魔導と迷宮 ~最強の冒険者は少女を育てるようです~

天野静流

文字の大きさ
37 / 39
帝国動乱

第20話 帝国の冒険者

しおりを挟む
 俺が去って間もなくするとシンシアたちが部屋を訪れた。あくびをしているノインを尻目にシンシアは扉をコンコンと叩き、呼びかける声を響かせる。



「先生、入ってもよろしいでしょうか?」



 すると扉は内側から開かれそこには一人の女性がいた。エミリーである。予想外の人物の姿にシンシアとノインは目を丸くする。その様子を見てエミリーは穏やかな笑みを浮かべながら事情を話そうと口を開く。



「ブラッド様は先ほど用事があるからと出ていかれました。それで私にシンシア様たち宛の手紙を託されましたのでお渡ししますね」



 そう言って懐から手紙を出し、手渡す。シンシアは納得した様子で手紙を受け取る。



「それともう一つ俺様からシンシア様方がこちらのギルドで活動できるように手続きをするように頼まれましたのでギルドに行く際は私に御一報ください」



「それなら今からでいいですか? ノインもいい?」



「ん、構わない」



「承知しました。では今から向かいましょうか。案内しますのでついてきてください」



 エミリーは宿の出口に向かって歩いていく。二人もその後ろを追従していく。宿を出て歩いているとシンシアは思い出したように疑問を口にした。



「そういえば何で先生はまだ私たちを迷宮に行かせないのかな?」



 それを聞きノインは呆れたような表情を浮かべる。



「行かせないのではなく私たちではまだ入れない。迷宮に入るには青玉以上の等級が必要だから」



「えーと、それってどのくらいの期間でなれるのかな?」



「およそ早くて一年、長くても三年ほどですよ、シンシア様」



 二人の会話を聞いていたエミリーがシンシアの隣まで下がり答える。



「そうなんですね。でも何でそこまでの等級が必要なんですか? 魔物なら地上でもいますし討伐の依頼もあるのに……」



 シンシアは続けざまに疑問を訪ねた。それにエミリーは笑顔で答える。



「それはですね、迷宮の魔物は外の魔物とは違い生物的な本能を持っていないからです」



「それはどうゆう……」



 エミリーがその疑問に答えようとするがそれよりも先にノインが話し出す。



「私が説明する。迷宮の生物は死を恐れないし異種族の魔物とも協調する。だから、死ぬ直前まで相手を殺そうと足掻くし、他の魔物と連携して戦術的な動きもする。よって普通の魔物よりも同じ個体でも強くなる。わかった?」



「うん、ありがとう。ノインは詳しいんだね」



 ノインは誇らしげな顔して薄い胸を張る。



「でも、なんで迷宮の魔物はそんな特性があるのかな?」



「迷宮の魔物は魔法で作られた魔法生物だからってにいが言ってた」



「ブラッド様がそう言ってたのですか?」



 エミリーは少し驚いた顔で尋ねた。



「そうだけど、何かあるの?」



「いえ、私は存じ上げなかったものですから。ブラッド様が言ったなら信憑性は高そうですね」



 にっこりと笑顔を浮かべ、ノインに返答する。



 そんな会話をしているうちに冒険者ギルドに着いた。帝都の冒険者ギルドは王都とは違いかなり巨大な作りをしていた。王国は迷宮都市と王都は別に存在しているが帝都は国の首都であり迷宮都市であるからだ。エミリーたちは身の丈を超える大きな扉を開け中に入る。そこには王国の迷宮都市にも負けないくらい多くの人がいた。



「私は手続きをしてまいりますのでお二人は依頼でも見て待っていてください」



「分かりました」



 シンシアの返事を聞くとエミリーは受付の方へと歩いて行った。シンシアとノインは入口から見て右奥にある依頼が張り付けてあるボードに向かう。その板には数多くの依頼が所狭しと貼り付けられていた。



「ノイン、どうする?」



「とりあえず討伐がいいと思う。採取系統の依頼はここらへんの地形が分からない私たちには難しいだろうから」



「そうだね。でも討伐系の依頼は私たちの等級じゃほとんど受けられないね」



「ん、確かにこのままだと肩慣らしにもならない雑魚狩りする羽目になりそう」



 二人が頭を悩ませていると後方から一人の男が話しかけてきた。



「嬢ちゃんたち討伐の依頼に行きたいのかい?」



 二人が振り返るとそこには見るからにガラの悪そうな冒険者が立っていた。その男からは強い酒の匂いが漂っておりシンシアは思わず顔を顰める。



「そうだけどあなたには頼らないから」



 ノインはそっけなく告げると虫でも追い払うかのように手をばたつかせる。



「おいおい、白磁のガキが鋼鉄の俺にその態度はねえだろ」



 男は胸元の認識票を見せつけるように指さす。ノインはそれを見て鼻で笑う。



「鋼鉄? 雑魚が何粋がってるの? 私たちはほんの少し前に冒険者登録したから白磁なだけだから。何年も鋼鉄で燻ってるあなたたちと比べられること自体が心外」



 ノインのその挑発めいた様子に男は怒り心頭といった様子であった。シンシアはその一触即発な状況にはたふたと慌てるだけだった。



「ガキが、調子に乗ってんじゃねーぞ!」



 男がノインに殴りかかろうとした時凛とした声色がギルド中に響いた。



「やめなさい!」



 その声に男は動きを止め、その声の方を向く。男の視線の先には鮮やかな青色の髪を携え、背中に身の丈ほどの槍を括りつけた白色の法衣を纏った女性がいた。その姿を確認した男は彼女の髪の色よりも青い顔をしている。



「また、あなたですかベント。次はないと言い含めたはずですが」



「あ、あの……これは……」



「これは何ですか」



 じろりと凍えるような視線を浴びせられた男は必死に抗いその場から駆け出す。男は脇目を振らずにギルドを一目散に出ていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

処理中です...