カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after4:北は竜の地、邂逅の時

4-7:竜人族の里へ

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■ボーリン 鉱人族ドゥワルフ 女
■65歳 迷宮組合トルテーモ支部長


「な、なんだったんですか、あの人たち……」

「そりゃあんた、【黒屋敷】ってSSSランククランだろうよ」

「知ってますよ、そんな事!」


 あの子たちが去った後、受付嬢のメリッサが頭を抱えていた。気持ちは分かる。
 もちろんトルテーモが鉱王国の街であり、カオテッドと街道で繋がっている以上、商人たちからの噂も流れていた。
 聖戦の事も、【黒屋敷】という存在も、知っていた。

 スペッキオ本部長からの手紙にはより詳しく書いてあったし、だからこそ組合職員には事前に通達も出来た。
 SSSランクってのはこんな連中だからね、と知らせておく事も出来た。


 とは言え話に聞くのと実際に見るのでは全く違う。
 目の前に証拠があるのにその事が信じられない。現実を突きつけられる事による非現実感。
 あたしだって同じもんを味わったんだからね。メリッサの事をどうこう言えないよ。

 基人族ヒュームのクラマスと二五人の多種族メイド。
 貴族服とメイド服に身を包んだ、礼儀から何から組合員らしくないクラン。

 普通の貴族と接する機会があっても、あんな威圧感を受ける事はないね。
 貴族宅のメイドよりこのクランの方がちゃんとしたメイドっぽく見えるのがよく分からないが。


 ともかくトルテーモ迷宮を制覇するであろう前提で対応はした。あの子たちも『制覇できて当然』って顔してたしね。
 自信の表れ――それは力とか経験とか、そういうのとは関係なく、ごく自然にそう思えてしまえているんだろうと。
 英雄クランとは、SSSランククランとはここまでのものかと思わされたもんだ。


 しかし探索から帰って来た時にはさすがに驚いた。
 ツェッペルンド迷宮を七日で制覇したと聞いたから「もしかすると」とは思っていたけど、六日で帰って来たからね。

 トルテーモ迷宮は二六階層と浅い方だが【迷宮主】はミスリルガーゴイルだ。
 固いのは当然。魔法もろくに効かないし、飛びながらの攻撃も激しい。
 おまけにお供のガーゴイルが四体。Bランクパーティー一組程度ではガーゴイル一体を相手するだけで精一杯だ。

 だからトルテーモ迷宮を制覇するのはそれなりに人数の居る高ランククランや、複数パーティーでの共闘となる。
 浅い迷宮だからって制覇率が高いわけじゃない。少なくとも一年以上は制覇者を出していないからね。


 で、英雄クラン様は六日で制覇したわけだ。
 もちろん過去最速。記録は二二日だったからね。大幅更新ってレベルじゃない。
 まぁそこは覚悟していた部分でもある。信じられない気持ちがあったのも事実だが。


 とはいえ、だ。
 魔石を山のように持ち込んで来たとか、【階層主】と【迷宮主】のドロップを何体分も持ち込んで来たとか……。


「あ、あんた、まさか【主】と何戦も繰り返して来たってのかい!?」

「三戦ずつだけですけどね。一種類ずつは博物館用に持ち帰るんで、それ以外は売ります」


 風の噂で聞いた事がある。カオテッドには【黒屋敷】が運営している施設があって、そこがカオテッド一番の観光名所になっているって。
 なんでも迷宮で得たドロップ品を並べて、訪れた人に見せているらしい。

 組合員がドロップ品を手に入れれば、売るか装備品に加工するかの二択だ。
 それを見せる事で金を稼ぐだなんて、そんな事を考えるのも実際に出来るのもこのクランだけだろう。

 で、トルテーモ迷宮の【主】のドロップも同じように見せるって事かい? だから三回ずつ戦ったと?

 思わず「はぁ」と息を吐く。
 【階層主】はともかく【迷宮主】との連戦なんて誰であっても考えられないと思ってたけどね……。
 それだけの事を熟して、尚且つこの速さとか、一体どれだけあたしの想像を超える力を持ってるんだか。
 あのスペッキオ本部長がSSSランクにしたのも頷ける。それだけ規格外って事だ。


「そ、それにあんた、この魔石の量は……」

「あー、ここの迷宮は魔物部屋が少なくてですね、あんまり量がなくて申し訳ないんですが」

「ちょっと何を言ってるか分からないんだが」


 頭を落ち着かせ、冷静に努めつつ、色々と話を聞いた。
 どうやらこのクランは普段、カオテッドに潜っている時にも魔物部屋を連戦するような探索をしているらしい。
 群がる魔物をまとめて倒す事に長けている。だからこその『聖戦の覇者』なのか。総じて一騎当千の子たちなのだと。

 普通の組合員ならば避けて当然の魔物部屋。そこに入り殲滅する事が、この子たちにとっての『通常の探索』かい。

 おまけに聞けば能力向上バフ魔法を使い続けて、走りながら探索しているらしい。
 だからこその速さ。そう言ってしまえばそれまでなんだけどねえ……。


 支部長の立場からすると注意しとかないといけない事が多い。
 迷宮を走るなだとか、魔物部屋に入るなとか、他の組合員が真似したらどうするんだとか、高ランクなら見本となるようにとか。

 とは言え魔石にしてもドロップにしても大量の買い取りは非常に助かる。
 おまけにこれがSSSランクという規格外クランの『通常探索』なんだと言われれば、あたしには何も言えない。ただただ理解が出来ないだけだ。


「ま、あんなの二組と居るクランじゃないよ。特別の中の特別。間近で見られた事がラッキーだったとでも思うんだね」

「はぁ」


 メリッサにそんな事を言いつつ、あたしは事務仕事に戻った。

 ……まさか帰りに寄ってまた潜るとかないだろうね?



