カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after1:五人の新人侍女

1-2:買われた先は最弱種族

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■キャメロ 猫人族キャティアン 女
■16歳


 ティサリーンさんの言ってた通り、戦争は起こったそうだ。
 でもボクらが居るティサリーン商館を含む中央区では特に避難とかもせず。警鐘は鳴っていたけど、だからどうするという事もなく。

 その日の夕方には戦争が終わったようで、窓から漏れ聞こえる外の人々の声は「黒屋敷が勝った」「やっぱり黒屋敷が守ってくれた」とそんなものばかり。

 え? 勝ったのは『カオテッド』じゃないの?
 なんで【黒屋敷】ってSランククランばかり? 英雄だから?
 不思議なカオテッドの様子に、ボクらはそろって首を傾げていた。


「獣帝国軍は楽勝だったみたいなのよ~。でもね~何やら魔族の大群が襲ってきたみたいでね~」

『ま、魔族!?』


 ティサリーンさんはいつものんびりで危機感の欠片もないけど、聞いた内容はとんでもないものだ。
 よく分からないけど、獣帝国軍の他にも魔族の大群が襲ってきたらしい。
 で、その魔族に対しては【黒屋敷】の活躍で殲滅に成功したと。カオテッドは救われたと。


 ……なにその英雄譚。御伽噺じゃんそんなの。実際『聖戦』とか言われてるらしいけど。

 って言うかボクたちその人に買われるの? ホントに?
 ボクらを売る予定だから買い手を良く見せようとかそういう事じゃないの? いやこっちは奴隷だし選ぶ権利もないんだけど。

 五人そろって首を傾げる事が多くなる。理解出来ない事は不安にもなる。
 そんな日々は唐突に終わりを告げた。


「五人とも応接室にいらっしゃい。セイヤ様がいらっしゃったわよ~」

『は、はいっ!』


 来てしまったかという気持ちと、ようやく来たかという気持ちが入り混じる。
 不安を募らせたまま、ボクらはティサリーンさんに連れられ、応接室へと入った。


「お待たせしましたわ~」


 ティサリーンさんはそう言いながらソファーに座る。ボクらはその後ろに並んで立つ……んだけど……。

 ティサリーンさんの向かいに座る人物を見て、驚いて固まってしまった。

 これまで聞いた話では、Sランククランのクラマスで、大商人で、カオテッドの英雄。その上種族コレクターでもありドロップ品コレクターでもあると。

 どんな豪傑、どんな変人なのだろうと想像してたんだけど……まさかの基人族ヒューム!?

 髪も瞳も服も真っ黒の基人族ヒュームだ。
 えっ、基人族ヒュームって神聖国の保護区にしか居ないんじゃないの!?
 なんでカオテッドに!? それで組合員!? Sランクどころか戦う事すら無理っぽいんだけど!?

 そしてその後ろには四人のメイドさんが並んでいる。全員美人の女性だ。メイドっぽい立ち姿で姿勢がすごく良い。
 四腕の多肢族リームズ、角折れの鬼人族サイアン、日陰の樹人族エルブス、半面の星面族メルティス

 うわー、ホントに種族コレクターなんだ……。なんなのこの基人族ヒュームの人……。


「こちらから熊人族クサマーンのコーネリア(18歳)、虎人族ティーガルのカイナ(19歳)、鳥人族ハルピュイのケニ(18歳)、猫人族キャティアンのキャメロ(16歳)、狐人族フォクシーのクェス(15歳)ですわ」


 どうやら買い手側の紹介とかはないらしい。
 そりゃそうか。どんな人だろうが奴隷はただ買われるだけだしね。はぁ。


「彼女たちは元組合員ですわ。魔物討伐組合と迷宮組合にも在籍しておりました」

「おお。ランクは?」

「討伐組合がD。迷宮組合はEですわね」

「五人とも? えっ、この五人でパーティー組んでたって事ですか?」

「……いえ、彼女たちの他にもう一人おりまして、六人パーティーだそうですわ」


 ボクらの代わりにティサリーンさんは全てを説明する。
 リーダーだったレイラが死に、パーティー運営はより厳しくなり、借金が増し、そして五人そろって奴隷へ。
 ボクらは俯いてそれを聞くだけだった。
 チラリと見た基人族ヒュームの人も後ろのメイドさんたちもまた沈痛な面持ちだった。

 基人族ヒュームの人は「そうか」と呟き、ボクらを順々に見る。


「この中で現在のリーダー、もしくは当時のサブリーダーは誰だ?」

「あ、えっと、あたし……です」

「カイナだったか。じゃあ代表して君に聞こう。ティサリーンさんよろしいですか?」

「もちろんですわ」


 実際はリーダーのレイラの下にサブリーダーとしてカイナとコーネリアと決まっていた。
 でもレイラが亡くなってからリーダーシップをとっていたのはカイナだ。
 カイナはレイラみたいに頭は良くないけど、前に前にと行動で引っ張っていくタイプ。前衛のメインアタッカーだった。


