カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

文字の大きさ
278 / 421
第十一章 黒の主、博物館に立つ

268:スペッキオのテンションアゲアゲ劇場

しおりを挟む


■スペッキオ 導珠族アスラ 男
■303歳 迷宮組合カオテッド本部長


 【風声】【震源崩壊】【獣の咆哮ビーストハウル】合同での四階層到達に相次ぎ、【魔導の宝珠】単独クランでの四階層到達、そして【赤き爪痕レッドスカー】の未帰還。

 迷宮組合本部としては色々と考えなければならない件が続いたわけじゃが、やっと落ち着きを取り戻した。

 【赤き爪痕レッドスカー】の件は、本来であればわざわざ獣帝国の支部に伝える必要などないのじゃが、Sランクという事もあり一応伝えておいた。

 おそらく王侯貴族も絡んでおるだろうしのう。
 ま、儂はヤツらをSランクとは認めておらんが。

 やはり支部からの報告だけでなく自らの目で確かめてから承認すべきだったのう。今後の課題じゃ。


 ともあれ、お茶が旨く感じるようになったこの頃。

 やはりと言うか、急な話題を持ち込んできたのは【黒屋敷】じゃった。
 こいつら、儂を落ち着かせようという気がないのか……。


 渋々本部長室へと入室を促し、入って来たのはセイヤとメイドが四名。
 エメリー、フロロ、ミーティア姫、ウェルシア嬢……いや、今はウェルシア伯か。

 いつものようにセイヤが儂の向かいのソファーに座り、後ろに四人を立たせる。

 今さら言うのも何じゃが、ミーティア姫とかよく立たせるのう。
 セイヤは『勇者』なのか『女神の使徒』なのか知らんが、それでも基人族ヒュームなのにちゃんと″主人″をしている事が未だに謎じゃ。


 で、今回はどんな難題を持って来やがったのかと、嫌々尋ねる。


「今度、博物館ってのを開業したいんですけど――」

「はくぶつかん?」


 聞けばホームとしている屋敷の隣に、博物館なるものを作ったと。

 隣の屋敷がこやつらに買われたのは知っておる。ここの住居組合も儂の管轄じゃからな。
 報告を受けた時は奴隷のメイドを増やしすぎたが故に、ホーム拡張の意味で買ったものだと思っておった。

 それにしたってあのレベルの豪邸をポンポン買うとかやりすぎだとは思っておったがのう。金持ち過ぎじゃろ。


 ところが第二ホームではなく、博物館じゃと?
 どうやらメルクリオが言っておったドロップ品の展示を屋敷の規模で行うらしい。
 そして客を入れ、誰でも展示品を見る事が出来るようにする。それが博物館だと言うのだ。

 なるほど。ドロップ品を屋敷でただ展示をしていると聞いた時は、なんとも酔狂な趣味じゃと思ったが、それを見せる事で商売にするとはなかなか良い案ではないか。

 神聖魔法を無償で提供するようなこやつに商売っ気があるとは驚きじゃ。儂は評価しよう。


 少し考えただけでボロ儲け出来ると分かる。
 展示する為のドロップ品は【黒屋敷】の従来の活動として迷宮を探索する副産物じゃ。元手はタダと言える。
 まぁ本来売るべきドロップ品を売らないわけじゃから、それが経費と言えば経費じゃが。

 あとの経費はその施設を維持する為の金だけじゃろ?
 仕入れがなく『見せる事』を売るわけじゃから利益は出るじゃろ。


 ましてやカオテッドの特性上、組合員以外の民も迷宮やそこに居る魔物、そして何よりカオテッド唯一のSランククランである【黒屋敷】に関心を持っておる。【天庸】の一件もあるしのう。

 【黒屋敷】がどういう魔物を倒したのか、そのドロップを見たいという者は多いと思う。
 一般人も組合員も同様に、じゃな。


 そんなわけで儂としてはその博物館とやらをやる事には賛成なのじゃが、その報告をしに来ただけというわけでもないらしい。


「そこに展示する魔物の解説をするに当たって、迷宮や階層の解説も貼り出したいんですよ。そうしないと組合員はともかく一般人はよく分からないでしょうし」

「ふむ、それはそうかもしれんな」

「そうなると組合で売っている攻略情報を見せる事になっちゃうかと。それを相談したかったんです」


 なるほど。
 組合員相手に売っている迷宮の情報、それが金を払わずとも博物館へ行けば知る事が出来てしまうのか。

 載せる情報にもよるかと思うが、どうやらセイヤは地図や【領域主】の出現場所、その特徴なども記載したいようじゃ。

 うーむ、確かにそれは組合で情報を買う組合員が減りそうじゃのう……。
 特別大きな収入源というわけではないが、それでも減るのは痛い。小銭稼ぎたい。


「で、俺の方も色々と考えたんですけど――本部長、スポンサーになりませんか?」

「スポンサー? 儂が出資するという事か?」

「いえ、金じゃなくて情報と人員の手配をして頂きたいんです。その代わりに入館料の何割かを組合に払うという形で」


 情報とはすなわち、組合で売っている情報を博物館で見せても良いという許可じゃな。
 そして人員に関しては、博物館経営に当たって商業組合に登録する際に、従業員を手配してもらうつもりだったと言う。
 さらには警備に関しても傭兵組合に相談するつもりだったと。

 中央区の商業組合も傭兵組合も、迷宮組合本部の傘下じゃ。
 儂が各組合に通達し斡旋するのは容易い。

 なるほどそうした手間をこちらが引き受ける代わりに、博物館入館料の何割かが入ってくると。





 ……めっちゃ旨くね?