■ケニ 鳥人族ハルピュイ 女
■18歳 セイヤの奴隷


 迷宮に潜りつつ鉱王国を北上して約一月ひとつき
 初めての経験ばかりでしたがとても新鮮で面白かったです。
 魔物討伐組合の時に初めて遠征を体験したような感じでした。

 ずっと遠くに見えていたマツィーア連峰も目前。
 見上げる山々は横に長く伸びて、その端は確認出来ません。
 頂上もまた雲に遮られて、どれほどの高さなのかは分かりません。


 鉱王国の北側、連峰の麓に竜人族ドラグォールの里があるという話でしたが、正確にはその山脈を少し登る必要があるそうです。
 鉱王国の街道から竜人族ドラグォールの里に続く山道を行き、やっと辿り着ける場所なのだと。
 竜人族ドラグォールの里は鉱王国の領土というわけではないそうですからね。普通に行くには不便な場所なのだそうです。

 排他的な里だとはツェンさんから聞いてました。それは地理的にも種族の性格的にも他種族を遠ざけるものなのだろうと。

 ツェンさんはそれが嫌で里を飛び出したそうですが、確かにツェンさんの性格を知っている身としては里に閉じこもっている人ではないだろうなーと思ってしまいます。


 とは言え鉱王国からの隊商も定期的に訪れるそうで、完全に他種族を排斥しているわけではないらしいですね。
 もっとも竜人族ドラグォールの方から鉱王国に訪れるような事はないし、隊商が来るにしても険しい山道を馬車で来るわけで、しかも山に出てくる魔物は平野部のそれより非常に強い。
 だから隊商も限られてしまうとの事です。


「すげえトコ住んでたんだな、ツェン。陸の孤島って感じだ」

「だろ? こんな場所、好き好んで来るヤツが居ねえよ。引き返すなら今のうちだぜ?」

「いや行くけど。里は結構上の方なのか? いや、山脈の高さを見れば二合目とか三合目とかそんなもんなのかな」

「二とか三とか分かんねえけど、この速さならそんな掛からねえな」


 山道に入ったので馬車を引っ張ったまま馬が登るのは辛いだろうと、全員下りています。何なら馬車を後ろから押してあげています。
 馬車を<インベントリ>に入れちゃえばいいと思うんですけどねー。何か考えがあるんでしょうか。

 ともかく荷物を載せた隊商の馬車より速いのは確かで、道中の魔物にしても隊商護衛なんて比じゃない、世界一の戦力ですからねー。心配するまでもないです。
 マツィーア連峰には竜が居るって話ですけど、麓に近い方には亜竜も出るらしいです。その餌になりそうな魔物とかも。

 で、ツェンさんはワイバーンと戦った事があるらしい。里の近くで、って事でしょうね。
 <カスタム>される前にワイバーンを倒すとか……ツェンさんは元々強すぎるんですよ。
 今となってはもう、私たちがいくら<カスタム>されて特訓を頑張っても、全く追いつける気がしません。


 私は時々飛んでは周囲の目視警戒と進路の確認をしています。
 そうして登り始めて鐘一つ分くらいでしょうか。私の<千里眼>にそれ・・が映りました。


「ご主人様―、集落が見えましたー」

「よーし! 飛んだままだと警戒されるから下りてろ!」

「了解ですー」


 私が見た限りだと思ったよりも広い集落でしたね。
 そりゃ数百人が暮らす街レベルの里でしょうから広くて当然なのかもしれないですけど、こんな狭い山道の先にそれだけ広く整えられた土地があるとは思えないですもん。

 畑もありましたし家も立派な造りのものが多そうでした。その家も独特に見えます。
 こう言ってはなんですが戦いばかりのイメージがある竜人族ドラグォールに独自の建築技術があるのも驚きですし、農業とかやるとは思いませんでした。
 てっきり森で採取したり狩った魔物の肉を食べたりしているだけかと。
 いや、そりゃ余所とあまり交流を持たずに暮らしているわけですから、里の中で生産とか加工とか、してて当たり前なんですけど。


 里の中を歩いている人とかも見えましたけど、当然竜人族ドラグォールだらけですねー。
 こんなに多くの竜人族ドラグォールとか迫力あります。全員がツェンさんみたいに強いんでしょうか。最強の里ですね。
 髪色も色々とあるようです。
 ツェンさんの青髪は水竜系竜人族ドラグォールだからって事なんでしょうか。


 ともかく里が近くなってきたという事で、ツェンさんはエメリーさんと一緒に先頭に行きました。
 里の入口には門番さんみたいな人が居るそうで、その繋ぎの為ですね。

 まぁこの里が小さな国みたいなものですから、国境警備と見れば警戒されるのも頷けます。
 ましてやこの山道を通って来るのは定期的に来ている隊商くらいでしょうし、それに引き換え私たちは侍女ばかりですからね。
 ツェンさんが居なかったら里に入れるのかどうかも怪しいです。


「いやー、ここまで長かったな! やっと目的地か!」

「あくまで目的地の一つ、だからね? カイナ。ボクらこれから山脈で竜狩りだから」

「うむ、むしろここからが本番とも言える。未だ自分は不安なんだが」

「ですよね。私たちは皆さんの足を引っ張らないようにしておかないと」


「貴女たち声を抑えなさい。里の方々の前ではご主人様の侍女として恥ずかしくない態度で臨むように」

『はいっ!』


 はしゃいでいたらエメリーさんに怒られました。侍女長様は恐ろしい。
 果たして竜人族ドラグォールの里の皆さんは、ツェンさんより強いエメリーさんを見て、それを受け入れる事が出来るんですかね?

 この世には竜人族ドラグォールより強い多肢族リームズが居る、と。


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