カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~

藤原キリオ

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after5:久しぶりのカオテッド

5-8:自称天才革職人現る!

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■ムゥチム・ガノンド 白亜族チェルキー 女
■30歳 革職人


 私はムゥチム! あの・・ムゥチム!
 そう! 魔物の革を扱わせたら魔導王国一と名高いあの・・ムゥチムよ!
 若き天才! 魔導王国の至宝! どれも自称だけどね! でも事実だから問題なし!


 そんな私は一つの街で燻っているような器じゃない。
 さらなる研鑽を求め、大きな街に行こうと思ったのだ。天才なのに努力を怠らない。さすが天才だ。

 王都ツェッペルンドでも良かったんだけど、どうせなら他国に行ってみたい。
 私のまだ見ぬ技術があるかもしれないし、まだ見ぬ素材があるかもしれない。
 そんな期待を胸に【混沌の街カオテッド】へと向かった。あそこなら獣帝国や鉱王国、樹界国にも行けるしね。


 着いてみてビックリ。想像以上にデッカイ街だった。
 四か国の集合体というか、ごちゃ混ぜというか、種族も文化も入り乱れている。まさに混沌の街。
 こんなに短期間で繁栄するほどここの迷宮の資源はスゴイのか、と気になって色々と足を運んだ。


 どこに行っても話に出るのは、中央区にあるという『黒屋敷 迷宮博物館』だ。

 なんじゃそれと探ってみると、どうやらカオテッド大迷宮の【領域主】のドロップ品などが、全て・・見る事が出来る施設らしい。
 カオテッドでは知らない人は居ないというほどの観光名所となっているそうだ。

 ドロップ品なら売れよ! 私に! そんで加工させてくれ!
 と思ったのだが……。


「いや、そこを運営してるのは【黒屋敷】ってSSSランククランでな」

「SSSランク?」

「世界で一組しか居ないランクだよ。Sランクの上って事だな」


 私もそんなに迷宮に明るいわけじゃないけどSSSランクなんて聞いた事ないし。
 まぁカオテッドに迷宮組合の本部があるって話だから、そういう特別な称号もアリなのかなーと思ったりもした。


「カオテッドじゃ英雄だぜ? あの人たちは強すぎるから迷宮をどんどん探索してどんどん新しい魔物とか見つけてるんだ」

「新しい魔物!?」

「おおよ、いわゆる新種だな。そういった探索が毎度の事だからわざわざドロップ品は売らなくてもすでに大金持ちなんだよ。まぁ博物館の収益だけでもとんでもなさそうだけどな。ハッハッハ」


 そんな話を聞けば行かざるを得ない。目指せ中央区!

 で、着いてみたら大行列さ。入るのだけでも一苦労。
 組合員だけじゃなくて明らかに普通の人とかも居るんだけどさ、ドロップ品が置いてあるだけなんでしょ? なんでこんな人気あるの?
 まさかみんな私みたいに新種の魔物目当てじゃあるまいし。

 と思っていたけど、入ってすぐにその謎は解明された。私が天才だからというわけじゃない。いや天才なのは本当だけども。

 いきなり天井から竜の手が生えてるし、展示室に入って見ればなんとまぁ綺麗な見せ方をしている。
 迷宮の説明から始まって各階層の説明やら何やら。
 せっかく私もお金を払って入ったものだから、じっくりくまなく見させてもらった。


 ドロップ品の展示の仕方にしても素晴らしい。
 一つ一つをまるで宝物のように豪華かつ厳重に見せている。
 なるほどこれは組合員だけでなく一般人も入るわけだ。
 見て回るだけでも楽しいし、自分たちの街にある迷宮の事なら何でも分かるといった感じだもの。カオテッド住民なら群がるのも分かる。


 が、だ。

 いくつものドロップ品を見ているうちに、私にはどんどんフラストレーションが溜まっていった。
 展示は素晴らしい。新種の魔物は心躍る。しかしどうしても納得がいかない。

 極めつけが最後の展示室にあった風竜と水竜。
 それを見た時、私は爆発した。そのまま受付に怒鳴り込んだ。


「お客様の声として経営者である【黒屋敷】の方々にお伝えいたしますが、あいにくと長期遠征中でしてしばらく時間が掛かると思います」

「早くしないとダメだっての! 私に任せなさいって! 貴女、館長さんなんでしょ!?」

「館長ではありますが全ての決定権は経営者にあります。私がやたら動かすわけには参りません」

「ああっ! もうっ!」


 そんな感じで埒が明かない。せっかくここに天才革職人が居るというのにその機会を無駄にすると言うのか。

 いや、見過ごす事は出来ない。天才革職人としてのプライドがそれを許さない。
 私は日を改めて何度も直談判に訪れた。……まぁ結果は同じだったけど。


 結局新年祭までカオテッドに籠るはめになり、新年一発目にまた行ってみた。
 すると、例のSSSランククランが帰還していたらしい。やっとか!
 そのクランの博物館担当の人が館長さんと会っているというので、受付で頼み込み、直接話をさせてもらえる事になった。


