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(13)それぞれの事情
しおりを挟む今日は親衛隊のみんなでお茶会だ。前に東金先輩が香のお菓子を食べてみたいと言っていたので、ダメ元で誘ってみたら快く承諾してくれた。
「ふふふ。本当に藤岡くんの言った通りとても美味しいですね。」
「ですよね!俺は食べすぎてちょっと太ってしまいました笑」
「もー!葵先輩もこーくんもいいすぎだよー!」
そう言いながらも香は満更でもないようだ。笑みが溢れてる。
甘いお菓子を食べながら親衛隊のみんなで話をする。平和だ。
「そういえば友達が急に退学しちゃったんだよね……。」
最近あったことを話していると、メンバーの1人がふいに話しだした。
「へぇー、そうなの?なんで?」
(もしかして行方不明事件に関係あるかもしれない。)
「理由はわからないんだ。その子、成績も良かったし、人間関係でトラブルがあったとも聞いてなくて……。」
「退学後に連絡はとってみたのか?」
「いや連絡返してくれないんだ。もしかして僕がなにかしちゃったのかな……。」
「そんなことないと思うよ!だって……。……。」
なにかその後に会話が続いているようだが、俺の頭には入ってこなかった。一気に行方不明事件に近づいた感じがするからだ。
こそこそ
「こーくん。これって……。」
「あぁ。そうだと思う。」
香とこそこそ話す。
「そういえば私が親衛隊にいた頃からそういった退学の方は、何人かいらっしゃいましたよ。」
その東金先輩の言葉に勢いよく視線を向ける。
「へぇーそういう方ってよくいらっしゃるんですかね?」
「悩みがあるなら教えてほしかったなー。」
みんながそれぞれ言い合う。
「えぇとても残念だと思います。皆さんもお気をつけくださいね。」
東金先輩はどこか悲しそうに笑った。
「「はーい!ちゃんと相談します!」」
(やはら東金先輩は何か知っているのかもしれない。)
・
・
・
今日はもう予定がないため、秘密基地にでも行こうと思い、俺はガラス庭園に向かい歩いていた。
「あれ……もしかしてこれ別の庭園か?」
歩いていたら、目の高さほどの苗木に遮られた場所を発見した。
(確か香によると庭園は自由に出入りできるらしいな。ガラス庭園は室内ということもあって、なかなか人は入ってこないらしいけど。)
庭園に入ると色とりどりの花が咲き誇っている。特に目立つのは薔薇だ。思わず見入ってしまう。
しばらく庭園を散策していると人影がある。それも2人だ。
(あれは……雫と……誰だ……?)
なんだかあまり良くない雰囲気なのは伝わってくる。
(言い争って……?あっ!)
ドンッ!
俺は思わず飛び出す。
「何してるんだ!」
「あっ……藤岡さま……僕は……」
ボソリと呟いて、そのまま見知らぬ生徒は走り去った。
「えっと……大丈夫?雪城くん。」
「え?あっ、あぁ大丈夫。ありがとう。」
俺はさっきの生徒に押されて尻餅をついてしまった雫に手を貸す。
そしてメッセージで混乱してる雫にメッセージを送る。
『この学園の至るところに監視カメラがあるから一応初対面みたいな素振りを見せよう。声は聞こえてないはずだけど行動でわかっちゃいそうだからな』
『了解!』
「それで、あの生徒は雪城くんの知り合い?」
「いや初対面なんだけど……副会長の親衛隊メンバーみたいで……。」
「なるほどな。副会長の執着っぷりはすごいからな……。」
「ただの友達だって言ったんだけど理解は示してもらえなかったみたい。」
「今回は呼び出されたの?」
「うん。匿名でここに来てくれって。」
「そっか...。」
(呼び出しのたびに俺がついていったら立場的におかしいからな……。)
「でもきっと根気よく話せば理解してくれると思う!」
「……そうかもしれないけど、今後は誰か一緒に連れていったほうがいいよ。」
(今、俺が割っては入らなければもっとひどいことをされていたかもしれない。可愛いらしい見た目をしていても相手は男なんだし。)
「わかった。藤岡くん。助けてくれてありがとう。僕、寮に戻るね!」
そう言って雫は庭園から出ていった。
(まさかこんなに早く親衛隊が動くとは思わなかった。誰かに護衛でも……。野口か?流星がやるとより敵を増やしそうだしな。)
俺も考え事をしながら庭園を出た。
・
・
・
庭園を出てすぐの月桂樹の前に東金先輩が立っている。日の入りの時間というのもあって、世界がオレンジ色の中立っている先輩はまるでこの世のものとは思えない美しさだった。
ガサッパキッ
その先輩に見惚れていたのは俺だけではなかったようで、俺と反対側にある木の下で枝を踏んでしまって焦ってる人影がある。……あれは副会長じゃないか?
