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帝国動乱
第6話 皇子と皇女
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扉が開きエンファが二人の人間を伴って入ってくる。そのうちの一人は金糸の意匠が散りばめられた如何にも高価そうな服を着ており、腰にはレイピアを下げていた。もう一人は淡い山吹色のドレスを身に纏い両手はドレスを同じ色の手袋のようなもので覆われていた。どちらも眩い金髪を携えており、均整のとれた顔立ちをしている。男の方が一歩前に進み、胸に手を当て口を開く。
「初めまして。私はロートル帝国第二皇子、トラン・オブ・ロートルです。カームベルの使者殿、どうぞお見知り置きを」
すると呼応するようにもう一人の女性が皇子に並び、ドレスの裾を軽くつまみながら口を開く。
「初めまして。私はロートル帝国第一皇女、コルネット・オブ・ロートルです。どうぞよろしくお願いします」
俺はそれを聞くと迅速に立ち上がり畏まったように頭を下げる。
「私はカームベルのアインと申します。こちらこそロートル帝国の次期皇帝と第一皇女にお会いできて光栄です」
そう言うと俺は怪しい笑みを浮かべ、トランの方を一瞥した。すると釣られるようにトランも朗らかな笑みを浮かべた。
「流石はカームベル。失敗することは考えてもいないということですか、頼もしいですね」
トランはそう言うと右手を差し出してくる。俺はそれを近づいて握る。意外にも皇族であるというのに手のひらはごつごつとしており、岩のように硬い。常用的に剣を握ってい証拠だ。戦闘は門外漢の優男かと思ったがそうではないのだろう。これは好感が持てそうだなと思っていると一瞬の静寂を破るように声がかかる。
「挨拶は終わりましたか? 終わったなら依頼の話をしましょう。殿下方もこちらにお座りください」
それを聞くとトランとコルネットはもう一つの空いているソファーに腰を下ろす。そのタイミングを見計らっていたようにエンファが紅茶の入ったカップをそれぞれ前に置いていく。
「全員そろったことだし本題に入るわね。トラン様方からの依頼は第一皇子フリューゲル・オブ・ロートルの暗殺。当初の計画では私たち黒蟻が請け負うはずでしたが相手側に<天壊>が付いたことによりカームベルに委託することとなりました。ここまでは全員が共通認識してますね?」
ネロはそう言って全員を一瞥する。それぞれが頭をこくりと揺らし同意を示す。
「分かりました。では、続けます。普通なら俺さんに暗殺は完全に任せ、皇子様方をここで守るという作戦にするつもりでしたが………」
「ネロさん、ここからは私が話そう。一か月後、皇族と主要貴族を集めた次の皇帝を決める場が設けられる。次の皇帝になるためにはこの会に絶対に出なければならない。つまり、ここで籠城することはできないんだ」
なるほど、これは上手い手だと俺はまだ見ぬ第一皇子を称賛した。この会議が開催されれば、帝国で有力貴族から支持を受けている第一皇子が皇帝になるのは自明であろう。第二皇子達がこの状況を打破するためにはその場をぶち壊すしかない。しかもただ壊すだけでなく第二皇子達が帝都に赴き、正々堂々正攻法で第一皇子に勝つか、自分たちの犯行だとばれないように相手を殺すしかない。
だが、もしこの状況で第一皇子が殺されれば第二皇子達の犯行だと宣言するようなものであり、正当に会談で選ばれることもほぼ不可能である。さらに相手はこちらを殺害してもいくらでも罪をでっちあげ、それを免罪符にできる。つまり、相手は会議の場を守れば勝ちであり、帝都に近づいてくるであろう第二皇子達を万全の準備で迎え撃てばよいのだ。通常なら完全に詰みである。
「それはわかった。それでどうするつもりなんだ?」
俺は顔をネロの方に向ける。
「そうね……。この二人を会議に参加させたうえで第一皇子を始末するしかないでしょうね。これもかなり苦肉の策だけどね。私ではこれくらいしか考えられないわ」
「まあ、それが妥当だろうな。だが……」
「ええ、相手も分かっているでしょうね。確実に防げるだけの戦力を集め、ついでに殺そうと考えているかもしれませんね」
「兄上の性格上そうなる可能性が高いな」
場を重い沈黙が支配する。それも仕方ないだろう。実際カームベルがいなければ終わっていると言っても過言ではない。するとその沈黙を裂くように一人が声を上げる。
「アイン様には何かアイデアはないのですか?」
俺は第一皇女という意外な人物からの問いに一瞬体を硬直させたがすぐに答える。
「あるにはありますよ。成功率が高いとは言えませんが」
「構いません。私たちには案さえ思いつきませんから」
コルネットは物憂げに目を伏せる。流石皇族だ、動作一つをとっても気品を感じる。だが、妙な違和感も同時に感じる。
「分かりました。とりあえずお話しします。使えるかどうかはあなた方で判断してください」
そう言うと俺は作戦を話し始める。淡々と話し続け終わるころには十分程度経っていた。俺は周りの反応を見るため各々の顔を見渡す。皆が皆茫然とした顔をしていたが第一皇女はすぐに我に返り返答する。
「流石はカームベルですね。そんなことができるとは」
「そうですね。私も驚きました。先ほど成功率は高くないと言っていましたが完璧ですよ、この作戦。改めてこれから一月の間宜しくお願いします」
トランは頭を深々と下げる。その皇族らしからぬ行動に俺は好感を持った。
「ええ、私たちカームベルも全力でこの依頼を成功させて見せますよ」
そう言うと俺は頭の中で作戦の算段を整え始めた。
「初めまして。私はロートル帝国第二皇子、トラン・オブ・ロートルです。カームベルの使者殿、どうぞお見知り置きを」
すると呼応するようにもう一人の女性が皇子に並び、ドレスの裾を軽くつまみながら口を開く。
「初めまして。私はロートル帝国第一皇女、コルネット・オブ・ロートルです。どうぞよろしくお願いします」
俺はそれを聞くと迅速に立ち上がり畏まったように頭を下げる。
「私はカームベルのアインと申します。こちらこそロートル帝国の次期皇帝と第一皇女にお会いできて光栄です」
そう言うと俺は怪しい笑みを浮かべ、トランの方を一瞥した。すると釣られるようにトランも朗らかな笑みを浮かべた。
「流石はカームベル。失敗することは考えてもいないということですか、頼もしいですね」
トランはそう言うと右手を差し出してくる。俺はそれを近づいて握る。意外にも皇族であるというのに手のひらはごつごつとしており、岩のように硬い。常用的に剣を握ってい証拠だ。戦闘は門外漢の優男かと思ったがそうではないのだろう。これは好感が持てそうだなと思っていると一瞬の静寂を破るように声がかかる。
「挨拶は終わりましたか? 終わったなら依頼の話をしましょう。殿下方もこちらにお座りください」
それを聞くとトランとコルネットはもう一つの空いているソファーに腰を下ろす。そのタイミングを見計らっていたようにエンファが紅茶の入ったカップをそれぞれ前に置いていく。
「全員そろったことだし本題に入るわね。トラン様方からの依頼は第一皇子フリューゲル・オブ・ロートルの暗殺。当初の計画では私たち黒蟻が請け負うはずでしたが相手側に<天壊>が付いたことによりカームベルに委託することとなりました。ここまでは全員が共通認識してますね?」
ネロはそう言って全員を一瞥する。それぞれが頭をこくりと揺らし同意を示す。
「分かりました。では、続けます。普通なら俺さんに暗殺は完全に任せ、皇子様方をここで守るという作戦にするつもりでしたが………」
「ネロさん、ここからは私が話そう。一か月後、皇族と主要貴族を集めた次の皇帝を決める場が設けられる。次の皇帝になるためにはこの会に絶対に出なければならない。つまり、ここで籠城することはできないんだ」
なるほど、これは上手い手だと俺はまだ見ぬ第一皇子を称賛した。この会議が開催されれば、帝国で有力貴族から支持を受けている第一皇子が皇帝になるのは自明であろう。第二皇子達がこの状況を打破するためにはその場をぶち壊すしかない。しかもただ壊すだけでなく第二皇子達が帝都に赴き、正々堂々正攻法で第一皇子に勝つか、自分たちの犯行だとばれないように相手を殺すしかない。
だが、もしこの状況で第一皇子が殺されれば第二皇子達の犯行だと宣言するようなものであり、正当に会談で選ばれることもほぼ不可能である。さらに相手はこちらを殺害してもいくらでも罪をでっちあげ、それを免罪符にできる。つまり、相手は会議の場を守れば勝ちであり、帝都に近づいてくるであろう第二皇子達を万全の準備で迎え撃てばよいのだ。通常なら完全に詰みである。
「それはわかった。それでどうするつもりなんだ?」
俺は顔をネロの方に向ける。
「そうね……。この二人を会議に参加させたうえで第一皇子を始末するしかないでしょうね。これもかなり苦肉の策だけどね。私ではこれくらいしか考えられないわ」
「まあ、それが妥当だろうな。だが……」
「ええ、相手も分かっているでしょうね。確実に防げるだけの戦力を集め、ついでに殺そうと考えているかもしれませんね」
「兄上の性格上そうなる可能性が高いな」
場を重い沈黙が支配する。それも仕方ないだろう。実際カームベルがいなければ終わっていると言っても過言ではない。するとその沈黙を裂くように一人が声を上げる。
「アイン様には何かアイデアはないのですか?」
俺は第一皇女という意外な人物からの問いに一瞬体を硬直させたがすぐに答える。
「あるにはありますよ。成功率が高いとは言えませんが」
「構いません。私たちには案さえ思いつきませんから」
コルネットは物憂げに目を伏せる。流石皇族だ、動作一つをとっても気品を感じる。だが、妙な違和感も同時に感じる。
「分かりました。とりあえずお話しします。使えるかどうかはあなた方で判断してください」
そう言うと俺は作戦を話し始める。淡々と話し続け終わるころには十分程度経っていた。俺は周りの反応を見るため各々の顔を見渡す。皆が皆茫然とした顔をしていたが第一皇女はすぐに我に返り返答する。
「流石はカームベルですね。そんなことができるとは」
「そうですね。私も驚きました。先ほど成功率は高くないと言っていましたが完璧ですよ、この作戦。改めてこれから一月の間宜しくお願いします」
トランは頭を深々と下げる。その皇族らしからぬ行動に俺は好感を持った。
「ええ、私たちカームベルも全力でこの依頼を成功させて見せますよ」
そう言うと俺は頭の中で作戦の算段を整え始めた。
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