「貴女が例の……お話はセシルさんから多少伺っておりますわ」


 メイドだ。すっげー綺麗なメイド。背もビシッとしてまるで貴族みたい。メイドだけど。
 いやカオテッドに居る間に色々と聞いてたんだよ。【黒屋敷】がどんなクランなのかって。
 メイドばっかだとは知ってたけどさ、本当にメイドだもん。ビックリだよ。

 その導珠族アスラのメイドの隣には多眼族アフザスのメイド。こちらも美人。
 なんか根暗そうな感じで凝視されてるけど。

 やっぱSSSランクとかで超強くてお金持ちになると、こういう美人さんばっか囲うもんなんだろうなー。
 クラマスの人、最弱種族の基人族ヒュームって聞いたけど……ホントかね。


「わたくし、セイヤ様の侍女でウェルシア・ベルトチーネと申します。一応、魔導王国の伯爵位を戴いております」

「は、伯爵様!?」

「ええ。しかし貴族とは思わず、一人の組合員、一人の侍女として接して頂けると有り難いですわ」

「ふふふ、私はアネモネです。同じく侍女で普通の平民、です、ふふふ」


 貴族っぽいとは思ったけどマジで貴族だった!
 って言うか貴族をメイドにしていいもんなの!? 組合員なの!? もうよく分かんない!

 し、しかしせっかく【黒屋敷】の関係者に直接話せるんだ。臆していちゃあ天才が廃る。


「どうぞお掛けになって下さい。それで、展示物の保存状態について、でしたか?」

「そ、そう! そうなの! ウェアウルフロードとかヒュドラとか! あのまま展示してたら痛んじゃうわ!」


 地上の魔物と違って迷宮の魔物はドロップ品という形で素材が残る。
 ドロップ品の革や毛皮の場合、なめす必要はないんだけど、だからと言ってそのままの状態で飾っておくと劣化が進んでしまう。

 普通は素材を売りに出して加工する事で処理をする。加工して装備になっても経年劣化はするんだけど、ドロップ品のまま放置するよりよほど長持ちするわけだ。

 で、ここの展示物はドロップ品をそのまま飾ってあるわけ。
 そうなるとせっかくのお宝がドンドン劣化していってしまう。

 ウェアウルフロードとかでさえ倒せる組合員も限られているだろうに、五首ヒュドラとかとんでもない魔物のドロップ品が何の加工もされずに飾られてあるのだ。あとは徐々に劣化するのみ。

 そんなの天才革職人である私からすれば許される事ではない。
 だから私に加工させてくれと頼んでいるのだ。


「それだけじゃないわ! ドロップ品はまだ時間的猶予はあるけど、風竜とか水竜の革もあるはずでしょ!? あそこに展示してあったのは剥製らしいけど鱗や牙以外の素材もあるはずだわ! そんなのすぐに処理しないとダメになっちゃうじゃない!」


 竜を討伐して飾っているのは理解した。でも飾られていない革(皮)はまだ持っているはず。
 もし売られていたら話題になっているだろうしね。竜の素材なんて私だって見た事ないんだから。
 まさか革を捨てたなんて事ないだろうし、持っているに違いない。そして売るに売れないでいると。

 地上の魔物の革は、上手く解体しても肉の脂が革に残って腐蝕してしまう。だから早くなめす必要があるのだ。

 竜の素材がどんな感じで劣化するのかは知らないけど、なめさずに放置するなんてとんでもない。
 国宝級のお宝がただのゴミに変わってしまう。それは私にとって侮辱みたいなもんだ。


 と、そんな事を勢い任せに言ってみた。
 正直、貴族相手に言いすぎた感はある。でも誰かが言わなきゃいけない事だしね。天才の私でなくて誰が言うのかと。


「なるほど、お話はよく分かりました。アネモネさん、どうです?」

「ムゥチムさんの言う事は正しい、です」

「それは何より。ではムゥチムさん、わたくしからご主人様にお伝えしてみましょう。その結果、お仕事をお願いするかもしれません」


 おおっ! やっと話が通じた! やっぱ直接話してみるもんだ!


「ちょっと待ってウェルシアさん。ムゥチムさんの腕前が分かりません。それがはっきりしないとお仕事は任せられません、ふふふ」

「それはそうですね。ではご主人様の手持ち魔物……何かしらの革で実際に試してもらってからお話を通した方がよろしいでしょうか」

「それも含めてご主人様に相談するべきだと、思います」


 天才であるこの私を試すと! ほほう! いいでしょう! いいでしょうとも! 私の技術に恐れ慄くといいわ!
 よし! そうと決まればいつ呼ばれてもいいようにしっかり準備しないとね! 色よい返事を期待してるわよ!


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