カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after1:五人の新人侍女

1-3:新人五人の初顔合わせ

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■クェス 狐人族フォクシー 女
■15歳 セイヤの奴隷


「げえっ! 【黒の主】!?」
「まぁたティサリーン商館から出て来やがった!」
「まぁた奴隷増やしやがっ……えっ、五人!?」
「多すぎだろ! 過去最多だ! しかもどれもカワイイ!」
「爆発」


 ティサリーン商館から出たら、街行く人が見て来ます。遠目に騒いでいる人も。
 そんな人たちを無視するように、セイヤ様――ご主人様は先頭で歩き始めました。
 私たち五人は四人のメイドさんに囲まれるようにして、後に付いて行きます。


 ティサリーン商館に来た時にもカオテッドの広い街並みは少し見ましたが、あの時はこれから五人バラバラに売り飛ばされるんだと俯きながら歩いていました。
 今改めて見渡すと、同じ大迷宮があったダンバーの街よりも栄えているように思えます。

 近くに見える砦のような大きな建物。あれは迷宮組合本部。そしてカオテッド大迷宮の入口でもあるそうです。
 街の中心に大迷宮の入口があるだなんて……便利ですけど怖さもあります。
 でもさすが本部と言いますか、すごく立派な建物で安心感もあります。

 大通りは屋台や商店が並んでいますが、明らかに組合員と分かる人たちが本当に多い。
 後から聞きましたが、中央区は特に迷宮組合の自治区なだけあって、組合員の為の区画として特化されているそうです。
 お店も探索に必要な所ばかり。周りの四区から組合員の人たちが集まるのですから当然なのかもしれません。

 種族も本当にバラバラです。私たちのような獣人系種族も多いですが、鉱王国、樹界国、魔導王国の人たちだろうなーと一目で分かるパーティーばかり。

 混沌の街カオテッド。
 本当にごちゃごちゃと四か国が入り混じった街なのだと、改めて思いました。


 そんな中で注目を浴びるご主人様は、混沌の街の中でもさらに異質という事なのでしょうか。
 まぁ基人族ヒュームなんておそらく一人しか居ないでしょうし、Sランクとか大商人とか英雄とかティサリーンさんも仰っていたので、それも関係しているのかもしれません……どこまで本当なのか分かりませんけど。


「パーティーでの役割はどうなっていたんだ?」


 私の隣を歩く鬼人族サイアンのメイドさんにそう聞かれました。私たち五人に対して、です。
 カイナは前衛の斧使い。コーネリアは前衛盾役で中盾と直剣。ケニは後衛の弓。キャメロは斥候役で短剣の遊撃です。


「わ、私は後衛で魔法です……」

「やはりか。狐人族フォクシーは獣人系種族の中でも魔法に秀でていると聞くからな。属性は?」

「えっと、火を少々……」


 近接戦闘職が多い獣人系の中でも狐人族フォクシーは数少ない魔法系種族だと言います。
 狐人族フォクシー自体の数も少ないので、それこそ王都の魔法師団とかに優遇される人も多いのだとか。
 私の場合は、そういった事とは無縁でしたけど。
 魔法が得意って言ってもあくまで獣人系種族の中では、という話で、魔導王国の導珠族アスラの人たちに比べると全然だと思います。

 と、そんな紹介を鬼人族サイアンのメイドさんにしていると、前を歩くご主人様がチラリと振り返りました。


「ん? ……クェス、火魔法以外は?」

「え、いや、その、使えないです、が……すみません」

「ふむ、そうか……なるほどな」


 ……えっ。げ、幻滅させちゃったんでしょうか?
 火魔法が少ししか使えない私は、いらないと捨てられてしまうのでしょうか。
 そう内心で慌てていると、鬼人族サイアンのメイドさんがご主人様に問いかけます。


「ご主人様、見た・・のですか?」

「ザッとな。クェスはなかなか面白いな。他にも悩ましいのが居るよ。まぁ後で話す」

「そうですか。それは楽しみですね」


 笑顔で話すお二人の内容は分かりませんが、とにかく不穏な感じではなかったので大丈夫そうです。どこか不安は残りますが。


 大通りを歩き、途中の曲がり角を北側へ。
 そこの通りは、もう見るからに高級住宅街です。貴族が住みそうな屋敷がドンドンと並んでいました。
 こんな所にお住まいが……いえ、カオテッドで一番お金持ちと言っていたのでそれはそうなのかもしれませんが、極貧組合員だった私たちにとっては近寄りがたい通りです。

 しかし結構歩いている人が多い。それもごく普通の人。
 決して高級住宅地に住んでいるような人ではなく、年若い組合員や、平服の夫婦など様々です。


 ある程度進むと通りの終点に人だかりが出来ているのが見えました。
 どうやら列を為して最奥のお屋敷の隣のお屋敷に入っているようです。
 これから入ろうする人の長い列。出てくる人も楽し気にこちらに歩いてきます。

 一体なんなんだろうと考えていると、先頭のご主人様が私たちに顔を向けました。


「あの突き当りの黒い屋根のが俺たちの家な」

『ええっ!?』


 あの一際大きなお屋敷が!? わ、私たちもあんなトコに住むんですか!?
 お屋敷もお庭も、どう見てもこの通りで一番大きいんですけど!?
 ……やっぱりカオテッドで一番お金持ちというのは本当なのでしょうか。


「で、その手前の行列出来てるのが『黒屋敷迷宮博物館』って言うんだけど、俺たちが経営してる施設だな」

「あ、あれが……!」

「なんだ知ってたのか。ティサリーンさんから聞いたか?」

「は、はい。えっと迷宮のドロップを集めて見せているとか何とか……」

「そうそう。ま、説明とか案内とかはまた今度な」


 それだけ言ってご主人様の顔は前を向きました。
 ティサリーンさんから聞いた時にもよく分かりませんでしたけど、こうして目の前に突きつけられても未だによく分かりません。
 ともかく今後説明してもらえるという事なので、その時を楽しみにするしかなさそうです。

『はくぶつかん』に群がる人たちの合間を縫って、ご主人様は私たちを引き連れ、お屋敷の門をくぐります。
 その際に行列の人たちから「カオテッドを救ってくれてありがとう」「黒屋敷は英雄だ」「また奴隷増やすのか」などなど声を掛けられ、ご主人様は苦笑いのまま軽く手を上げていました。


 ともあれお屋敷の庭へ。門の裏には警備用と思われる詰所。その隣には謎の大穴が開いています。
 門からお屋敷へと続く石畳は綺麗に揃っていて、その脇には花壇や灯篭が並んでいます。すごく美しい小道。
 石畳の道の左右には芝生が広がり、塀の付近には木々が植えられています。
 これだけのお庭を維持するのも大変なのではないでしょうか。それも私たちのお仕事になるのだと思いますけど。

 お庭の右奥には畑も見えます。謎の丸太の山も。
 逆の左側には小さな建物が二棟。どちらも平屋ですが、お屋敷と同じように屋根が黒いです。
 厩舎でも納屋でもないと思いますけど……誰かの家でしょうか。
 あ、私たち新人奴隷はお屋敷ではなくこちらに住むのかもしれません。それでも十分過ぎるとは思いますけど。


 そんな事を思いつつ、お屋敷の入口に着きました。彫刻された大きな木製扉です。
 多肢族リームズのメイドさんが先回りして扉を開けると、ご主人様がこちらに振り返り「ようこそ」と大仰に両手を広げました。

「し、しつれいします」とオドオドしながら足を踏み入れれば、そこは吹き抜けのエントランス。
 赤い絨毯と天井からは豪華なシャンデリア。
 それだけでも感嘆の溜息なのですが、正面に見える物体・・にどうしても目が釘付けになってしまいます。
 まるでリザードマンの尻尾。緑の鱗が並ぶ、超巨大な尻尾がドーンと置かれていました。


「え、こ、これ……なん、ですか? まさか……」

「風竜の尻尾の剥製だよ」


 何でもないかのようにご主人様はそう言います。風竜の尻尾の剥製……って事は鱗とかこれ本物なんですか!?
 カオテッドで一番のお金持ちというのは、こんなものまで買えてしまうものなのでしょうか。
 値段が全く想像つきません。


「展示品を全部博物館に置いちゃったからな。あっちに置けない尻尾を置いたんだよ。せっかくの戦利品だしな」


 え……せ、戦利品? それはあれですよね? オークションとかで競り合って、そういう戦いの戦利品って事ですよね?
 戦ったとかじゃないですよね? カオテッド大迷宮に居るとかじゃないですよね?

 私たち五人は戸惑いを隠せないままご主人様の後に付いていきます。
 右側の廊下を進んだ先、奥の方にある部屋に入ればそこは食堂です。
 お店にもなりそうな広い食堂には長いテーブルが二つ。その周りにはメイドさんが立って並んでいました。
 どうやらご主人様の帰りをここで待っていたらしいです。


「うわー」というケニの呟きが聞こえました。そのメイドさんたちを見ての感想です。

 鉱人族ドゥワルフ多眼族アフザス導珠族アスラ小人族ポックルなどカオテッドでよく見かけそうな人も居る一方で、竜人族ドラグォール闇朧族ダルクネス人魚族マーメルなど全く見た事もない種族が居ます。
 ご主人様は否定していたけど本当に種族コレクターなのかもしれません。

 さらに驚くべきは二つ。天使族アンヘルが二人も居る事と、狼人族ウェルフィンの『白い忌み子』が居る事。

 天使族アンヘルは神聖国にしか居ないはずですし、まぁそれは基人族ヒュームもですけど、少なくともメイドさんにして良いような人たちじゃないはず。

『白い忌み子』は狼人族ウェルフィンじゃなくても獣人系種族なら結構有名です。
 戦えないし、周りに災厄をもたらすと……。
 ティサリーンさんから狼人族ウェルフィンの奴隷はすでに居るって聞いていましたけど、まさか『白い忌み子』だなんて……。


 と、そんな私たちをメイドさんたちと対面するように並ばせ、紹介と顔合わせが始まります。


「あ、あたしは虎人族ティーガルのカイナですっ! 十九歳ですっ! よろしくお願いしますっ!」

「自分は熊人族クサマーンのコーネリアと申します! 年は十八! 宜しくお願い致します!」

「私は鳥人族ハルピュイのケニですー。十八ですー。よろしくおねがいしますー」

「えっと、ボクは猫人族キャティアンのキャメロです! 十六歳! よろしくお願いします!」

「わ、私は狐人族フォクシーのクェスです、十五歳です、よ、よろしくお願いします」


「はい、というわけでこの五人が新人だ。元々これに一人加えた六人でパーティー組んでいたらしい。ダンバー大迷宮の探索経験もあるそうだ。俺たちよりも先輩って事だな。逆に色々と教えてもらう事になるかもしれんから、みんなもよろしく頼む」

『よろしくお願いします』


 ……って、私たちが先輩!? いやいやいや、何年も燻ってた組合員ですよ!? ランクだってDとEですし!
 Sランクとかいう異次元の方々に教える事なんて何もないと思うんですけど!?
 それ以前にご主人様と先輩奴隷の方々ですし!


「じゃあ軽くみんなも紹介するな。二〇人も居るから絶対名前とか覚えられないと思うけど一応。サリュの事も気になってるみたいだしな」

「はい……しょうがないと思います……組合の人たちみたいに祈ってこないだけマシです……」


 サリュと呼ばれた『白い忌み子』が狼耳をシュンとさせています。
 マズイ。例え忌み子でも先輩で、私たちは新人。気を悪くさせちゃ失礼にあたります。
 ……でも『組合の人たちが祈る』ってどういう事?

 そんな私たちを余所に、ご主人様はさっさと紹介を始めます。
 色々考えるのは後! 出来るだけちゃんと覚えないと!


「彼女がエメリー。侍女長だ。屋敷での過ごし方や仕事で分からない事があったら、何でも頼るように」
『よろしくお願いします!』

「彼女はイブキ。戦闘リーダーを任せている。迷宮での戦い方や訓練についてはイブキに相談するといい」
『よろしくお願いします!』

「彼女はウェルシア。商業部門長だ。隣の博物館やら何やら、うちと商業ギルドの間に入ってもらっている。一応魔導王国の伯爵位だ」
『よろ……伯爵!?』

「彼女はシャムシャエル。神聖国の司教位だな。となりのマルティエルが助祭」
『司教様!?』

「彼女はラピス。これでも一応、海王国の第一王女」
『第一王女!?』

「彼女はミーティア。樹界国の第二王女で『神樹の巫女』」
『ちょ!?』


 そんな感じで、紹介だけでぐったりです。全く意味が分からない。
 え? ホントに奴隷なんですか? 王女様とか。ああ、そうですね、奴隷紋ありますもんね。私と同じですね。

 とにかくご主人様は想像以上の人物である事は確実。
 基人族ヒュームでSランクでお金持ちってだけで十分理解不能だったけど、もっと別な何か・・……あっ、もしかすると御伽噺の【基人族ヒュームの勇者】ってやつじゃ……そんなわけないか。

 で、頭を抱える私たちに最後に紹介するのは、例の『白い忌み子』でした。
 ご主人様は彼女の頭を撫でながら紹介します。


「彼女はサリュという。うちのトップヒーラーだ。巷では【白き聖女】とかいう二つ名を持っているらしい」

「ちょ、ちょっとご主人様! それ言わないで下さい!」

「ま、お前たちも『白い狼人族ウェルフィンは忌み子だ』って話を聞いてビビってるのかもしれないが、カオテッドじゃサリュを嫌厭するヤツなんて極一部の噂を鵜呑みにしている連中だけだ。実際サリュに救われた組合員や住民も多い。まぁ一緒に過ごせばすぐに分かるだろうさ。サリュは『忌み子』なんかじゃないってな」


 ご主人様の言葉に周りのメイドさんが頷いています。王女様とか司教様とか伯爵様も。
 聖女というのは言い過ぎなのかもしれないけど、Sランククランのトップヒーラーというならば本当なのかもしれません。

 と言うか、天使族アンヘルの司教様より神聖魔法が卓越してるって事? ……いやさすがにそれは。

 そんな感じでお互いの紹介がザッとではあるが終わりました。全員のお名前を覚えたわけじゃないけど、何人かは覚えました。
 インパクトのある種族と紹介だったから記憶に焼き付いた、とも言えますけど。

 もうこれだけで私たちはぐったりという感じだったのですが、本番はこれからだったのです。
 理解不能、意味不明、思考放棄したくなる事が続く事に……。


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