも帰りが厳しかったとか。

 あー、私はこの前の三階層探索の時に連戦したけど、帰りだと玉座の裏から出て来るのね。そりゃ大変そうだわ。扉を開けたらすぐリッチですもの。


「しかし困った事があってね」

「なんだ?」

「リッチを倒して螺旋階段の所に行ったら、獅人族ライオネルが倒れていたんだよ。もう事切れていたんだが、寸前までは生きていたんだろう。迷宮に吸収される前だった」


 ちょっ……それって……!


「それは赤髪の筋肉質な剣士か?」

「知っているのかい? いや、リッチを抜けるほどの実力者なんだろうが僕は知らなくてね」

「うむ。【赤き爪痕レッドスカー】という獣帝国のSランクだ。そこのガブリオルというクラマスに違いあるまい」

「【赤き爪痕レッドスカー】……! そうか、彼が……」

「実はヤツらが四階層に向かう時に不死城で我らと遭遇したのだ」


 あら、フロロ、そこまで言っちゃうのね。知らぬ存ぜぬで通せばいいのに。
 でもまぁ後でボロが出るよりマシかしら。

 それから玉座の間で私たちがリッチを倒し終わってから彼らが玉座の間に入って来て、リポップする前に四階層に抜けて行った事を説明した。


「なるほど。まぁ別パーティーの戦闘後、リポップ前に危険地域を抜けるのは組合員としては常套手段でもあるんだが……帰りにリッチと戦うと分かっていて抜けるのは愚行以外の何物でもないね。Sランクとしての自信があったんだろうが……」

「だろうな。しかしSランクなのだから一人二人は玉座の間を抜け出しても良さそうなものだがな」

「帰りはいきなりリッチとガーゴイルなんだよ? サリュみたいに<聖なる閃光ホーリーレイ>が使えるわけじゃないし、僕らだってキツかったさ」

「あはは……」


 うちのトップヒーラーが照れてるわよ。褒められてるわけじゃないと思うんだけど。


「とりあえず僕からスペッキオ老には伝えておくよ。そっちにも事情を聞くかもしれないからセイヤにも言っておいてくれ」

「心得た。すまんな」


 そんなわけで殿下たちとは別れた。
 なんかリンネの初探索で色々とお勉強させないといけないんだけど……なんかそれどころじゃなくなっちゃったわね。

 でもまぁ帰ってから報告すればいいでしょ。

 魔物部屋で暗い気分を発散させましょ! ね、ティナ!




■モロモフ 狸人族ラスクゥル 男
■65歳 ボロウリッツ獣帝国 宰相位


「ブフフ、ガブリオルからの報告はどうなっておる」

「最近とんと報告が上がって来ませんな。迷宮探索が長引いているのかもしれません」

「全く使えんカスだ。待つだけでは金が一銭も入って来んではないか」


 頻繁とは言わないまでも定期的に送られて来ていたカオテッドからの報告書が来ない。
 まさかヤツらが裏切ったという事もないだろうが……。

 今までの情報では、まず黒曜樹は迷宮の第四階層にあるらしいとの事。
 しかし現在の攻略最前線も四階層なので、並みの組合員では辿り着くのも困難であるらしい。

 まぁ【赤き爪痕レッドスカー】であればそのうち到達するだろうから問題ないだろう。
 そこに行っているが為に報告が遅れていると考えるのが無難か。


 もう一つの調査依頼が問題だ。【黒の主】という基人族ヒュームの件。
 こちらは情報量という意味では多いのだが、どれもこれもふざけた内容の噂話ばかり。
 噂をするカオテッドの民も馬鹿だが、これを報告として上げて来るヤツらも馬鹿だ。

 数多い組合員の中でも群を抜いた強さであるとか、絡んだ連中が全員投げ飛ばされ気絶させられるとか、例の【天庸】襲撃時に英雄のごとく立ち回っただとか。

 おまけに【白い狼人族ウェルフィンの聖女】とは何だ?
 獣帝国の獣人系種族であれば誰が聞いても鼻で笑うような話だ。


 ガブリオルの見解では【黒の主】が異常に金持ちで、その金でポーションを買い漁り、襲撃時に救助したのでは……と書かれていた。

 迷宮で最前線に行き、Sランクだと認められたのも、同じく金でもって魔道具や奴隷を買い漁り、迷宮を攻略していったのでは、と。

 基人族ヒュームが金を持つ事自体が不敬だが、それならば確かに信憑性は多少ある。


「ブフフ、つまり、あそこには金を持った基人族ゴブリンが居るという事か」

「ガブリオルはそう考えているようですな」

「ブフフ、ならば【蝙蝠】を向かわせろ」

「【蝙蝠】を……ですか」

「ブフフ、報告を送らないカスなどもういらん。金を持っている不届きな基人族ゴブリンなどさっさと始末すべきだ。根こそぎ奪って来い」

「ではそのように」


 やれやれ、最初から暗殺するならば【赤き爪痕レッドスカー】など使わなければいいものを。
 しかし黒曜樹を手に入れる為には必要か。
 向こうには迷宮に潜らせつつ、【黒の主】は【蝙蝠】に始末させよう。


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