「リーダーをうしなったのはカオテッド大迷宮か?」

「い、いえ、ダンバー大迷宮です」

「ああ、確か獣帝国で唯一の大迷宮だったか。それで――迷宮に対する忌避感はあるか?」


 大切なリーダーを迷宮で喪った。そしてボクらは借金奴隷に堕ちた。
 だから「もう迷宮に潜りたくない」「もう戦いたくない」そう思ったとしてもおかしくはない。彼はそう言った。

 ボクは……確かに迷宮に対する恐怖は残っている。でもそれ以上に悔しい気持ちが強い。
 あの時、罠を発見するのも、魔物を見つけるのも斥候であるボクの仕事だった。
 でも罠を見つけられず、パニックになり、魔物の発見も遅れた。
 レイラはボクが殺したも同じ。そう思って泣いたり塞ぎ込んだりもした。

 今思うのは、もう二度と仲間をあんな目に合わせたくないと、そんな気持ちだ。
 怖い。迷宮に入りたくない。でも――いつかみんなで迷宮を――。
 その為に強くなれるのならば、ボクは戦う事を恐れない。迷宮を恐れない。


「俺は自分の奴隷に『侍女であり共に戦う仲間であるように』と言っている。後ろの四人も奴隷であり、侍女であり、クランの仲間だ。仮に非戦闘系種族であっても、戦闘経験がなくても、共に迷宮に潜り、共に戦うように言っている。奴隷だからと言って使い捨てにするつもりもないし壁役にするつもりもない。同じ迷宮組合員として戦ってもらう」


 それは所謂『主人と奴隷』の関係性じゃない。
 多分『主人と侍女』の関係性でもないと思う。
 彼はまっすぐに見据えて続ける。


「君らを俺の奴隷とした場合――共に潜る事は可能か?」


 彼はカイナの目を見てそう言った。
 奴隷であり侍女であり仲間。すごく変な関係性。
 でも要は迷宮に潜れるかと、それが重要なのだろう。

 カイナがボクらを見回す。それぞれ目で問いかけるように。
 ボクの答えは決まっている。それを目で伝えた。
 一通り見た後、カイナはニヤリと笑った。あれは敵に突っ込む時の顔だ。


「はいっ! 問題ないですっ! よろしくお願いしますっ!」

「ハハッ、そうか、分かった」

「~~~っ! もう~っ! カイナうるさいわよっ!」


 張り上げた声にティサリーンさんから苦情が入った。
 でも彼と後ろのメイドさんたちは笑っている。
 ボクらもだ。久しぶりにカイナの大声を聞いた気がした。


 それから奴隷契約に移った。ボクらにもう懸念はない。五人そろって挑むだけだ。
 契約内容についてはティサリーンさんも慣れたものらしく「いつもと同じ」という感じ。さすがお得意様と言うだけある。
 ボクらの考えていたものよりだいぶ軽い契約だ。
 これで本当に主従関係として大丈夫なものなのだろうか……いやボクらにしてみればありがたいんだけど。

 そうしてカイナから順々に契約魔法を掛けられる。
 左手の甲にはそれと同時に奴隷紋が描かれる。
 受けるカイナも、後ろからそれを見るボクら四人も、それに注目していた。

 そして五人同時に驚かされた。


『め、女神様っ!?』


 円の中に描かれていたのは両手を広げ、後光の差した女神様の紋様だった。
 【創世の女神ウェヌサリーゼ】。基人族ヒュームを保護する神聖国の主神ではある。
 だから奴隷紋に描かれたのか、いやそれにしても、これはまるで――『女神の加護』じゃないか。

 あまりの美しさに口を開いたまま、ご主人様・・・・の方に目を向けると、全てを諦めたような悟りを開いたような遠い目をしていた。

 その後ろでは四人のメイドさんたちが揃って左手の甲をこちらに向けていた。
 皆、同じ奴隷紋だ。
 ふふん、と得意気な表情であると共に、「ようこそ」「私たちの仲間だ」そう言っているようにも見えた。





 五人とも契約が終わり、ティサリーンさんと最後の挨拶をする。
 お世話になりましたと。ありがとうございましたと。


「うふふ~、しっかりやるのよ~。色々と大変だと思うけど良い暮らしになるのは間違いないわ~。頑張ってね~」


 そんな言葉を頂いた。のほほんとしながら、どこか不吉な感じもした。
 ティサリーンさんはご主人様とも挨拶を交わす。


「セイヤ様、全種族制覇までは遠いですわよ~。私も微力ながら応援しますわ~」

「いや、種族制覇とか狙ってないですから。無理に決まってるでしょう? 多すぎますよ。今まで奴隷にした娘だってたまたま種族がバラけてるだけですし。と言うかもう屋敷の部屋がいっぱいなんで勘弁して下さい」

「あら~残念ですわ~」


 ……種族コレクターじゃなかったのか。


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