カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after5:久しぶりのカオテッド

5-9:自称天才、黒の主と出会う

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■セイヤ・シンマ 基人族ヒューム 男
■24歳 転生者 SSSランク【黒屋敷】クラマス


 さて、今日は色々と忙しいな。

 グレンの侍従服はあと数日掛かるらしいので後回し。服が仕上がったら<アイテムカスタム>して強度を上げたり耐熱耐寒仕様にする。
 グレンは侍従服を着て戦う事にも慣れないといけないし、<ステータスカスタム>で上げた能力をアジャストする作業も同時進行で行わないといけない。結構大変だ。
 ちなみにセキメイはミーティアの侍女服を借りてすでに着ている。


 で、まずはプラムからだ。
 イブキとツェンの報告を受けたが良い面と悪い面が極端に出ていたと思う。

 良い面はやはり竜としての戦闘力の高さ。子供だとは言えさすが【輝帝竜】と言えば良いのか。
 <カスタム>なしの状態でも単純な速度や力強さは、高ランク組合員のそれをはるかに凌ぐ。
 まぁステータスで確認していた事ではあるが、ちゃんとそれを以って戦えるというのが素晴らしい。


 が、その戦い方というのが悪い面だな。人とかけ離れすぎている。
 そりゃ竜が人の姿に化けているのだから、それで人と同じような戦闘をしろと言う方がおかしな話だ。
 竜が故に竜らしく。弱者を屠る為の攻撃を。そんな感じ。

 イブキとツェンだけに任せるつもりはないので、俺と指南役のグレンも一緒に訓練に参加した。
 模擬戦もして、実際にプラムがどういう状態なのかを把握する。グレンももちろん戦った。


「これは思っていた以上に″竜″だな」

「人を超える者、竜の王者、なるほど……とも思うが」

「そうじゃろう! そうじゃろう!」


 褒めてねえよ。いや褒める部分もあるけどさ、困惑の方が大きいんだよ。


「とりあえずツェンの<体術>教室は継続だな。それでどこまで人の動きに近づけるかって所だが」

「だよなー。あたしあんま自信ないんだけど」

「ツェンの稽古は必要でしょうがそれだけで良いものかと考えてしまいます」

「うむ、イブキの不安ももっともだ。身体を慣れさせるのと同時に考え方そのものを修正する必要があるようにも思える」


 うん、みんなの意見に賛成だ。
 おそらく<体術>を身に付ければ、意識した状態で人と同じ戦闘を熟す事は可能だろう。<体術>スキルを得られればの話だが。

 しかし皆で迷宮に潜り、集団戦となり、咄嗟の判断を必要とする高速戦闘になった場合はどうか。
 おそらくプラムは竜として戦うだろう。突っ込んで一撃を繰り出すだけの攻撃だ。もしくはブレスとか吐いちゃうかもしれないが。
 ともかく集団戦闘の陣形をとっているクランが瓦解するのは間違いない。

 じゃあどうすればいいのかって話になるんだが……。


「多分、プラムに口で説明しても意味ないと思う。数を熟して身体で覚えさせるか、侍女たちの動きをよく見させるか……だと思うんだが」

「うむ、主の意見が正しいだろうな。加えて言えば戦闘以外、普段の生活から皆の動きを見させたり、実際に動いたりとした方が良いかもしれぬ」

「侍女教育も並行して行いますか」

「プラムの場合、侍女教育の前に普通に人としての生活に慣れるのが先じゃねえか?」


 だな。時間を掛けてじっくりやった方がいい。
 今までの侍女の中で潜在能力は一番高い。しかし、ものになるまでには一番時間が掛かりそうだ。
 まぁ元から生活に慣れさせるのが先だとは言っていたけどな。思っていた以上に極端だったから困った。

 ツェンだけでなくイブキもグレンも訓練には付き合うらしいが、なるべく侍女たち全員で構ってあげるように言っておこう。
 その方が人としての生活にも慣れるの早いだろうし。

 早く迷宮に潜りたい気持ちはあるけど、焦っちゃダメだな。
 一番時間が掛かるのはプラムだろうが、侍女たちの特訓やグレン・セキメイのアジャスト作業も加わるとなれば長期探索は当分控えた方がいい。

 俺も訓練しないとな……グレンに稽古をつけてもらわないと。


 で、プラムの方はそれでいいとして、今日のもう一つの案件。
 クレーマーもとい、何とかって言う白亜族チェルキーの革職人に会わないといけない。

 ウェルシアとアネモネから報告を受けたが、ズーゴさんから聞いた『厄介なクレーマー』というのとは、ちょっと違う印象を受けた。

 まぁ警備の視点からすれば、何度も受付に来ては「私に展示品を弄らせなさい!」とか騒ぐ輩は確かに『厄介なクレーマー』なのだろう。セシルさんたちもげんなりしていたに違いない。
 俺たちがカオテッドに居ればすぐに対処出来たかもしれないが、まぁたられば・・・・だな。


