ヤンデレな神様が俺の逝く先を裁いてくる

御厨カイト

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ヤンデレな神様が俺の逝く先を裁いてくる

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……ここは一体何処だ?
俺はさっき車に轢かれたはずでは……?


一面『白』に覆われているこの場所で俺は目を覚ます。


「……あら、ようやく目を覚まされましたか」

「だ、誰だ!?」


突然の声に俺は思わず振り返る。
そこには金色の髪を腰まで伸ばし、エメラルド色の目をした美女が立っていた。


「あぁ、急に驚かせてしまい申し訳ありません。私は俗にいう『神』というものでございます」

「か、神だと?あんたは一体何を言っているんだ」

「何をと言われましても事実ですので」

「そ、そうか……」


謎の威圧感を出しながらそう言う彼女に俺は納得せざるを得なくなる。


「と言うかあんたが神なのはわかったがここは一体何処なんだ」

「ここは冥界ですよ。所謂『あの世』と呼ばれる場所ですね」

「あの世……という事は俺はやっぱり死んだのか」

「えぇ、そう言う事になります」

「……」


分かっていた、いや察していたことと言えやはり悲しいものは悲しい。
まだやりたいことだってあったし、恋人だっていた。
……本当に悲しい。


「……なるほど、自分の置かれた状況は分かった。それで?俺はこれからどうなるんだ?」

「これからは貴方の生前の行いを元に貴方が天国と地獄にどちらに行くべきかというのを決めていきます。ですので私の問いに正直に答えてください」

「あ、そう言う感じなんだ。なるほど、分かった」

「と言っても、私は嘘が分かるので嘘をついたとしても無駄ですからね。それではいきます、貴方が生前に行った良い事を出来るだけ多く上げてください」

「良い事……か、うーん、歩いている時に財布を拾ったからそれを交番に届けたとかかな。こんな感じで良いんだよな?」

「えぇ、そう言う事を沢山言ってください。勿論事実であることをね」

「他にはそうだな、道に迷っていたおばあちゃんを助けた事とか地域の清掃活動に参加したとか……他にもありそうなんだが思い出せないや」

「ふむ、では思い出せないぐらい良い事を今までしたという事ですね。……うふふ、流石私の惚れた魂だわ」

「……何か言いました?」

「いえ、何でもありません。今の所嘘もついていないようですね。それでは次の質問に参りましょう。貴方が生前に行ってしまった悪い事を出来るだけ多く上げてください」

「悪い事?悪い事か…………特に思いつかないな。別に法を犯した事も無いし、ポイ捨てなんかもしないしな」

「ほう、今までで悪い事をした事が一切ないと?」

「俺はそう思うんだけど……」

「……ふむ、確かにこちらも嘘はついていないようですね。この様子だと貴方は生前では良い事を沢山した素晴らしい人間という事になります」

「おっ、ということは……?」

「そうですね、貴方は天国に行くべき人間……と言いたいところなんですが、残念ながら貴方は地獄行きです」

「……はっ?なんでだよ!良い事ばっかりしてんだったら天国行きなんじゃないのかよ!」

「なんでって、そりゃ貴方が浮気をしたからですよ」

「う、浮気?そんなことしたこと無いぞ!俺はいつだって楓一筋で――」

「それですよ!その楓と言う女にですよ!」

「!?」


俺が「楓」という名前を出した途端、神様は美しい顔を大きく崩し憤怒の形相となる。
そしてさっきまでの丁寧な言葉遣いが一転、一気に責めるかのような口調になる。


「私は貴方の事が生まれる前の魂の頃から好きだったんですよ?だから貴方の人生が良いものになるように色々運命を変えたりしていたのに」

「……えっ、そんなことされてたんだ……」

「なのに!貴方という人は恋人なんか作って、そんな私の想いを踏みにじったんですよ!」

「い、いや、でも、俺はそもそもあんたの存在すら知らなかったんだし、不可抗力だったとしか言いようが――」

「あぁ、はいはい、言い訳はもう良いですよ。早く地獄に行って文字通り地獄の苦しみを味わってきてください」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺は地獄になんざ行きたくない!た、頼む、どうか許してくれ!」


なぜ俺がこんなにも謝らないといけないのか分からないほどの理不尽な言い分だったが、このままだと地獄に行かなければならなくなってしまいそうだから全力で謝る。
そんな俺の様子を見て、神様は「待ってました」と言わんばかりの笑みを浮かべる。


「そんなに行きたくないんですか?はぁ、仕方が無いですね。1つだけ地獄に行かなくて済む方法がありますよ」

「えっ、なんだソレは。教えてくれ!」

「それはですね…………私の元に仕えることです」


俺の耳元で神様はそう囁く。


「つ、仕える……?」

「そう、まぁ要するに私の傍にずっといなさいという事ですね。ずっと私の傍にいて、私が『甘やかしなさい』と言ったら全力で甘やかして、私が『ハグをしなさい』と言ったら全力でハグをして、私が『キスをしなさい』と言ったら全力でキスをする。そんな感じで全力でいっぱい私とイチャイチャするのです!」

「……」


俺はそんな彼女の提案にドン引きする。
えっ……マジでこんなことしないといけないの……


「……これって断る事って」

「別に断っても良いですけど、そうなると問答無用で地獄に行くことになりますね。貴方が天国に行くという選択肢はありません」


ガ、ガチか……嘘だろ。
滅茶苦茶嫌なんだが。
でも、これ断ってこのままずっと地獄に行くのもヤダし……

……はぁ、これは受けるしかないか。


「……分かった、やります」

「うん?何だって?」

「……やりますって言ったんです!」

「えっ!ホントですか!やったー!やっと私の夢が叶いましたよ!」

「……」


言ってしまった……
もう後戻りは出来ないな。
ごめんな楓、ホントごめん。


「この時を何年待ちわびたか!さ、最初は何をやってもらいましょうかね、や、やっぱりハグとかでしょうか!」


て言うか神様の喜びようが半端ないんだが……怖い。



「そ、それじゃ早速、私にハグをしなさい!」



そう言いながら、こちらに大きく手を広げる神様。







……どうやら俺はとんでもない神様に惚れられていたようだ。




















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