親衛隊隊長だけど彼女がいます!

kira

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(33)作戦開始

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 水曜日。作戦決行の日がやってきた。
 俺たちは今、山林の前に立っている。ここは学園のほとんど使われていない門のすぐそばだ。正門や裏門付近には建物がたくさんあり、利用するものも多いのだが、この門は今回のことがなければずっと知らなかっただろう。東雲の指示でグループ1はここで待機している。

 この光の上学園もなかなか山奥にあるのだが、雫がいる別荘はより山奥にあるらしい。そのため俺たちはこの鬱蒼とした山に入っていく必要がある。だがここにいるのはグループ1だけだ。グループ2は立夏先輩がいるため、正面から堂々と行けるのではとなり、大通りの方から別荘へ向かっている。一応立夏先輩にも別荘の案内が来ていたようなので、急に向かうことになっても疑われることは少ないだろう。

「あー、聞こえるか?」
「お!聞こえる!」
「そうか無事に通信は届いてるみたいだな。」

 耳につけた通信機から東雲の声がする。彩ねぇは無線には入らずに、東雲との個人連絡でサポートするらしい。
 それにしてもこんなものを作ってしまうなんて本当に尊敬する。

「じゃあまずこの作戦の目標は……雪城の奪還でいいな。」
「それでいいと思う!でもできることなら行方不明事件の真相にたどり着くことかな!」
「うん。僕たちグループ2より、グループ1の方が危険だと思うから危ないと思ったら撤退するんだよ。」
「はい!立夏先輩たちも気をつけてくださいね!」
「よし目標を明確にしたところで、最初の指示を出す。」

 東雲の指示によって、それぞれのグループは動き出した。
 俺たちの方は山道ということもあり、道中に監視カメラはないようだ。そのため迷わないように最短ルートが東雲から送られてきた。その地図を見ながら山道を進む。





 さすがにこんな山道を通る人はいないのか、人が歩いた形跡はない。

「やばいな……これガチ登山じゃん。」
「そうだね。なんか昔の道らしきものはあるけど……」
「これ……歩いて平気なやつ?」
「そーくんを信じよう!大丈夫!……たぶん。」
「織部!俺は東雲のことをよく知らないんだから怖いこと言うなって!」
「……あっ!野口危ない!」
「え?……うわぁっ!本当だ!」
「ほらー!そーくんのこと疑うからー!」
「……そういうことなの?」

 あまりにも崖ギリギリのところを歩いてると全員が不安になってきた。そのため野口が不安を口にしたところ、足を踏み外しそうになった。そのまま落ちていたら奈落の底に一直線だっただろう。
(もしかして東雲もエスパー的な?香がそうだしな……類は友を呼ぶんだろ。)




 
「そろそろグループ1の方、別荘に近くなるぞ。」
「そうなのか?確かに地図上だと近いけどまだ見えない。」
「あっ!こーくん、野口!あそこ!」
「ほんとだ!」
「見つかったみたいだな。そこから別荘の裏口へ行ってくれ。監視カメラあるけど、こっちでなんとかしとくから大丈夫。」
「さっすがそーくん!」

(さすがに東雲だけで指示出しとハッキングはキツいだろうから彩ねぇがハッキングしてるのかな?)

「じゃあここからは静かに行こ。」
「そうだな。」

 3人で足音を立てないようにして裏口へと近づく。幸い見張りはいないようだ。
 目線で合図して、俺は裏口のドアノブに手をかけた。……鍵がかかっている。ここは香の出番だろう。香に目線を送る。香は理解したようで、すばやくピッキングにとりかかった。

カチャカチャ……ガチャ
「「「!」」」

 開いた音がして、俺たちは中へと侵入した。





 ちょうど侵入したときに通信でグループ2と東雲の会話が聞こえ
てきた。

「なんでかわからないけど、僕と安武くんが別荘に向かうのがバレてる。」
「本当ですか……!なにか接触ありましたか?」
「うん。少し歩いたところで迎えの車が来て、今車に乗ってるとこ。」
「もしかしたら誰か学園から俺たちが出たとこを見てた人がいたのかもですね。」
「それもありえるね。グループ1の方はバレてるかわからないけど一応警戒しといてね。」
 ピコピコ