 ほとんど元手なしで、じゃんじゃん銭が入ってくるんじゃね?
 いや確かに組合で売る情報料は売り上げが減るじゃろう。
 しかしどう考えても入館料の収入の方がデカイ。うはうはの左団扇ではないか。


 儂、即決。
 スポンサーでも何でもなってやるわい。人員の手配なら任せておけい。
 迷宮の攻略情報? どんどん載せい。いくらでも載せい。


 とんとん拍子で話は進み、セイヤたちもホッとした様子。儂は高笑い。


「一度開館前に見に来てくれませんか? スポンサーなら色々と口を出したいでしょうし、実際に客を入れる前に見せておきたいんですが」

「おお、それはそうじゃな。ホームの展示も一度は見てみたかったんじゃ。どんなもんか興味があるわい」

「今は七~八割が完成してます。こっちはいつ見に来てもいいですよ」

「早めがいいじゃろうな。よし! 今から行くか!」

「えっ、仕事とか大丈夫なんですか?」


 構うもんかい! 今となってはこっちも仕事じゃ!
 博物館からの収益を考えれば、今やってる書類仕事なんかゴミじゃゴミ。
 さっさと行くぞい! ほれ! 茶を飲んでおる場合か!


 そうしてセイヤたちを引き連れ、博物館とやらへ向かう。
 組合前の大通りから北側へと伸びる枝道。豪邸が並ぶ高級住宅地じゃな。

 ここも儂の管轄である以上、来た事はあるが、【黒屋敷】のホームには行った事がない。最奥の突き当りじゃしのう。


 で、しばし歩けば見えて来る。その突き当りにそびえる白黒の豪邸。


「ほぉ~、噂には聞いておったが、本当に【黒屋敷】じゃのう」

「不本意なんですがね」

「で、隣が博物館か……ここも【黒屋敷】じゃのう」

「不本意なんですがね」


 建屋はホームと同じく白黒になっておった。しかし窓がほとんどなく、門の上にはアーチ状の看板で『黒屋敷 迷宮博物館』と銘打っておった。


「この看板ではここがどんな施設か分からんのではないか?」

「そこは事前周知と口コミで徐々に広まればいいなと」


 どんなこだわりか知らんが『博物館』という名前を変える気はないらしい。
 ま、【黒屋敷】というだけで話題には上るだろうし、別に構わんか。

 しかし博物館とやらの出来が悪いようならば、逆に悪評として話題で持ちきりになる。
 それはいかん。儂がこの目で見て、しっかりと監査せねばなるまい。

 展示とはどのようにしているのか、集客の見込みはあるのか、民や組合員に受け入れられるのか。
 それを把握し、開業していない今のうちに改善出来る所はしておかんと。

 セイヤは商売などした事がないじゃろうからな。儂が先達として、スポンサーとしてアドバイスせねば。


 そうして案内されるまま、博物館へと入った。




 結論を言おう。


 ここ、めっちゃ客入るわ。


 儂、めっちゃ儲かるわ。


 間違いない。カオテッド随一の観光スポットになるぞい。


 うん、特にアドバイスとかいらないっぽかった。こいつらヤバイ。
 よくこんな綺麗な展示をやるもんじゃ。しかも客に配慮した作りにしておる。
 見せる物、見せ方が上手い事考えられておった。

 いくつか「これはやりすぎでは……?」と思う所もあったが、【黒屋敷】の英雄譚や噂話が独り歩きしている現状、十分に受け入れられる範疇だと思う。

 仮に受けが悪くても博物館という性質上、やり直しはし易い。展示物を変えたり、配置を変えたり、順路を変えたりすれば良い。


 つまり、どう考えても流行る未来しか見えんというわけだ。
 迷宮組合本部の収入増は確定。本当にありがとうございます。

 これはなるべく早く開業せねばなるまい。

 よし! そうと決まれば人員の手配じゃな! 早速帰ったらやるか!


 ……何? メルクリオに頼んだ魔道具が来ないと開業出来ない?

 よし分かった。儂がガツンと言ってくるわい。二軒隣りじゃったな。

 止めるなセイヤ! 儂がメルクリオ経由でヴラーディオの小坊主に文句を―――


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

処理中です...