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第十二章 黒の主、禁忌の域に立つ
292:一筋の光明を見逃さなかった結果……
しおりを挟む■マルティエル 天使族 女
■1896歳 セイヤの奴隷 創世教助祭位
サリュちゃん、ホントとんでもないでござるよ。
私はお姉様と交代しながら<聖なる閃光>を撃ちましたけど、サリュちゃんはずっと一人で撃ち続けていました。MPポーションの補給は一回だけ。
計七発。絶対ラグエル様だってこんな撃てないでござる。
【聖杖アスクレピオス】の効果もあって、私やお姉様より見るからに威力が高そうですし……。
私だって以前は一発も撃てなかった<聖なる閃光>が二発連続で撃てるようになりました。
それでも【黒屋敷】のメイン回復役の壁は厚いと……ホントとんでもないでござるな。
それはともかく、六回目の″一筋の光明を見逃すな作戦″でパティちゃんが「ん?」となりました。
細かい位置修正を入れての次射、見事にパティちゃんの<探索眼>が何かを捉えたようなのです。
「や、やっと見つけられた……やっと降りられる……」
パティちゃん、ぐったりです。ご苦労様です。
何か見つけないと延々探すはめになると、頑張ったようです。
<聖なる閃光>を撃つ私たちも頑張りましたが。
それから全員で山岳地帯に侵入。山登り開始です。
山登りと言っても訓練場のボルダリングのように崖を登るということはせず、歩いて行けそうなルートを選びつつ進む感じ。
パティちゃんが見つけたその地点目がけて、徐々に上りつつ近づいて行きます。
山岳地帯に出て来る雑魚敵は、巨人系の集大成のような感じで、トロール、サイクロプス、ファイアジャイアントが出て来ました。
群れているわけじゃないですけど、今までの雑魚敵とは一線を画します。
サイクロプスは戦った事のない人が多かったので、ツェンさんやラピスさんがむしろ喜んでいましたが。
さて、そうして登る事、鐘一つ分(※三時間程度)という所でしょうか。
パティちゃんが見つけた地点に近づきました。
「あっ、あそこです!」
「どれどれ……おお、よく見つけたなぁ暗がりの中、しかもこれだけの距離で」
「それはもう死ぬ気で……ハハハ……」
それは岩壁に開いた洞窟。
黒い岩で出来た山岳の中にある、暗がりの洞窟。それを<聖なる閃光>の光だけで見つけたのですから、これは褒められてしかるべきです。
パティちゃんすごいでござる!
ネネちゃんがパティちゃんの頭を撫でています。
弟子の活躍が嬉しいのでしょう。
「いたっ、強いです師匠!?」
「弟子の活躍が嬉しい反面、なんかちょっと悔しい。私も<千里眼>欲しい」
「そんなっ!?」
大人気ないだけだったようです。ネネちゃん、弟子に僻むのはちょっと……。
戦闘能力も索敵範囲もネネちゃんの方が上なんですけどね。
ともかく目当ての洞窟が見つかりましたので、みんなで近づきます。
入口の近くまで来ると、その大きさは一階層の通路くらいでしょうか。
そこらの雑魚敵……サイクロプスとかだと頭がつかえるかもしれません。
「……ん? なんか空気が変わった?」
ご主人様だけでなく、周りのみんながそんな事を言います。
洞窟から流れ出る空気が今までと違う、と。
さらに入口に近づき、ランタンを照らして見ると……
「おいおい、マジかよ……」
その光景にみんなが唖然としました。
入口から少し入った先、そこは氷に覆われていたのです。
床も壁も天井も一面、氷の世界。
私たちは侍女服が<耐熱>だけでなく<耐寒>もカスタムされているので気温の変化には気付きませんでしたが、おそらく相当な違いがあるのでしょう。
吐く息が白いので間違いありません。
しかし今まで灼熱の暑さだった四階層なのに、何でいきなりこんな真逆の場所が……。
全く理解出来ません。いや、迷宮自体よく分からないものではあるんですが。
「よし!」と気合いを入れ、ご主人様はコートを脱ぎ、喪服の上着を脱ぎ……即座に着直しました。
「さぶっ! うっわ、ダメだこれ! めちゃくちゃ寒いぞ! 氷点下何度だよこれ!」
どうやら<耐寒>がないと探索なんて出来ないレベルだそうです。
ここに来るまでに<耐熱>装備が必要なのに、ここから先は<耐寒>装備が必要とか……鬼畜ですねぇ。
ともかく来たからには探索しなければと、改めて全員で確認します。
侍女服の<耐寒>は大丈夫か、足元も滑るはずだから靴に<カスタム>してあっても気を付けるように。
天井にツララなどある場合、落ちて来るようなトラップもありうる。などなど。
ご主人様はまるでこういう場所に来た事があるかのように、次々と注意事項を告げます。
さすがはご主人様でござる。
一通りの確認を終え、隊列もパーティー単位ではなく全員を一塊としてがっちり組みました。
そうしていざ探索開始と洞窟に足を踏み入れた時――。
「!? ん!!!」
ネネちゃんが突如として反応を見せました。釣られてみんな足を止めます。
「……どうした、ネネ?」
「……この先には多分、【領域主】しか居ない、です」
「<気配察知>か? 雑魚敵が居ないと?」
「ん。それですごい気配が、奥に一つ。……なんか亀っぽい」
『亀!?』
亀とはすなわち【炎岩竜】。それと同じような気配の魔物が居ると?
確かにそんな魔物は【領域主】なんでしょうが……。
じゃあこの氷の洞窟は、その魔物への道でしかないって事でしょうか。
探索が必要な洞窟ではないと。
「……とりあえず進んで確かめてみるか。道中、雑魚敵は居なくても罠はあるかもしれん。斥候は頼む」
「「はいっ」」
「その【領域主】次第では撤退する。逃げる時に滑って転ぶとかないように注意してくれ」
『はいっ』
「じゃあ行くぞ。向こうの索敵範囲が分からないから防御陣形で」
一気に緊張感が増しました。
もう誰も笑ったりしていません。真剣な表情で警戒しながらゆっくりと歩みを進めます。
あのツェンさんやラピスさんでさえ、真面目です。こんなの初めて見ます。
ランタンが照らす光の中、足元の氷と天井のツララに気を付けながら前へ。
次第に洞窟の奥から吹く風が強くなってきました。
体感温度は分かりませんが、吐く息が真っ白なので、だんだん寒くなっているようです。
これ、いくらご主人様の<カスタム>とは言え<耐寒>は持つのでしょうか。
そんな心配も出て来ます。
罠魔法陣も宝魔法陣も全くない一本道をただ進む事しばし、どうやらお目当ての魔物の近くに来たようです。
さすがに察知系スキルを持っている全員が警戒を露わにしています。
道の先は大空洞のようになっており、そこにその魔物が居るようです。
先頭のご主人様が通路の影からチラリと中を覗き……ハンドサインで下がれと言ってきます。
そのまま音を立てずに後退。みんなの表情が一層険しくなります。
下がった所でご主人様は全員を集めました。
「居たわ。【領域主】の根城だったわ、ここ」
「どんな魔物ですか?」
「多分、竜だと思う」
『竜!?』(小声)
ご主人様が言うには、風竜のような竜ではなく、滝つぼに居た【大炎蛇】のような、長い身体の竜らしいです。
大きさは【大炎蛇】と変わらないそうですが、その身体は氷で出来ているのか水晶のようなもので出来ているのか、とにかく鱗ではなく透明っぽい鉱石のようなものじゃないかと。
そんな魔物は知りません。見回しても誰も知らなそうです。
また新種の竜なのでしょうか。【炎岩竜】のように。
「そいつの吐く息が吹雪みたいになってるな。流れて来る風はそのせいだ。おそらく吹雪のブレスを吐いてくると思う」
「ブレス……ではやはり竜なのでしょうか……」
「分からん。こればっかりは倒してドロップの名称で確認するしかない。ただ用心しておいて損はないだろ?」
「ですね」
仮にブレスを吐かないとしても水属性……というか、氷属性の魔法なり攻撃手段はしてくるだろうとご主人様は言います。
となると炎が弱点なのでしょうか。
「竜だとしたら亀みたいに魔法自体があまり効かない可能性がある。まぁ効くとすれば<火魔法>だろうがな」
「でしょうね。確かに【炎岩竜】に魔法はほとんど効いていないようでした」
「それにユアとミーティアの<火魔法>は防御と補助を優先して使うべきだろう。吹雪を軽減させないとマズイしな。ミーティアは弓で攻撃もしてもらいたいが、ユアは<炎の遮幕>だけを使い続けるくらいでいい」
<炎の遮幕>は水属性の軽減ですね。
うちのクランで<火魔法>を使えるのはお二人だけなので、頼むしかありません。
それからかなり細かい指示があり、全員で気合いを入れ直しました。
もうここまで来て「戦いたくない」とは言えません。ユアさんでも。
はぁ……私が竜に挑むでござるか……。もう、やるしかないでござる!
「よっし、行くぞ!」
『はいっ!』
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