 俺としては報告を聞いて納得した部分、気付かされた部分が大きい。
 確かに展示品の保存状態についてまで気を配っていなかった。肉や内臓は腐るだろうから展示を控えたり、ホルマリン漬けのようにして展示しているものもある。ヘカトンケイルの目玉とかな。

 しかし毛皮とかは全く意識していなかった。
 グレートウルフの毛皮にしても、五首ヒュドラの蛇皮にしても、「ドロップ品だから肉とか付いているわけじゃないし大丈夫だな」と普通に置いていた。

 言われてみれば革だって腐るだろうし、革鎧に加工した所で経年劣化するのだから、加工もせずに展示するのはおかしな話だ。


 とは言え、やはり迷宮産のドロップ品というのは地上の魔物を解体したものより、断然劣化しにくいらしい。
 特に強い魔物になればなるほどそれは顕著になるそうだ。
 実際、アネモネが展示品を<鑑定>してみても、そこまでの変化は見られないと言う。アネモネにして「言われてみれば……」という程度らしい。

 だが、いずれ目に見えて劣化するのは間違いないので、何かしらの手段は講じなければならない。それが博物館経営者として当然の責務だ。

 願わくば、その何とかいう白亜族チェルキーが本当に凄腕の革職人であればいいのだが……。





 そんなわけでウェルシアに言って、屋敷に連れて来てもらった。


「あ、貴方が【黒屋敷】のクラマスの【黒の主】……? ホントに基人族ヒュームなのね……(小声)」


 応接室での初対面となったわけだが、案の定武器庫と化した応接室にも驚いていたようだ。いつもの事である。
 ちなみに小声もちゃんと聞こえている。これこそいつもの事である。

 白亜族チェルキーは魔導王国で結構見たんだけど実際に話すのは初めてかもしれん。
 パティ並みに小柄で髪は真っ白。長~い耳が垂れている。
 尻尾は竜みたいにしっかりしているがそれも白い毛でフサフサだ。地面に擦って歩くようだが、それで真っ白なのが謎だ。


「わ、私は魔導王国が誇る奇跡の天才革職人! ムゥチムよ! よろしくね!」

「おお、俺はセイヤだ。よろしくな天才」


 なかなか良いキャラをしている。思わず俺も口調が砕けてしまう。
 ちなみにうちの魔導王国伯爵様に聞いてみたが、奇跡の天才革職人の事など知らなかった。実家が大店であったアネモネもだ。

 自称にしても上客になりえる俺の前でこれだけ大口叩けるのはスゴイと思う。
 まぁスゴイ馬鹿なのかもしれないが。

 そうして話を聞いてみれば事前に聞いていた報告と同じなんだが、とにかく「私に任せておけ」といった感じだ。
 展示物の保全をするのは大賛成。しかし問題はこの天才にそれだけの技量があるかという事。
 うちのお宝を扱わせていいものか、その判断をしなければならない。


「というわけでアネモネ、ジイナ、リンネ、頼む」

「「「はい」」ですネ!」


 俺は完全に門外漢なので判断は出来ん。というわけで審美眼に優れた面子にお願いする。
 まぁ三人とも革製品に詳しいわけではないだろうが、他の侍女よりマシだと思う。


「言われてたから一応持って来てるわよ、私の作品。あとは加工する所を見たいって言うならそれでもいいし」


 相変わらず自信満々な天才は手持ちの鞄から色々と革製品を出してきた。
 そんなに大きなものは持ち歩けないから小物ばかりだな。細工品やブレスレットなど。
 なめした革そのものも持ってきたようだ。

 俺にはかなり綺麗に見える。革独特の艶と味わいというか、それこそ前世の革製品と遜色ないような感じ。


「これはオークの革ですか? よくここまで出来ますね」

「細かい所まで美しいですネ! でももうちょっと奇抜な方が好きですネ!」

「ふふふ……文句なし。高値で売れる……ふふふ」


 どうやら高評価らしい。天才は胸をなで下ろすどころか「そうでしょう、そうでしょう」と胸を張っている。

 念の為、どうやって加工するのかも見ておく事にする。せっかく天才も乗り気だしな。
 場所は地下訓練場だ。
 奥では模擬戦と訓練をやっているが、手前の方で場所を確保した。
 案の定、天才は模擬戦の様子にビビっている風だったが気にしないでくれ。


「で、どの革で試す? ウェアウルフかウェアウルフロードかワイバーンあたりか?」

「えっ!? 博物館に展示してあるのだけじゃないの!? 同じものが在庫であるの!?」


 ダブって売るのもあるけど全部を売るってわけじゃない。何かしらに使えそうなものは一応確保している。
 毛皮とかそれこそ色々使えそうだしな。いくつかあるうちの一つを展示してるってだけだ。

