【完結】三度の前世でヤンデレに殺されている俺は今世こそ寿命で死にたい。

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幼馴染に彼女はいるらしい

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    あの日、初めて出来た同士である朝霧壮真のLIMEは友達登録から僅か2時間でブロックすることになった。スマホを取り上げられて奴に勝手にやられた。
    それを大人しく抵抗もせず見ていたあの時の俺の判断は正しい。
    あそこで間違えてたら、おはようなんて言い合えなかっただろう。

    LIMEをすると言ってくれた人懐っこい笑顔の壮真には本当に悪いことをしたと思っているが、これで終わりにするような俺ではないので安心してほしい。
    壮真がバイトしているコンビニへは立ち入り禁止にされたし、学校帰りはコンビニの前ではなくスタバ側の歩道を礼於が道路側を歩くことによって俺がコンビニの中から見えないようにするという徹底ガードだが、必ずこの檻から脱獄してみせる。

「雨だなー」
「雨だね」
「今日の体育は体育館か。ハンドボールって体育館でも出来んのかな」
「知らない。せいぜい頑張りたまえ運動王よ」
「お前もやんだよ」
「俺はコートの端で空気をやってる」
「ははっ!それはお似合いだわ」

    いつものくだらないやり取りを出来ることに心底安堵する。
    これまでの突然不機嫌スイッチは、俺が礼於以外の人間と接点を持ってしまったことで突然病気発症スイッチへと変貌を遂げた。
    今までよりも注意深く言葉を選んで奴の顔色をうかがわねばならない。
    大変面倒くさいし出来ることなら誰かにバトンタッチしたいところだが、神はそれを許さない。

    雨が絶え間なく街を包むように降り続いた水曜日ももうすぐ終わる。
    6限目終了のチャイムがなり、橘先生が教室を去る間際、一瞬目が合ったような気がした。
    すぐに視線を鞄に落として荷物を詰め込む。手に汗が滲んだ。

「はくり」

    聞き慣れた声に名前を呼ばれて心臓が止まりそうになるのを、正常に動けと念じながら不自然に見えないように顔をあげた。

「約束通り、まっすぐ、誰とも喋らないで帰れよ」
「うん分かってる」
「約束破ったら殺すからね。白犂が嘘をついたかどうかも俺にはすぐ分かるからね」
「俺を信じられない?」
「……19時には帰るから。待ってて」
「うん、待ってる」

    礼於にだけ分かるように目を細めて微笑む。
    どろりとした色を見え隠れさせながら一度俺の頭を撫でた後、クラスメイトに呼ばれて離れていった。

    今の奴の発言で確信した。
    スマホにGPSと盗聴機が仕掛けられている。

    俺が誰かと会って話したことがすぐに分かるとあそこまで自信満々に言われれば誰だって気付くものだ。
    スマホの電源を切ればいいだけの話かと言われれば、それは逆効果だ。
    電源を切った理由を事細かに説明しなければ奴の気はおさまらないし、もっと俺の行動範囲が狭められるだろう。

    礼於以外の人と喋らない。そう、声に出して喋らなければ約束を破ったことにはならない。

    学校を出て真っ直ぐどこにも寄らず家に向かう。しかし帰り道の途中にはコンビニがある。
    先週の木曜日からはコンビニ側の歩道ではなくステバ側の歩道を歩いていたが、本来はコンビニ側の歩道を左に曲がらないと家に着かない。
    よって、歩道の指定まではされてないので俺は堂々とコンビニ側の正規ルートを歩いた。
    コンビニを通りすぎようとした時、コンビニ脇の細い通路で自転車の止まる音が聞こえた。バイトにやってきた壮真だった。

    ばっちり目が合った途端、俺の名前を呼ぼうとしたのか口を大きく開けた壮真に手でストップの合図をする。
    その後唇に人差し指を持っていき、しーっとジェスチャーをした。
    怪訝な顔でこちらを見る壮真の前で予めYシャツのポケットに入れておいた紙を取り出しわざとらしく地面に落とす。
    壮真が落ちた紙に視線を奪われてる間に、俺は背を向けて掌をひらひらとさせながら軽く走ってコンビニから離れた。

    壮真は紙を拾い上げてしっかり中身を読んでくれるだろう。
    これしか方法がなかったが案外いい方法だと思っている。
    どうか俺の思い通りにいきますように、と何度目になるのか分からない願い事を心の中でした。

