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最終章 黒の主、聖戦の地に立つ
332:終焉、そして闇は光に消える
しおりを挟む■セイヤ・シンマ 基人族 男
■23歳 転生者
「<聖なる閃光>!!!」
サリュの聖杖からまた光線が射出される。
俺とネネはサリュを守るように迫りくる触手をとにかく斬り、エメリーはついでとばかりに″腐蝕″を狙う。
二メートル級のマリモとなった教皇ヴェルディッシオに<聖なる閃光>を当てるのは訳ない。
ほとんど動かないし、本体までの途中に防ごうと動く触手もサリュの<聖なる閃光>の前には壁にすらならない。
確実に本体を捕らえ、その粘液状の球体を穿つ。
ダメージにはなっているのだろう。それはヤツの様子を見れば分かる。
しかし<聖なる閃光>の威力をもってしても倒すには至らず、バスケットボール程度の孔が開くだけだ。
元々は球体全てを飲み込むほど、極太の光線。
それが当たったというのにそれしか孔が開かないという事は、やはりスライムの身体により威力が減衰しているのだろう。
とは言え、サリュがダメージソースなのには間違いない。
少なくとも俺が千回斬りつけてもサリュの一発の方がダメージを与えられる。
俺に転生者特有のチート魔力があれば……と言っても仕方ないが。
頼りになる侍女たちに任せるしかない。そして俺は守るだけだ。
「OOOOAAAA!!!」
<聖なる閃光>を撃ちこまれる事に危機感を覚えたのだろう、教皇は次の行動に出る。
そりゃそうだ。
狼人族の回復役が女教皇を越える神聖魔法を使えるなどと普通なら思わない。
仮に調べて噂を知っていても信じられないはずだ。だから動揺する。
教皇にとってイレギュラーな存在。だからこそ触手攻撃も苛烈になるが、それも俺とネネ、エメリーで全て防げる。
打つ手なし。あとはサリュに削られるだけ。
……と、そうだったのなら良かったが、どうも楽には勝たせてくれないらしい。
さすがは王級と言うべきか、さすが教皇と言うべきか。
教皇は俺たちに攻撃を与えつつ、他方向にも触手を伸ばし始めた。
俺の侍女たちに対する無差別攻撃か? ――その考えもすぐに違うと気付く。
周りの魔族の死体を触手が取り込み始めたのだ。
エメリーたちが倒した悪魔族、空から落ちた飛魔族の死体が近くにある。
遠くにも触手を伸ばし、泥魔族や樹魔族までをも取り込もうとしている。
その結果、何が起こるのか。教皇の球体の身体が段々と大きくなっていくのだ。
「吸収しているのか!?」
相手はスライム。分裂と再生だけではない。吸収さえする。
味方の死体を取り込み、自分の力に変えようとしている。
それが体積だけの事なのか、能力やステータスが強化されるのかは分からない。
しかし止めないとマズイという事だけは分かる。
このままでは侍女たちが倒せば倒すだけ教皇は強くなる。
俺が走り回り<インベントリ>で回収していっても相手の触手の本数には敵わないだろう。回収速度が違う。
すでに教皇の身体は四メートル級にまでなっている。スライムだけに際限なく巨大化する恐れもある。
早急に決着をつけなければ……!
