339 / 421
最終章 黒の主、聖戦の地に立つ
327:白黒の疾風、そして聖剣
しおりを挟む■ネネ 闇朧族 女
■15歳 セイヤの奴隷
サリュと共に侯爵級という骨頭たち六体と戦い始めてしばらく。
慣れてきたというか、色々と分かってきた事がある。
まずはサリュ。この娘は本当にとんでもない。
速さや斥候能力では私が勝つけど、やっぱり私以上に強いなーと感じてしまう。
こうして二人だけで連携っぽく戦うなんて初めてだし、余計にそう思う。
二人でずっと戦うってのも楽しいんだけどね。気が合うし。
私もこの一ヶ月でサブウェポンの魔竜短剣を作って貰ったけど、こうして近距離で回避しながら魔法を放つってのは無理だ。
慣れている【魔剣パンデモニウム】の魔力操作だけでも精一杯。
だと言うのにサリュはあの速度で回避しながら、少し距離が開けば<聖なる閃光>を撃とうとしている。
<光の矢>とかなら分かるけど。いや、<光の矢>とかじゃ効かないって判断なんだろうけど。
さすがに強化された侯爵級悪魔族であっても神聖魔法には弱いらしく、ましてや聖杖を持ったサリュが撃つ<聖なる閃光>を受ければそれだけで瀕死らしい。
リッチと同じくらいの耐性と考えればいいのかな? いや、リッチより相当強いのは確かだけど。
ともかくそれで二体は消したし、そのせいもあって悪魔族の敵愾心はサリュに向いている。
その侯爵級悪魔族は察知能力と反応速度に長けた、近接主体の戦い方。
イブキよりもティナっぽいと言うか、頭もいいからエメリーっぽいと言うか、とにかく手強い。
私の動きも見えるらしいし、【魔剣パンデモニウム】の死角攻撃にも反応したりする。
悪魔族ってのは爵位によって能力とか変わるらしい。そういった察知能力とかももしかしたら侯爵特有のものかもしれない。
でも一番の特徴はあの″骨″だと思う。
顔がとかげっぽい頭蓋骨なのは見れば分かる。
それ以外にも身体から自由に骨を出せるらしい。
時には第三の腕のようにニョーンと生えてきたり、尖った骨で突き刺して来たり、鎧みたいに守ったりもする。
どんな骨格してるんだろうって気になるけど、正直やりづらい。
隙を付いて首に入れたつもりでも、骨にガードされたりする。反応さえ出来れば瞬間的に出せるらしい。
だから私としては完全に反応していない所を狙って攻撃するしかない。
でもサリュの<聖なる閃光>なら骨ごと貫通させちゃうからね。やっぱあれすごい。
出来ることなら私が注意を惹きつけ、サリュをフリーにして<聖なる閃光>を連発させたい。そうすればすぐ終わると思う。
まぁ相手もそれが分かっているから私よりサリュ狙いなんだろうけど。
そんなわけで牽制も含めて適度に攻撃しつつ、サリュから目を離させる。
もし完全にサリュに目が向いているヤツが居ればそいつは私がヤる。そんな感じ。
つまり私とサリュのチームワークですよ。【黒屋敷】が誇る回復役と暗殺者の白黒コンビ。
私たちが組めば勝てない相手なんて……ご主人様くらいしか居ないはず。
「ぐあっ!!!」
「ゾォミィ! くそがっ!」
よし、そう言っている間に私も二体撃破。上手い事【魔剣パンデモニウム】を飛ばせた。
これで残りは二体だけ。時間の問題だね。
さっさと片付けて他に回らないと。
……パティはちゃんと働いているかな?