 そんなわけでワイバーンの革で試してもらう事にした。
 これは二階層のドロップ品で、【天庸】戦で倒したものや、マツィーア連峰で狩ったものとは違う。
 地表のワイバーンだとそれこそ肉とか付いててなめさないとダメだろうからな。まずはドロップ品でお試し。


「いやお試しって……ワイバーンの素材だって滅多に扱えるものじゃないんだけど……」


 天才でも少しは臆するらしい。
 そうは言いつつも、鞄から作業道具を出して並べていく。

 色々と話を聞いてみると、やはり地表の魔物の剥ぎ取り品をなめす・・・のと、迷宮の魔物のドロップ品の加工ではかなり手法が異なるらしい。

 なめすってのは、ようは革から油分や肉を削ぎ落し、腐蝕しにくくする技術だろう。
 前世のそれとは違う所もあるのだろうが、何となく想像がつく。

 一方でドロップ品の革の劣化防止技術というのは錬金術に近いように感じる。
 魔石と特殊な材料で溶液を作り出し、それに漬け込んだり、塗ったりするらしい。
 ユアが杖を作る時に、魔物素材から接合材を作っていたが、似たような印象を受ける。
 やっぱりファンタジー世界の技術っていうのは魔法ありきなのだと改めて思わされた。


「どうよ! こんな感じだけど!」


 さすがにすぐに完成するものではないが、天才は一通りの工程を説明しながらやってみせた。安定のドヤ顔である。
 ジイナ、アネモネ、リンネの顔を見回せば好印象の雰囲気。うん、大丈夫そうだな。


「よし、採用!」

「よっしゃ!」

「じゃあ展示物の加工を正式に依頼するとして……他にも頼みたい事があるんだよな」

「お? なになに? 例の竜の革も任せてくれるっての?」


 そっちは<インベントリ>があるから劣化はしないし、あんま気にしていない。まぁ時間的余裕があればついでに依頼するのも吝かではない。

 俺が頼みたいのは装備品だ。
 具体的には、全員の靴、ベルト、鞘などなど。
 優秀な革職人と聞いてから、そこら辺をお願い出来ないかと思案していた。


 まず靴だが、侍女服や侍従服、俺の喪服も魔物素材ではあるが靴はさすがに普通の革靴なのだ。侍女たちのは普通の侍女用の靴だし、俺の革靴は前世のまま。<カスタム>はもりもりしているけど。
 これを竜革製に出来れば、より<カスタム>出来るだろうし安全性も増すだろう。

 ベルトは俺のベルトもそうなのだが、侍女たちもマジックバッグを腰に付けている為、ベルトは必須なのだ。
 腰に剣を下げる侍女も居るし、たすき掛けにして背負う侍女も居る。鍬を背負う侍女も若干一名居る。
 一応露出している部分ではあるから丈夫である事に越したことはない。というわけでベルトも頼みたい。

 鞘に関しては、侍女たちの近接武器が総じて魔剣か魔竜剣だという事が災いしている。
 ジイナが打った魔竜剣は鞘を別で造る必要があるし、現状は何とかジイナが造っているか、そこいらの武器屋でいい感じのものがあれば買うといった具合だ。

 魔剣にしても抜き身の状態で発見されるのが普通。イフリートに関しては鞘に入った状態でオークションに出品されていたから問題はなかったが、他の魔剣は当然のように鞘などない。

 という事で、天才革職人ならばちゃんとした鞘が出来るんじゃないかと期待しているのである。


「――こういうわけだがジイナ、どう思う?」

「大賛成です……けど、出来るもんなんですかね?」

「どうだ? 天才」

「まーかせなさいって! ……と言いたい所だけど竜革で造れってんでしょ? 私がどれだけ竜革を扱えるもんなのか試してからにしてもらえない? ちょっとでいいからさ、お試しサイズで」


 おお、意外と慎重だった。調子に乗ってるだけの天才ではないという事か。好印象である。
 竜革なんぞいくらでも在庫があるので好きに試すがいいさ。
 とりあえずドサッと渡して足りなかったら言ってくれと伝えておいた。


「いや……多すぎでしょ。私、これ持って歩くの怖いんだけど……宝の山ってレベルじゃないわよ」

「んじゃ余ってるマジックバッグ貸すわ」

「気前良すぎでしょ! ありがたく借りますけどね!」


 よしよし、これで専属契約の革職人をゲットだな。頼む仕事は山ほどある。
 契約料や賃金、品質のチェックはアネモネに任せてオーケーだな。
 なるべく早くに装備の方に取り掛かって欲しいものだ。


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