***

    19時頃、宣言通り俺の部屋を自分の家だと勘違いしている奴が帰ってきた。
    何の変化も見られなかったことから、俺の脱獄第一関門は安全に突破出来たと思われる。

「礼於ー、今日の数学の課題分かる?俺苦手なとこだから教えてくれ」
「えー?しょーがねーなぁ、優しい俺が教えてやるよ。報酬はお前のヨダレ垂らした寝顔写真な」
「そんなん撮ってどうすんだよ」
「将来出来る白犂の子供に、お前の父ちゃんこんな顔で寝てたんだぞって笑わすためにアルバムに入れとくんだよ」
「嫌なやつ。何だかんだ言ってどうせ礼於は大学卒業と同時に結婚しそうだよな」
「なに、寂しいの?」
「結婚したら毎日会えなくなるから清々するわ悪魔野郎」
「はー?結婚したって俺たちは変わらねーよ。毎日会うし毎日一緒に飯食う」
「…あ、そ」

    何の疑問も抱かずに堂々と言った奴に冷めた眼差しを送る。本当に不思議だ。
    誰とも喋るなと言っておきながら俺の子供を想像するし、世間一般の結婚像と奴の結婚像は落差がありすぎる。
    これをおかしいと思わない奴の頭はおかしい。謎すぎる。

「てかさー、礼於もそろそろ彼女とか作ったら?将来結婚したいんだろ?」
「俺彼女いるけど」
「…うっそーん。いつ出来たの?」
「10日くらい前。しつこかったから」
「彼女と会う時間作ってる?あ、もしかして今日は彼女とデートだったか」
「2人きりではないけど、確かに今日遊んだわ。付き合うときに条件だしたし。おはようおやすみメールはするけど、会うのは水曜日だけって。他の奴らが誘ってきたらそいつらも一緒にな」

    世間一般でいう恋人像と奴の考える恋人像にも埋められない溝があるのは明白だ。
    なんて可哀想な彼女さんだろう。今すぐにでも別れて次の恋愛を見つけた方が絶対幸せだし時間の有効活用にもなるのに。
    そんなこと、本人も分かっているはずだ。奴の残念な彼女はこれが初めてではないのだから。
    みんな分かってて、それでも一抹の望みにかけて恋人の座をゲットする。
    不思議な生き物だ。特に女は不思議を通り越して、恐ろしい。

「なぁ、礼於。お前いつか刺されないように気を付けろよな」
「俺が刺されて死んだら白犂ちゃんが泣いちゃうから死なねーように頑張るわ。てか、死ぬときは白犂も道連れにする」
「うんうんそうだったそうだった」

    先に殺されるのは、礼於ではなく俺なのは間違いない。俺は奴以外の人間に殺されるなら本望である。

「それより、腹減っただろ。ご飯出来てるし温めておくから風呂入ってこい。その後課題教えて」
「おっけー」

    風呂へと向かう後ろ姿だけでもイケメンオーラが出てる奴なのに、病のせいで残念な思考をお持ちだ。
    何としてでもそれを正して俺の元から旅立たせねばならない。
    そう思いながらも一向に良くなる気配はないしむしろ悪化させてしまってるし奴の病を治してやる自信はあまりない。ないが、その中でも見つけ出すしかないのだ。

    いつものように2人でご飯を食べた後に課題をやる。課題をしてる途中で母親が帰ってきて、その後すぐに父親も帰ってきた。
    家族同然のような気軽なやり取りをする幼馴染が病におかされていることは俺しか知らない。
    当たり前だ、俺と2人きりの時にしか発症しないのだから。

    21時半頃に目の前の家へと帰った幼馴染を部屋の窓から見送り、カーテンを閉める。
    奴が来る前に風呂にも入り寝間着姿だった俺はそのまま布団に入りスマホをつけた。
    画面の時計が22時になるのを布団の中でじっと待つ。恐らく奴は盗聴しているし、もしかしたらこの部屋に隠しカメラでも仕掛けてるかもしれない。
    布団の中で寝たフリをすれば大丈夫。

    手の中で大人しくしていたスマホに、メール受信の文字が表示されて時間を確認すればピッタリの22時。
    サイレントモードにしていたから何の音もしなかったはずだ。
    メールBOXのアイコンをクリックして見れば、新着メッセージの件名に『読んだよ』と書かれていて、無事に彼は俺の言う通りにしてくれたことにほっと胸を撫で下ろした。

『件名:読んだよ
    本文:同士のメアド、忘れないでな!』

    たったそれだけ。たったそれだけでも嬉しかった。
    俺の願い通り名前もこの前のことも一切触れていない文に、覚えやすいメアド。俺はそれをしっかり記憶し、絶対に忘れないようにする。
    メモることもメアドを登録することもしない。奴に見つかるような跡は残さない。
    瞳に焼き付けるように英数字のメアドを何度も見直して、俺は『ありがとう』とだけ送ってメールBOXを空にした。

    脱獄第二関門突破の安心感から、その後すぐに眠気に誘われて身体の力を抜いた。

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