■マルティエル 天使族 女
■1896歳 セイヤの奴隷 創世教助祭位
「ゴクゴクゴク……ぷはぁ~っ!」
今日、何本目かのMPポーションを飲みつつ、すぐに<聖なる閃光>を撃つ作業に戻りました。
作業……そう、作業感があります。緊張感ももちろんあるんですが。
とにかく私とお姉様は<聖なる閃光>で数を減らさないと話にならないという事で、魔族の群れに向かって撃つのみです。
「怯むな! 助祭隊、回復を怠るな! 司教、司祭は持ちこたえろ!」
バササエル司教長様の激が飛んでいます。
すでに神聖国軍は飛魔族と正面からぶつかり合っての攻防戦。
防御と回復で安定させつつ対処しているようです。
もちろん魔族に対しては天使族の方が有利。数的にも有利な為、危険度は少ないと思います。
でもそれで楽勝かと言われたらそんな事はなく、攻撃手段にしても<聖なる槍>くらいがせいぜいですから一撃で倒すのは困難。
対して飛魔族の爪による攻撃は強いらしく、怪我を負っては回復を受け、と後手に回っている感じもします。
後衛の助祭隊の回復にしても<高位回復>もろくに使えないと思いますし。
私がそうでしたからよく分かります。
それでも飛魔族を落としているのは確かで、数的有利は広がるばかり。
その前に神聖国軍の体力とMPが切れるとマズイですが、今のところは優勢です。
下を見れば、ミーティアさんと男爵級悪魔族十五体の戦いも本格化。
そこにこそ援軍に行きたい所ですが、現状は難しい。
ミーティアさんにお願いするしか出来ません。
……まぁ遠目で見る限りですと、大丈夫そうな気がしますけど。
ミーティアさん、ホント強いです。いつも後衛から弓を撃ってる印象ですけど、前衛もやれるとは聞いていました。
実際に見るそれはとても『弓士』とは言えない戦い方で、【敏捷】頼りに敵の隙間を縫うように動いては、超至近距離から『神樹の長弓』を撃ちこむというとんでもない方法です。
私が同じように弓を撃てと言われても絶対無理です。
いくら番える必要のない魔力の矢だとしても無理。そしてその威力も強化された男爵級悪魔族を一撃で倒すほどのもの。
これはもう、相手が可哀想になる感じです。相手が悪いと。
そんなわけで私は空に集中するのですが、魔族側に動きがあるようでお姉様が私の近くまで飛んできました。
「マルティエル、後方の悪魔族が出て来るようです。あれを軍に当てるわけにはいきません。私たちで抑えますよ!」
「は、はいでござる!」
「私が前衛、貴女が後衛で突っ込みます! 付いて来なさい!」
二人でパーティー編成ですか……無理があると言いますか、【天庸】のペルメリー戦を思い出すと言いますか。
それでも確かに私たちが対処するしかないですし、私はお姉様に付いて行くのみです。
「てめえらか! さっきからうっとおしい羽虫はよぉ!」
「これ以上貴様らに遊ばせるわけにはいかん! 覚悟せよ、勇者の僕!」
「オーライズ! このまま突っ込むぞ!」
「構わん! 一気に蹴散らせ!」
敵はお面の悪魔族八体。
一応前衛と後衛で列を成していますが、最後尾に指揮官らしき魔法陣みたいなお面の悪魔族が居ます。
爵位は同じなのでしょうが何かしら差があるのかもしれません。
向こうもこちらも飛んだ状態のまま、ぶつかり合います。
敵前衛の剣や槍、短剣がお姉様に当たるその寸前、お姉様は右手に持つ聖剣を振り抜きました。
――スパァァン!!!
「こ、これは……!」
驚いたのは敵方ももちろんですが、お姉様も私もです。
強化された爵位持ちの悪魔族を三体一気に斬り裂いたのですから。
お姉様の戦いは迷宮で何度も見ていますが、ここまでの攻撃力はないはずです。
お姉様の【聖剣アストライアー】はジイナさんやアネモネさんが見ても謎の多い剣でした。
分かっているのは魔剣以下、魔竜剣と同程度の攻撃力。
そして神聖魔法の触媒としての効果と、神聖魔法の威力上昇、MP回復速度増進、この程度です。
総評としては強力だけど性能的に魔剣には遠く及ばない剣……のはずでした。
しかしこの状況を見るに、私の頭の中にはもう一つの能力が浮かびます。お姉様も浮かんでいるでしょう。
――【魔族特攻】と。
魔族に対して特別に威力を発揮する剣なのでは? それが【聖剣】の意味なのでは?
そう思えて仕方ありません。
「っ! 近づきすぎるな! 盾持ちから排除しろ!」
魔族側が慌てるのも分かります。感じているのは焦燥か恐怖か。
いずれにせよお姉様が一撃で敵愾心を持って行きました。
こうなれば盾役としての本領発揮です。お姉様の独壇場。
私も自分の仕事をするだけ。純後衛として撃ちまくります!
「マルティエル!」
「はいっ! <聖なる閃光>でござるっ!」
11
あなたにおすすめの小説
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる