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伯爵家
第5話 訓練開始
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「では、ここからは実践的な訓練だ。とりあえず立ってくれ」
シンシアは日光で輝く金髪をなびかせながら機敏に立つ。やる気十分といった感じだろうか。これからの訓練はそれなりにきついので熱意があるのは喜ばしいことだ。
「魔力操作を覚えるのに重要なことは魔力をより繊細に感じ取ることだ。自分がどれくらいの量魔力を持っているかを正確に把握し、魔力を流動させ魔導回路に魔力を流す感覚を養わなければならない。まず、魔力の流動をする訓練から行う。血液が体中を巡るように魔力を動かしてみろ」
シンシアは少し困惑したような顔をしていたが、すぐに訓練を開始した。シンシアはできないと思っているかもしれないが魔導士はこれを全くできないことはあり得ないのだ。この訓練で最も難しいのは魔力を感じとることだが生まれつき魔法が使える魔導士は元から魔力を感じ取れる。基本このハードルを越えれば魔導士ではない人間でも魔力を動かすのに二日とかからずできるようになる。
しばらく、様子を眺めていると
「くっ……」
少女から苦しそうな吐息が漏れる。まだ、始まって十分ほどしか経っていないが額からは玉のような汗が流れ落ちている。表情は険しく、まるで何十キロもの距離を走った後かのようだ。確かにこの訓練自体の難易度は大したことはないが肉体的な負荷は別だ、これはやれば誰にでもできるが極度な肉体的負荷がかかるため途中で投げ出す人間もいる。つまり、これは力を得るための最初の壁なのだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
少女は荒い呼吸と共に膝を折る。このとき、およそ一時間が経過していた。来ているシャツはぐっしょりと濡れており、湿った髪は肌に張り付いている。だが、少女はすぐに立ち上がり訓練を続けようとする。とうに肉体は限界を迎えているだろう。完全に気力だけで立っている状態だ。
「今日はもう終わりだ。最初から無理をしすぎるな」
俺は今にも崩れ落ちそうなシンシアを支えながら言う。
「まだ……やれます」
シンシアは俺の顔を見ながら絞り出すような口調でぽつりぽつりと言葉をこぼす。その瞳には苦痛の色はなく、希望の火が灯っていた。貪欲な姿勢には好感が持てるが今無理をされると予定が狂う。このまま続ければ数日は動けなくなるからだ。
「ここで無理をする必要はない。寧ろここで無理をして明日以降の訓練に支障が出るほうが困る。それに魔力操作は無理しなくてももう少しでできるようになる」
「……本当ですか?」
咎めるような視線が突き刺さる。慰めで言っていると勘違いしているのだろう。状況的にしかたないと言えるがこのままにするのはまずいなと俺は考える。隠れてやられてたら、たまらないからだ。
「ああ、本当だ。何か勘違いをしているようだが俺は下手な慰めなんかしない。実際魔力操作のほとんどは完了している。先ほどの姿を見る限り魔力を一定速度で流すことはできていた。後は流す量が調節できれば魔法が使える。もう動かすことはできるのだから少ない量を動かすことはすぐにできるようになる。具体的にはあと二日以内にはできるようになる」
「分かりました。今日は終わりにします」
先ほどとは打って変わりその表情からは安堵が読み解れる。忙しい娘だ。
「とりあえず、着替えて来たほうがいい。そのままでは風を引いてしまう」
シンシアは自分の服装を見る。濡れて張り付いた衣服が体のラインを強調している。少女はほんのり頬を赤らめながら着替えてきますと言うと小走りで屋敷のほうへと消えていく。
「天才だな」
ぽつりと感想が漏れた。あの子には伝えなかったが魔力量、魔力操作ともに紛れもなく一流のそれだ。わずか一時間でほぼ魔力操作をマスターしてしまった。本来ならあの苦しみを二日ほど味わないと習得できないのだ。なかなか面白い人材を見つけたものだと隠れた口元が三日月に歪む。
「指導は終わりましたか?」
不意に声がかかった。そのしわがれた声からだれか予測はつく。クロムといったかあの執事風な老人だろう。俺は振り向きざまに答える。
「ええ、今日はもう終わりにしました。初日から厳しくしすぎてもいけませんので」
「左様でございますか、時間がおありなら部屋のほうを案内したいのですがよろしいですか?」
「構いません。よろしくお願いします」
「では、案内いたします」
老人は屋敷の中に歩き出す。その背に俺も続く。老人は通ってきた通路を戻り玄関前の階段を上る。そこから左に曲がり突き当りまで行くと右の部屋の扉を開ける。
「この部屋をお使いください。夕食の時にお呼びするのでそれまでお寛ぎください」
