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6話 戦闘と少女エルミース
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真空の刃が木々を両断し、男たちの一人に襲い掛かる。独特な風切りに気づいたのか男たちはいっせいにソルの方へと体を向ける。しかしその瞬間、風の刃は男の眼前に迫っていた。男は辛うじて持っていた剣を盾にしようとするがその剣ごと放たれた刃は両断する。煌めく刃と驚きの表情を浮かべた顔が宙に舞う。
「総員、緊急戦闘態勢だ! あの男を殺せ!」
リーダー格の男が怒声のような号令をかける。だが、ソルはお構いなしに警戒する三人の男に突っ込んむ。男たちも負けじと一人が正面から残りの二人が左右から挟撃するような陣形へと移行していく。ソルは左右の敵を警戒しつつ黒い刀を振るう。男たちの一人はその太刀を難なく受け止めた。
にやりと笑う男をあざ笑うようにソルは刀から手を放す。武器を手放す謎の行動に男は面を食らう。ソルは魔力を右手に集中させ、相手の懐に侵入する。
「魔操流体術<烈風掌/タツマキ>」
右手に渦巻く風を纏い、男の胸元へとたたきつける。手のひらを中心に吹き荒れる風が男の肉を抉り、鮮血が舞う。吐血しながら男は吹き飛ばされ大きな木に激突する。動かなくなった男の体に木の葉がぱらぱらと降り注ぐ。
ソルが攻撃に転じた一瞬を狙って男たちは決死の一撃を放つ。一人は斬撃、もう一人は突きをソル目掛けて放った。
「魔操流体術<土隠し/クラヤミ>」
ソルは足に風を纏うと思い切り地面を踏みつける。風の爆弾が足元を抉り、土煙が舞い上がる。
「きゃっ!」
可愛らしい悲鳴が聞こえてくる。少女を巻き込むほど広い範囲に砂塵をまき散らしたためだろう。しかし、ソルの狙いはそこにある。これで心置きなく闇を展開できるとソルは心の中でほくそ笑む。できるだけ『覚醒』した力は隠しておきたいからだ。今更一族のものがソルを発見したからといって連れ戻すとは思えない。だが、そうなる可能性もゼロではないのだ。
現状、ソルは一族の輪に戻りたいとは微塵も思っていない。この洞窟での覚醒を経て本来の自分を見つけたのだ。だから、少しでもあの場所に連れ戻される可能性は減らしたい。昔のようにあの一族に尽くす気などソルにはさらさらないのだから。
ソルは体から滲みだす闇を操り、男たちの剣を包み込み、闇の中へと引きずり込む。
「「なっ!」」
男たちから驚きの声があがる。動揺で動きが硬くなった瞬間を狙い、足元の刀を拾い振るう。その剣線は華麗に二人の胸元と首筋を捉えた。黒刀は血で濡れ、男たちは仰向けに倒れこんだ。倒れこんだ体からは赤い液体が溢れ出し、血だまりを作っている。
ソルは刀の汚れを払うように刀を振り、鞘に入れる。
(思った以上にこの刀は業物ようだ。あの洞窟に何十年……いや、下手したら何百年放置されていたはずなのに凄まじい切れ味。掘り出し物だったな)
ソルが新しい愛刀に満足していると土煙が晴れ、少女が顔を出した。少女は戦闘が行われる前と変わらず杖のようなものを構えている。
「あなた……何者なの?」
警戒心の色が宿る緑色の瞳がこちらを凝視している。敵対者たちを殺したとしてもソルが味方だとは限らない。ソルはどうやって自分の意思を伝えたものかと頭を掻く。ソルは仕方なく腰の刀を少女の方へと投げる。
少女は驚いて後ずさる。放り出された刀は地面へと落下し、転がる。
「せめてもの誠意だ。武器はあんたに預ける。これで少しでも信用してもらえないか?」
「あなたは何者?」
同じ問いが繰り返される。
「俺は……何というか家から勘当されて彷徨っている者だ。言うなれば流浪の身ってやつだな」
ソルはそう言って両手を上げる。抵抗しないという意思表示を表している。少女はソルの反応をじっくりと伺いながら落ちた刀を拾う。ソルが全く動く気がないからか危害を加える気がないことが伝わったのか構えていたものを下ろした。
「一応その話を信じることにするわ。助けてもらったしね」
ソルは安心したのかそっと胸を撫でおろし、掲げていた手を下げる。
「そう言ってもらえて助かるよ。このままさよならってわけにはいかないからな」
「……それはどういうことかしら?」
少女の瞳に再び疑念の色が宿る。
「俺は家から放り出されたって言ったろ? 身一つでこんな未開の場所に転移させられたんで近くの街に案内していくれる人間を探していたんだよ。何せこの場所がどこかも分かってないからな」
少女はソルの言葉に驚いたのか目を白黒させている。
「あなた……今転移って言った?」
「ああ、言ったが……。それがどうかしたか?」
ソルが聞き返すが少女は何でもないというようにかぶりを振る。
「いいえ、大したことじゃないわ。気にしないで。それであなたは近くの街への行き方が知りたいのね?」
「ああ、そうだ」
「それなら案内してあげるわ。どうせ依頼は失敗だしね」
「依頼?」
「それは道中で話すわ」
少女は歩き出そうとした時何かを思い出したかのように立ち止まる。
「そういえば私たちお互いの名前も知らなかったわね。私はエルミース、短い間かもしれないけどよろしくね」