「あっ!葵……!」
「おや?藤岡くんじゃないですか?先ほどぶりですね。」
「えっ!?はい、さっきぶりです……?」
(今、明らかに副会長が東金先輩に声をかけようとしてたのに、俺に話しかけてきた!?)
「どうしてここに?」
「えっとたまたま綺麗だなと思って庭園を見てました……。」
「葵!」
副会長が東金先輩の腕をつかむ。
「あぁそこの薔薇庭園、きれいですよね。」
にこやかに俺と会話しながら、副会長に捕まれた腕を振り払った。
「東金先輩……副会長が話したそうですよ?」
「?」
東金先輩は無言で首をかしげる。
「葵!」
「そろそろ寮に戻らないと冷えそうですね。ではまた藤岡くん。」
東金先輩は副会長を完全に無視して寮に帰っていった。そしてこの場に残されたのは、俺と副会長の2人だけ。
(気まずすぎる。というかなんで副会長に対してあんなに冷たいんだ。)
「あの……大丈夫ですか?」
「……なにがですか?」
いつもの笑顔ではなく、涙目で俺を睨みつけてくる。いや俺に当たられても……。
(というか副会長の好きな人って明らかに東金先輩だよな。2人が一緒にいる場面を見たことなかったから気づかなかった。)
「今日見たことは他言無用でお願いします。」
副会長も足早に寮へ戻っていった。
「なんか今のやりとりだけでだいぶカロリーがあったな……。早く俺も帰ろ。」
・
・
・
- 寮
……プルル……プルル
「はーい!もしもしー!」
「香?急に電話して悪いな。」
「大丈夫だよー!どうかした?」
「この間、言った話するの明日の放課後はどうだ?ちょうどお茶会もないし。」
「おっけー!そーくんにも連絡しとくね!」
「助かる!それと全然関係ないんだけど、東金先輩って去年会長の親衛隊副隊長してたんだよね?」
「うん!僕と同じ前会長の親衛隊してたよー!」
「その……東金先輩は会長のことが好きな感じだったのか?」
「いや……なんか、腐れ縁ですよ。って言ってた気がするー。好きではあると思うけど、恋愛の波動は感じなかったよ!」
「そうなのか……。ありがとう!」
(前会長のことが好きだから副会長の想いに答えられないのかと思ったが……。どうしてあんなに拒絶を?)
「ん?なに、こーくん葵先輩のことが?」
「違うよ!知り合いに……東金先輩が好きって人がいて。」
「なるほどねー!でも結構難しいと思うなー!」
「どうして?」
「葵先輩はよく告白されるんだけど、恋愛する気はないって公言してるから。どんなにイケメンでも可愛くても告白は断られてるみたいだよ!」
「へぇー。」
「でも僕は副会長と葵先輩はお似合いだと思うんだけどなー。」
「えっ!?」
(なんで知ってるんだ!?)
「前に葵先輩がじっとどこかを見つめてて、視線たどったら副会長だったんだよねー!なんかそのとき恋愛の波動を感じたの!」
「そうなのか……。香がそう感じたんならほぼ当たりじゃないか?」
(じゃあ両想いじゃないか。)
「だよねー!だから副会長が転校生くんから葵先輩に目を向ければいいのになーって思ってる!」
「そうだな。」
(東金先輩は何か想いに答えられない事情がある……?)
「あっ!悪いもうこんな時間か。香遅くまで付き合わせてごめん。」
「大丈夫ー!でもちょっと眠いから切るね!おやすみー!」
「あぁおやすみ。」
……プツ
まさか東金先輩の方も副会長のことが気になってるとは思わなかった。これも学園の何かの影響かもしれないな。
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