言い終わると老人は通路を戻っていく。俺はベッドに身を投げ今後どうするべきか考えを巡らせた。
シンシアは日光で輝く金髪をなびかせながら機敏に立つ。やる気十分といった感じだろうか。これからの訓練はそれなりにきついので熱意があるのは喜ばしいことだ。
「魔力操作を覚えるのに重要なことは魔力をより繊細に感じ取ることだ。自分がどれくらいの量魔力を持っているかを正確に把握し、魔力を流動させ魔導回路に魔力を流す感覚を養わなければならない。まず、魔力の流動をする訓練から行う。血液が体中を巡るように魔力を動かしてみろ」
シンシアは少し困惑したような顔をしていたが、すぐに訓練を開始した。シンシアはできないと思っているかもしれないが魔導士はこれを全くできないことはあり得ないのだ。この訓練で最も難しいのは魔力を感じとることだが生まれつき魔法が使える魔導士は元から魔力を感じ取れる。基本このハードルを越えれば魔導士ではない人間でも魔力を動かすのに二日とかからずできるようになる。
しばらく、様子を眺めていると
「くっ……」
少女から苦しそうな吐息が漏れる。まだ、始まって十分ほどしか経っていないが額からは玉のような汗が流れ落ちている。表情は険しく、まるで何十キロもの距離を走った後かのようだ。確かにこの訓練自体の難易度は大したことはないが肉体的な負荷は別だ、これはやれば誰にでもできるが極度な肉体的負荷がかかるため途中で投げ出す人間もいる。つまり、これは力を得るための最初の壁なのだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
少女は荒い呼吸と共に膝を折る。このとき、およそ一時間が経過していた。来ているシャツはぐっしょりと濡れており、湿った髪は肌に張り付いている。だが、少女はすぐに立ち上がり訓練を続けようとする。とうに肉体は限界を迎えているだろう。完全に気力だけで立っている状態だ。
「今日はもう終わりだ。最初から無理をしすぎるな」
俺は今にも崩れ落ちそうなシンシアを支えながら言う。
「まだ……やれます」
シンシアは俺の顔を見ながら絞り出すような口調でぽつりぽつりと言葉をこぼす。その瞳には苦痛の色はなく、希望の火が灯っていた。貪欲な姿勢には好感が持てるが今無理をされると予定が狂う。このまま続ければ数日は動けなくなるからだ。
「ここで無理をする必要はない。寧ろここで無理をして明日以降の訓練に支障が出るほうが困る。それに魔力操作は無理しなくてももう少しでできるようになる」
「……本当ですか?」
咎めるような視線が突き刺さる。慰めで言っていると勘違いしているのだろう。状況的にしかたないと言えるがこのままにするのはまずいなと俺は考える。隠れてやられてたら、たまらないからだ。
「ああ、本当だ。何か勘違いをしているようだが俺は下手な慰めなんかしない。実際魔力操作のほとんどは完了している。先ほどの姿を見る限り魔力を一定速度で流すことはできていた。後は流す量が調節できれば魔法が使える。もう動かすことはできるのだから少ない量を動かすことはすぐにできるようになる。具体的にはあと二日以内にはできるようになる」
「分かりました。今日は終わりにします」
先ほどとは打って変わりその表情からは安堵が読み解れる。忙しい娘だ。
「とりあえず、着替えて来たほうがいい。そのままでは風を引いてしまう」
シンシアは自分の服装を見る。濡れて張り付いた衣服が体のラインを強調している。少女はほんのり頬を赤らめながら着替えてきますと言うと小走りで屋敷のほうへと消えていく。
「天才だな」
ぽつりと感想が漏れた。あの子には伝えなかったが魔力量、魔力操作ともに紛れもなく一流のそれだ。わずか一時間でほぼ魔力操作をマスターしてしまった。本来ならあの苦しみを二日ほど味わないと習得できないのだ。なかなか面白い人材を見つけたものだと隠れた口元が三日月に歪む。
「指導は終わりましたか?」
不意に声がかかった。そのしわがれた声からだれか予測はつく。クロムといったかあの執事風な老人だろう。俺は振り向きざまに答える。
「ええ、今日はもう終わりにしました。初日から厳しくしすぎてもいけませんので」
「左様でございますか、時間がおありなら部屋のほうを案内したいのですがよろしいですか?」
「構いません。よろしくお願いします」
「では、案内いたします」
老人は屋敷の中に歩き出す。その背に俺も続く。老人は通ってきた通路を戻り玄関前の階段を上る。そこから左に曲がり突き当りまで行くと右の部屋の扉を開ける。
「この部屋をお使いください。夕食の時にお呼びするのでそれまでお寛ぎください」
言い終わると老人は通路を戻っていく。俺はベッドに身を投げ今後どうするべきか考えを巡らせた。
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