 潜入中のため、声を出すことはできないが無線を連打することで了承の合図した。





「確か……送られてきた位置情報はここらへん?」
「うん。どこかの部屋にいるのかも。」
「適当に部屋開けてみるか?」
「それしかないかもな。」

 裏口から中へ入るといくつも部屋が並んだ廊下に出た。雫のスマホの位置情報は大まかなものしか表していないため、地道に1つずつみていくしかない。

「誰も見かけてはいないけど、人の気配がたくさんするから気をつけようね。」
「そうだな。」
「なぁ手分けして探さないか?たぶんその方が効率的だし。」
「了解。じゃあ俺裏口に近い方の部屋みてくる。」
「俺もそっち一緒にみるわ。その向かいの部屋からみてくよ。」
「おっけー!じゃあ僕は裏口から遠いほうからみてくる!」

 それぞれが別々の部屋の確認に向かった。





 俺は裏口の近くへと戻って、一番近くの部屋に入る。
 開けると簡単なゲストルームのような作りであるとわかる。同じような扉が並んでいたことから考えるに、多くの人を泊める設計であるのではないかと思う。ただ1つ気になるのは趣味の悪い絵画や置物が数点置いてある点だ。これらのせいで成金趣味の部屋にみえる。
(学園にもよくわからない置物とか多かったし、趣味なのか……?それとも学園と同じように隠し監視カメラのためのカモフラージュ?)

 その部屋を隅々まで見たが特に変なところはなかった。(装飾以外)
 そのため2番目の部屋に入る。
 ここも同様にゲストルームのような作りをしている。置いてある絵画や置物は異なるデザインのものだった。先ほどと同様に不審な点はないと確認したところで、香からメッセージがきた。

『しーちゃんのスマホ発見!でも本人は見当たらない』

 メッセージを確認し、廊下へと出て、香がいるであろう部屋へと向かう。そのときちょうど野口も部屋の確認が終わったらしく、廊下へ出てきた。

「藤岡!なんか見つかった?」
「いや俺のとこは別に何も。」
「俺も。なんか似たような部屋が続いてるから特に変なところ無さそうなんだよな。」
「だよな。だからとりあえず香の方に確認しに行こうかなって。」
「いいな。俺も行くわ。」

(疑ってるわけじゃないけど……俺たちだけで共有してる情報はまだ話さない方がいいかもしれない。)

 俺と野口は香が調査しているであろう部屋へと向かった。
 部屋へと到着して、そっと中へ入る。香はこちらに背を向けてなにかを調査しているみたいだ。香の背中ごしに覗き見ると、女性の絵画のようだ。……おもむろに香がその女性の瞳に触れる。特に何も起こらなかった。

「香?なにしてるんだ?」
「あっ!2人とも来たんだね。いやこの絵画、瞳の部分になにか仕掛けがあるんだけど……わからなくて。」
「仕掛け?」
「うん。なにか回数が決まってるのか、押し方が決まってるかわからないんだけど……」
「……それ指紋認証だよ。」
「指紋認証?」
「そう登録された人の指紋でしか開かない。」
「……なんで野口はそれを知ってるの?」
「……君たちの敵だからかな。本当は友達になりかったけどね……」
「なっ!」

 バン!バチッ!ドサッ……
「香!」

 野口がテーザー銃を香へと向けて撃った。香は意識を失い、そのまま倒れこんだ。そして野口は俺にも銃を向けてくる。

「まさかこんなことになるなんてね。」
「野口!なんのために!?」
「……君たちが余計な動きをしなければ友達でいられたんだよ。悪いが諦めてくれ。」
「諦めるなんて出来ない。……俺もテーザー銃を持ってるんだぞ?」
「……藤岡。震えてるぞ笑」
「撃てるさ。こんな近さならな。きっと相討ちだぜ?」
「……そうかな?」

 互いにテーザー銃を向け構えていた。だが俺の後ろから別の人物が来ていることに気づいていなかった。

 ガンッ!ドサッ……
「悪いな。藤岡。友達になりたかったよ。」

 そう言った野口の言葉を最後に、俺の意識は沈んでいった。
(あっ!……東雲たちに救助の連絡してない…………)



 ・・・・・・暗転

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