「俺は……ソルだ。よろしくな」
ソルは自分の性も名乗ろうとしてしまい一瞬口ごもる。だが、エルミースは満足したのか輝かしい金髪をなびかせ、ソルから見て左側へと体を向ける。
「それじゃ、行きましょうか」
ソルは警戒されないためにはエルミースよりも少し前を歩きだした。
「総員、緊急戦闘態勢だ! あの男を殺せ!」
リーダー格の男が怒声のような号令をかける。だが、ソルはお構いなしに警戒する三人の男に突っ込んむ。男たちも負けじと一人が正面から残りの二人が左右から挟撃するような陣形へと移行していく。ソルは左右の敵を警戒しつつ黒い刀を振るう。男たちの一人はその太刀を難なく受け止めた。
にやりと笑う男をあざ笑うようにソルは刀から手を放す。武器を手放す謎の行動に男は面を食らう。ソルは魔力を右手に集中させ、相手の懐に侵入する。
「魔操流体術<烈風掌/タツマキ>」
右手に渦巻く風を纏い、男の胸元へとたたきつける。手のひらを中心に吹き荒れる風が男の肉を抉り、鮮血が舞う。吐血しながら男は吹き飛ばされ大きな木に激突する。動かなくなった男の体に木の葉がぱらぱらと降り注ぐ。
ソルが攻撃に転じた一瞬を狙って男たちは決死の一撃を放つ。一人は斬撃、もう一人は突きをソル目掛けて放った。
「魔操流体術<土隠し/クラヤミ>」
ソルは足に風を纏うと思い切り地面を踏みつける。風の爆弾が足元を抉り、土煙が舞い上がる。
「きゃっ!」
可愛らしい悲鳴が聞こえてくる。少女を巻き込むほど広い範囲に砂塵をまき散らしたためだろう。しかし、ソルの狙いはそこにある。これで心置きなく闇を展開できるとソルは心の中でほくそ笑む。できるだけ『覚醒』した力は隠しておきたいからだ。今更一族のものがソルを発見したからといって連れ戻すとは思えない。だが、そうなる可能性もゼロではないのだ。
現状、ソルは一族の輪に戻りたいとは微塵も思っていない。この洞窟での覚醒を経て本来の自分を見つけたのだ。だから、少しでもあの場所に連れ戻される可能性は減らしたい。昔のようにあの一族に尽くす気などソルにはさらさらないのだから。
ソルは体から滲みだす闇を操り、男たちの剣を包み込み、闇の中へと引きずり込む。
「「なっ!」」
男たちから驚きの声があがる。動揺で動きが硬くなった瞬間を狙い、足元の刀を拾い振るう。その剣線は華麗に二人の胸元と首筋を捉えた。黒刀は血で濡れ、男たちは仰向けに倒れこんだ。倒れこんだ体からは赤い液体が溢れ出し、血だまりを作っている。
ソルは刀の汚れを払うように刀を振り、鞘に入れる。
(思った以上にこの刀は業物ようだ。あの洞窟に何十年……いや、下手したら何百年放置されていたはずなのに凄まじい切れ味。掘り出し物だったな)
ソルが新しい愛刀に満足していると土煙が晴れ、少女が顔を出した。少女は戦闘が行われる前と変わらず杖のようなものを構えている。
「あなた……何者なの?」
警戒心の色が宿る緑色の瞳がこちらを凝視している。敵対者たちを殺したとしてもソルが味方だとは限らない。ソルはどうやって自分の意思を伝えたものかと頭を掻く。ソルは仕方なく腰の刀を少女の方へと投げる。
少女は驚いて後ずさる。放り出された刀は地面へと落下し、転がる。
「せめてもの誠意だ。武器はあんたに預ける。これで少しでも信用してもらえないか?」
「あなたは何者?」
同じ問いが繰り返される。
「俺は……何というか家から勘当されて彷徨っている者だ。言うなれば流浪の身ってやつだな」
ソルはそう言って両手を上げる。抵抗しないという意思表示を表している。少女はソルの反応をじっくりと伺いながら落ちた刀を拾う。ソルが全く動く気がないからか危害を加える気がないことが伝わったのか構えていたものを下ろした。
「一応その話を信じることにするわ。助けてもらったしね」
ソルは安心したのかそっと胸を撫でおろし、掲げていた手を下げる。
「そう言ってもらえて助かるよ。このままさよならってわけにはいかないからな」
「……それはどういうことかしら?」
少女の瞳に再び疑念の色が宿る。
「俺は家から放り出されたって言ったろ? 身一つでこんな未開の場所に転移させられたんで近くの街に案内していくれる人間を探していたんだよ。何せこの場所がどこかも分かってないからな」
少女はソルの言葉に驚いたのか目を白黒させている。
「あなた……今転移って言った?」
「ああ、言ったが……。それがどうかしたか?」
ソルが聞き返すが少女は何でもないというようにかぶりを振る。
「いいえ、大したことじゃないわ。気にしないで。それであなたは近くの街への行き方が知りたいのね?」
「ああ、そうだ」
「それなら案内してあげるわ。どうせ依頼は失敗だしね」
「依頼?」
「それは道中で話すわ」
少女は歩き出そうとした時何かを思い出したかのように立ち止まる。
「そういえば私たちお互いの名前も知らなかったわね。私はエルミース、短い間かもしれないけどよろしくね」
「俺は……ソルだ。よろしくな」
ソルは自分の性も名乗ろうとしてしまい一瞬口ごもる。だが、エルミースは満足したのか輝かしい金髪をなびかせ、ソルから見て左側へと体を向ける。
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