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5話 探索と遭遇
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薄暗い道を真っ直ぐに進んで行くと十分ほどで外へと出られた。
だが、そこは見たこともない森の中であった。鬱蒼と木々が生い茂り、人の気配もまるでない。
「ここは……どこだ? あの島からどこまで遠くに飛ばされたんだか……」
ソルは足元に生える雑草を踏みしめながら森の中を進んで行く。小一時間ほど適当に足を動かすが変わらぬ風景しか見つけられない。
「不味いな。想像以上にこの森は深いのかもしれない……」
ソルは無暗に歩き回るのをやめた。きょろきょろと周りを見渡し、近場で最も高い木を探す。ほんの数十メートル先に目的のものを見つけたので軽く勢いをつけて近づいていく。木の根元まで来ると地面を蹴り、跳躍する。木の枝を足場にしてどんどん上の方へと昇っていく。周りの木々から頭一つ抜けた高さまで到達するとソルは遠くを見渡して見た。
森の広さはかなりのものでソルが見渡す範囲には街や村なんかは見えない。
(ここがどこかも分からない、人がいそうな場所さえ見つからない。どうしたものか……)
ソルが今後の展望について悩んでいると遠くの方で悲鳴のようなものが響く。それは獣の咆哮ではなく人間のそれであった。
ソルは木から飛び降りると手がかりを求めて声が聞こえた方に走り出す。万が一、叫び声をあげた人間が魔物なんかに襲われて死んでしまえば振り出しに戻ってしまう。ソルが全力で走ること一分ほどで視界に人の姿を捉えた。だが、そこには魔物ではなく一人の少女とそれを取り囲む四人の男たちがいた。
ソルは想定した状況と違ったため咄嗟に木の裏に身を隠し、聞き耳を立て現状を探る。
「おいおい、嬢ちゃん。手間かけさせんなよ。俺たちはあんたが首に下げてるその宝石がほしいだけなんだ。あんたの命とその宝石どっちが重いか考えれば嬢ちゃんのすべき行動は一つだろ?」
ソルが木の影から少女の方を覗き見ると確かに首から美しい青い宝石がぶら下がっている。
「いやよ。これはお母さんの形見なの。あんたたちみたいな盗人に渡せるものじゃないわ。それに渡したからって見逃してくれるかなんてわからないじゃない!」
「あー、確かにそう思うよな。仕方ない、やるぞ」
囲んでいる四人の男はそれぞれが腰の剣を抜く。賊にしてはかなりの業物を帯びている。それに男たちが纏っている外套は魔物の素材で作られた特別なものだ。客観的に見て少女に勝ち目はない。
少女は苦々しい表情を浮かべながら杖のような物を構える。
「諦めろ。お前が魔術師なのは知っている。魔術を使う隙なんて与えんぞ」
ソルは魔術という言葉に首を捻った。
(聞いたことがない言葉だ。あの男の言葉から発動に時間がかかる類の技だろう。確かにそれならあの子に勝ち目はないな)
ソルは状況を冷静に分析しながら眺めいている。今までのソルなら間違いなく囲まれている少女を見た時点で助けに入っただろう。だが、自分の本質を知った、いや理解させられた彼は以前ほどの感傷は抱かなくなったのだ。
仮にこの場であの少女を助けなくても罪悪感など抱かなくなるほどには心が闇に惹かれている。合理だけを突き詰めればあの男たちが少女を殺して安心した隙に三人殺し、残り一人を尋問するのがいいだろう。しかし、彼は腰の刀に手を掛ける。
(俺は正義感のようなものはあの洞窟で捨ててきた。だから、あの少女を見捨てることは容易い。心も全く痛まない。だが、ここで知らぬ顔をすればルスや俺を見捨てたやつらと変わらない。それだけは……いやだ)
「魔操流抜刀術<鎌鼬/カマイタチ>」
ソルは男たち目掛けて技を放った。
だが、そこは見たこともない森の中であった。鬱蒼と木々が生い茂り、人の気配もまるでない。
「ここは……どこだ? あの島からどこまで遠くに飛ばされたんだか……」
ソルは足元に生える雑草を踏みしめながら森の中を進んで行く。小一時間ほど適当に足を動かすが変わらぬ風景しか見つけられない。
「不味いな。想像以上にこの森は深いのかもしれない……」
ソルは無暗に歩き回るのをやめた。きょろきょろと周りを見渡し、近場で最も高い木を探す。ほんの数十メートル先に目的のものを見つけたので軽く勢いをつけて近づいていく。木の根元まで来ると地面を蹴り、跳躍する。木の枝を足場にしてどんどん上の方へと昇っていく。周りの木々から頭一つ抜けた高さまで到達するとソルは遠くを見渡して見た。
森の広さはかなりのものでソルが見渡す範囲には街や村なんかは見えない。
(ここがどこかも分からない、人がいそうな場所さえ見つからない。どうしたものか……)
ソルが今後の展望について悩んでいると遠くの方で悲鳴のようなものが響く。それは獣の咆哮ではなく人間のそれであった。
ソルは木から飛び降りると手がかりを求めて声が聞こえた方に走り出す。万が一、叫び声をあげた人間が魔物なんかに襲われて死んでしまえば振り出しに戻ってしまう。ソルが全力で走ること一分ほどで視界に人の姿を捉えた。だが、そこには魔物ではなく一人の少女とそれを取り囲む四人の男たちがいた。
ソルは想定した状況と違ったため咄嗟に木の裏に身を隠し、聞き耳を立て現状を探る。
「おいおい、嬢ちゃん。手間かけさせんなよ。俺たちはあんたが首に下げてるその宝石がほしいだけなんだ。あんたの命とその宝石どっちが重いか考えれば嬢ちゃんのすべき行動は一つだろ?」
ソルが木の影から少女の方を覗き見ると確かに首から美しい青い宝石がぶら下がっている。
「いやよ。これはお母さんの形見なの。あんたたちみたいな盗人に渡せるものじゃないわ。それに渡したからって見逃してくれるかなんてわからないじゃない!」
「あー、確かにそう思うよな。仕方ない、やるぞ」
囲んでいる四人の男はそれぞれが腰の剣を抜く。賊にしてはかなりの業物を帯びている。それに男たちが纏っている外套は魔物の素材で作られた特別なものだ。客観的に見て少女に勝ち目はない。
少女は苦々しい表情を浮かべながら杖のような物を構える。
「諦めろ。お前が魔術師なのは知っている。魔術を使う隙なんて与えんぞ」
ソルは魔術という言葉に首を捻った。
(聞いたことがない言葉だ。あの男の言葉から発動に時間がかかる類の技だろう。確かにそれならあの子に勝ち目はないな)
ソルは状況を冷静に分析しながら眺めいている。今までのソルなら間違いなく囲まれている少女を見た時点で助けに入っただろう。だが、自分の本質を知った、いや理解させられた彼は以前ほどの感傷は抱かなくなったのだ。
仮にこの場であの少女を助けなくても罪悪感など抱かなくなるほどには心が闇に惹かれている。合理だけを突き詰めればあの男たちが少女を殺して安心した隙に三人殺し、残り一人を尋問するのがいいだろう。しかし、彼は腰の刀に手を掛ける。
(俺は正義感のようなものはあの洞窟で捨ててきた。だから、あの少女を見捨てることは容易い。心も全く痛まない。だが、ここで知らぬ顔をすればルスや俺を見捨てたやつらと変わらない。それだけは……いやだ)
「魔操流抜刀術<鎌鼬/カマイタチ>」
ソルは男たち目掛けて技を放った。
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