と、そこに空から声と共に光線が降り注いだ。
「「<聖なる閃光>!!!」」
二本の光線は教皇を押しつぶし……しかしすぐに球体に戻る。
とは言え一時的に動きを止めさせる事に成功した。
「シャムシャエル! マルティエル!」
「援護するでございますご主人様!」
「空の悪魔族はやっつけたでござる!」
空では飛魔族と神聖国軍の戦いは続いているが、二人はスポット的に参戦してくれるらしい。正直ありがたい。
こちらの様子に気付いての事だろう。
教皇の身体は誰が見ても異質だと感じるはずだ。
「よし! 三連<聖なる閃光>! 中心を狙え!」
「「「はいっ!」」」
「ネネ、エメリー! 俺たちは守るぞ!」
「はいっ!」「ん……はい」
迷宮三階層、リッチを倒す時にも使った三連<聖なる閃光>。
あの時は玉座の間を殲滅する目的で薙ぐように使ったが、今回は一点突破だ。
案の定、触手は死体を取り込むよりも三人を攻撃してくる。
意地でも撃たせないという気迫さえ感じる触手の猛攻。
こちらも意地でも通さないと迎撃。ひたすら斬りまくる。
そしてその時はきた。
「「「<聖なる閃光>!!!」」」
三本の光線は混ざり合い、全てを白く染めるが如く、教皇の身体も触手も塗りつぶしていく。
光だと言うのに大気が震えるほどの威力。
それを球体の身体に受けた教皇はさすがに大ダメージを受けた。
光線は貫通し教皇の背後へと抜ける。そして四メートル級の身体の大きく開いた孔。
死んではいない。しかし再生速度が明らかに落ちた。
これが一時的なものなのか、それともすでに瀕死なのか、表情もないので判断がつかない。
しかし俺は再生しようとするその球体の中にキラリと光る何かを見た。
それは巨体に対して小さすぎるもの。親指程度の大きさしかない紫の結晶に見えた。
「″核″か!?」
咄嗟にそう思った。魔物のスライムから魔石が採れる事もある。それは魔石が所謂″核″の役割をしているからだ。
生物である以上、何かしら″基幹″のようなものがあって、それで身体が形成されているはず。
″核″が心臓なのか脳なのか、それとも全く別の魔力的な器官なのかは知らないが。
ともかく魔族にもあってしかるべきだし、スライム状の王級悪魔族でもそういったものがあるはずだとは思っていた。
チラリと見えたアレが本当に″核″なのか、弱点なのかは分からない。
でも賭ける価値はある。
「サリュ、シャムシャエル、マルティエル! もう一度だ! 同じところを狙え!」
「「「はいっ!」」」
「撃ったら俺が突っ込むぞ! エメリー、ネネ、こっちは任せる!」
復活した触手の攻撃に晒されながら、三人が同時に撃てる機会を待つ。
そして俺の背後から再び放たれる三連<聖なる閃光>は的確に教皇の身体を穿った。
俺は光線に重なるようにして前に出た。
俺自身に<聖なる閃光>の残滓によるダメージが入るが関係ない。
直撃でも死なない自信はある。
喪服はグレートモスのものだからボロボロになるが、ステータス的には大丈夫。だから突っ込む。
<聖なる閃光>の光が収まらないうちに教皇の球体に手が届く。
再び大穴を開けたその中に侵入。<空跳>を使いつつ、光の中で目当てのものを探した。
そして見つけた。紫の結晶。
これを逃すわけにはいかない。再生される前に斬り伏せる。
「うおおおおおお!!! <抜刀術>【居合斬り】!!!」
俺の黒刀の切っ先は、確かに届いた。
小さな結晶は触れた瞬間にパリンと砕ける。
威力がありすぎたのか粉のようになったかと思えば、光の粒子のように消えていった。
そこで終わりではない。俺の身体はスライムの球体の中なのだ。
ここに居ては閉じ込められる。
「<空跳>!!!」
急激な方向転換。後ろ――入って来た孔目がけて俺は飛んだ。
同時に刀を持たない左手を前に出す。
<インベントリ>による収納だ。これは触れる必要はない。一定距離で俺が収納できると思ったものを異空間に仕舞いこむ。
しかし生物は収納出来ない。だからこそ結晶を斬った直後に試したのだが――
――シュン
……教皇の身体、スライム状の球体は世界から消えた。
……<インベントリ>に収納出来た。
……つまり
「よおおし!!! 勝ったぞおおおお!!!」
バックステップで<空跳>を使いながら、俺は黒刀を持った右手を掲げた。
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