カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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最終章 黒の主、聖戦の地に立つ

315:勝敗は決している。開始早々?いや、とっくに。

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■ネネ 闇朧族ダルクネス 女
■15歳 セイヤの奴隷


「くそっ! 何がどうなっている! 何なんだあの基人族ヒュームとメイドどもは!」

「貴様らそれでも栄えある獣帝国の戦士か! とっとと蹴散らせ!」

「当たれっ! 陣形を保たせろっ! 烏合の衆の組合員どもに遅れをとるなっ!」


 戦場はすでに最前線同士がぶつかり合う乱戦の模様。近接同士が届く距離だ。

 中央部のこちら側には私たちの他、Aランククランとか他の組合員パーティーとかもほぼ横並びで戦っている。
 組合員のみんなは気合い入ってるね。普段魔物としか戦ってないはずなのに。


 まぁなぜか私たちの周りに敵が寄って来ないんだけど。
 避けられてるのもあるし、速攻で蹴散らしているのもある。

 だからといって私たちが前に出る事もなく、突出しないように他のみんなと足並みを揃えている。


 ご主人様は適当に<飛刃>撃ってるだけだし、ツェンやドルチェ、ヒイノなんかもあんまり接敵しないもんだから魔竜剣の魔法ばっかり使っている。

 本当はちゃんと近接で戦いたいだろうけどね。
 しかもあまり敵を殺しちゃいけないって事でイライラしているようにも見える。

 別に勢い余って殺しちゃってもいいと思うんだけど。ドルチェとかティナとかは未成年だから殺しちゃダメって特に言われている。


 そんな中、私の仕事は殺し・・だ。
 みんなが我慢している中、私だけは許されている。ふふん。


 私は魔法とかないし、魔剣にしても単体攻撃しか出来ないから、だったら逆に敵の指揮官とかを率先して殺してくれと。

 元々「殺すならば指揮官の貴族を優先」とは言われているし、そこをピンポイントで狙うなら私が適しているだろうと。

 戦場の乱戦に紛れて暗殺。これは愛弟子のパティにも任せられない。
 私だけの特権だ。お任せあれ。


 さて、そんなわけで<気配消却><忍び足><影潜り>とかを使いつつ、するすると敵軍に侵入。

 相手側の中央には騎士団っぽい人たちとか組合員っぽい人たちとかごちゃごちゃしている。
 戦争の時の″軍″ってもっと綺麗に整列してる印象があったけど、どうも違うっぽい。
 前に盾、槍、剣、後衛に弓、魔法、最後尾に指揮官……とかそんな隊列をイメージしてた。

 ところが列もバラバラだし、隙間ありまくりだし、なぜか指揮官っぽい貴族が前の方に居たりする。
 実際の戦争はこんなもんなんだろうか。私は初めてだからよく分からない。

 まぁお蔭さまでミーティアとマルの弓でも狙いやすかったらしく、馬車とか壊され、騎馬も殺され、指揮官は大地の上に立ってるか寝てるかしてる状態だ。

 それでパニックになったらしく、指揮官が騒いでいる。冒頭の台詞だ。


 すでに隊列も何もないと思うけど、よく分からない指示を出している。
 下がるなり、自分が戦うなり、まともな指示出しするなり、何かすればいいと思うんだけど。
 これで本当に指揮官なのかな? でも貴族っぽいから殺しちゃうけど。


「ぐあああっ!!!」

「だ、大隊長がやられたっ! どこから攻撃されたっ!?」

「俺は見えたぞ! 刃が突然現れた! それですぐ消えたんだ!」

「何だよそれ! 魔法か!?」


 おお、よく見えたねー、さすが獣人系種族。目が良い。
 でも私の姿には気付かないらしい。動き回ってるから当然だけど。


 やっぱり【魔剣パンデモニウム】は私に向いていると思う。暗殺が楽。
 姿を隠しながら、中距離から殺すっていうのに適している。扱いはすっごく難しいんだけど。
 ともかく私に下賜してくれたご主人様に感謝。あと魔導王国にも感謝。


 ん? あそこに固まってる貴族っぽい人たちが居るなー。

 なんか全身鎧が大きすぎて動けない人とか居る。重いのかな? あれで戦うつもりだったのかな?
 周りの指揮官っぽい人たちに支えられたままだけど。

 それに何も武装してない人とかも居るし……馬鹿なのかな?


 ともかくあの集団は皆殺しでいいよね?


 おや? 自軍から誰か突貫してきた……この気配はバルボッサたちかな?
 すごいな。さすがはAランク。敵軍の壁を抜けてきたのか。


「居たぞ! 絶対逃がすな! ここで仕留めろ!」

『おおう!!!』

「き、貴様ぁ! 案内役の組合員ではないかっ! よくも――」

「うるせええ!!! 黙って死ねよハゲネズミ!!!」

「ぎゃあああ!!!」


 おお、どうやらバルボッサたちのお目当てだったらしい。
 危ういね。危うく私が殺す所だった。ご主人様も「私たちだけで手柄を独占するのはまずい」って言ってたし。こいつらはあげよう。

 んじゃ私は後方に居るであろう他の指揮官を探すかな?
 まさか前線に居る貴族で全員ってわけないだろうし。


 ――バシュウウウン――ズガアアン!!!


 お? ミーティアの弓だね。また貴族の馬車を壊したのかな?
 じゃあそこに行ってみますか。すいすい~っとね。



■ラピス・アクアマリン 人魚族マーメル 女
■145歳 セイヤの奴隷 アクアマロウ海王国第一王女


 獣帝国軍ってのは本当にひどいわねぇ。こんなんで″軍″とかよく言えるもんだわ。

 私たち【黒屋敷】が規格外の強さだってのは自分でも分かってるけど、それにしたって弱すぎる。
 獣人系種族特有の強さがあるのは分かるんだけど、それだけって言うか、まとまりがないって言うか。

 色々と言いたい事はあるけど樹界国軍と魔導王国軍が来てるって知ってたんでしょうから魔法の対策くらいしてきなさいって話よ。
 こんなんじゃ海王国軍の方が百倍マシね。


 そんな事を考えながら適当に魔法をぶっ放している。
 他の侍女連中より殺しちゃう率は高いっぽいけど、あんまり気にしない。


 と、そんな私たちの陣に来客があった。敵軍に突っ込んでいたバルボッサたち【獣の咆哮ビーストハウル】だ。


「セイヤ! すまん! ちょっといいか!」

「どうしたバルボッサ!?」

「敵軍の総大将を捕らえた!」

『はあ!?』


 マジで!? もう!? 早すぎない!?
 まだ戦い始めたばかりって言うか、獣帝国軍だって撤退しないで普通に戦ってるし、ご主人様もさすがに驚いている。


「この豚が帝国騎士団長のドゥドゥエフ。皇帝ドドメキウスの甥っ子だ。周りに居た他の貴族は殺したけどこいつはさすがに捕らえたわ」


 そう言って縛られた豚人族トンポーロを突き出して来る。
 とんでもない肥満体型の豚。身ぐるみ剥がされ縄で雁字搦めだ。


「一応本部長のとこに持って行くか。バルボッサたちが行くか? 俺たちが行ってもいいが」

「まだ戦いたい気もするが……目的のハゲネズミは殺せたしお前らが抜けるとマズイだろ。俺らが持って行くよ」

「そうか、じゃあ任せるわ」


 どうやら【獣の咆哮ビーストハウル】は戦線離脱ね。勲功一等でしょうけど。

 と、そこで「ぐぬぬ」としていた豚が騒ぎ出した。


「貴様ら俺様をこのように扱うとは許されんぞ! 皇帝陛下が黙ってはいない! 貴様らは終わりだ! 皆殺しの上、カオテッドは破滅する! 必ずな! ブハハハハッ」


 皆の見下ろす視線はとても冷ややかだ。私も含め。何言ってんだこいつと。
「はぁ」と溜息を一つ、ご主人様は話しかける。


「皇帝は黙るよ、必ずな」

「ハハハ……はぁ? 何を言っておる!」

「そもそもお前が無事に帝都まで戻った所で、ドドメキウスとかいう皇帝は居ない。もうすでに黙ってるかもしれないな」

「なっ……! 何をふざけた事を……っ!」


 ふふふ、どうなってるんでしょうねぇ、帝都は。
 頑張ってくれてるといいんだけど。

 ――ねぇ、お父様?


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