死にたがりな魔王と研究職勇者

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魔王と勇者

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ーーー執事が部屋から離れていく音が聞こえた。先程は顔を動かすのがやっとだった。何が自分の身体に起きているのかは分からないが、明らかに魔素が足りていないのはわかる。
身体が魔素を吸収しようとしている感覚がわかるほどだが、どうやらこの部屋にはもう吸収できるものがないらしい。


身体に蓄積された魔力は滞りなく部下たちに流れていく感覚があるため、身体を動かすものが枯渇しているだけだということはわかる。
しかし、どうすることもできない。


頭痛もするし、眩暈もひどい。もう、いいかと思い、諦めに似た気持ちが湧いてくる。
再度意識が落ちそうになる。他者の魔力が近づいてくるのに気づいてはいるが、もう眠りたい。
そう思っていると、いつのまにか近くに誰かの気配がする。


「・・・おい。起きてるか?」


どうやら勇者が帰ってきていたらしい。
ベッドのすぐ横に立っているようで上方から話しかけられている。


返事をする気力もなく目を開けて霞む目で様子のみ窺う
目が開いたのが分かったのか、その場にしゃがみ、勇者は私と目を合わせた。



「起きられないのか?」

じっと見つめながら問いかける勇者は何を考えているのか分からない。 


「・・・放っておけ」

やっとのことでそれだけ返す。
もう放っておいてくれ。眠りたいんだ。


勇者は何を考えているのかこちらに手を伸ばしてきた。


しかし、触られるわけにはいかない。


無理をおして身体を動かそうとするが、難しく、顔を少しそらすことしかできない。

「や・・・めろ・・さわるな」


拒絶の言葉しか言えない自分が歯痒いが、もし、今触られたら


そんな魔王の様子を見て少し思案顔をしていた勇者だが、再度こちらに手を伸ばす。
もう避けられる力がなく、手が、額に触れてしまった。
そこから痛みにも似た感覚が身体に巻き起こる


「い゛っ・・・ゔあ・・」


身体が知らずビクッと波打つ様子に勇者は触れた手を離した。
そして自分の手を握ったり開いたりして

「なるほど・・・そういうことか」


と納得した様子を見せると再度こちらに手を伸ばしてくる。
何がなるほどなんだと思いながらその様子を見ることしかできなかったが、今度は身体に手が触れる前に止まった。
勇者との間には空間があるが、その空間からあたたかい魔力が徐々に伝わってくるのが分かった。


「な・・・んで・・」


「なんで・・か。俺にも分からない。だが倒れられるのは困る。サンプルだからなのだろうか?」


なぜ疑問系で話をするのかは分からないが、あたたかい温度と身体の疲れに警戒を保つことができずに目を閉じ、ルイードはそのまま眠りについてしまった。
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