風紀委員長様は蛇女、そしてカノジョ

御厨カイト

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風紀委員長様は蛇女、そしてカノジョ

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「ねぇ~、そこの君~?そのスカートの丈、規定のよりも短いんじゃないの~?」

「あっ、す、すいません……」

「うん、顔は覚えたからちゃんと明日までにちゃんと直しておくんだよ~……ってちょっとそこの子~?しれーっと通ろうとするんじゃないよ~。制服着崩さないでちゃんと着ようね~」

「は、はい、ごめんなさい!」


 スプリットタンにギザ歯、そしてギョロりとした目で風紀を取り締まっている彼女。
 ビシッと制服を規定の通り着て、下駄箱前で目を光らせている。

 今日は風紀委員長直々に制服を取り締まる日。
 彼女はどんなに小さい事でも見逃さないため、普段着崩している人たちからしたら地獄の日な訳だが僕からしたらただの何ともない日だ。


 そんな訳で普通に彼女の前を通り「おはようございます」と挨拶をする。
 すると、彼女もニッコリと微笑み「おはよう」と返してくれた。

 僕はそんな彼女に微笑み返し、下駄箱へと向かう。

  
「もー、マジで厳しすぎるんだよな、あの委員長」

「ピアス付けてるの見えるとかどんな視力してんだよ。マジで蛇じゃん」

「いやー、マジで怖いわあの人」


 多分、彼女に対する言葉であろうものに僕は苦笑いをする。


 あの人はいつも勘違いされやすいからな。
 本当の姿は全然違うものなのに。


 そんな事を思ってると携帯の通知音がピロンッと鳴る。

 ……ハハハッ、ちょうどあの人からだ。




『今日も放課後、いつもの部屋に来てね!よろしく!』











 ********








 コンコンッ



 放課後になって少し経った頃、僕は風紀委員会の部室を訪れ、ドアをノックする。


「どうぞ~」

「失礼します」


 その返事に僕はドアを開け、中へと入る。


 ガチャッ


「も~、遅いよ~!すっかり待ちくたびれちゃった~」


 言葉とは裏腹に凄く嬉しそうに声を掛けてくる、若干疲れ気味の彼女。
 今日の朝なんて制服を着崩していないか目を光らせていたのに、今の彼女は首元のボタンを開け、胸元が大分露出しており着けていたネックレスがチリンと小さく光っていた。

 僕はそんな彼女の目の前に行き、そっと彼女の頬を両手で包み込む。


「……いつもお疲れ様です、先輩」

「はぅぅ……つ、疲れが溶けてく~……」


 僕の両手が彼女の頬を包み込むと、まるで温泉に浸かっているかのような声で気持ちよさそうにする彼女。
 そして、彼女は僕の手に自身の手を重ね、ふにゃりと笑いながら僕を見つめてくる。
 普段はあんなにも厳しくしているのに僕の前ではこんなに可愛い姿を見せてくれる彼女はまさに二重人格だ。
 猫をかぶっていると言った方がいいのだろうか。

 ――と、まぁ、そんな冗談はさておき、実は今、僕は先輩のお手伝いをさせてもらっている。

 ……といっても、特に何かができるわけでもない為本当に手伝いといった形なのだが。


「すいません、直ぐに行きたかったんですけど先生に呼ばれちゃって」

「う~ん、まぁ、それなら仕方が無いかな~」

「そういう先輩こそ、今日は凄く忙しそうですね」

「今日は制服チェックの日だったからね~。違反している生徒が意外と多くてホント大変だよ~」


 そう言いながら、彼女は近くにある書類に目を落とす。


「アハハ、流石風紀委員長様ですね」

「まったくだ。こんな事をするんだったら立候補なんてするんじゃなかったよ~」


 僕が笑うのにつられてか、苦笑いして肩をすくめる彼女。
 そして、自分の膝をポンポンと叩く”いつもの動作”をする。

 僕はそんな彼女の様子を見てより一層笑みを深め、彼女の方へ向かい彼女の膝に座る。
 いつもしていることではあるが、彼女は僕がコレをすると「にへらぁ」と蕩けたように頬を緩ます。

 それにしても、どうしても彼女の方が一回り大きいから見上げる形になってしまうのは仕方がない。


「ほら、あともう少しでお仕事終わるじゃないですか。最後まで頑張ってください!」

「……君が傍に来てくれたからメッチャやる気が出てきた。よーっし、サッサと終わらせちゃうぞ~!」


 ……さっきまでの疲労はどこへやら。

 まるで電池を取り換えたロボットかのようにバリバリと彼女は仕事を終わらせていくのだった。







 十数分後、







「はぁ~、終わった~……」

「お疲れ様です!」


 最後の書類を置いて、「ふぅー」と息を吐く。
 僕はそんな彼女に膝の上ではあるが、労いの言葉を掛ける。


「ありがとう。でも、最後までちゃんと出来たのは君のおかげだよ~」

「別に僕は何もしていないですよ。傍にいただけです」

「傍に居てくれるだけで十分ありがたいし、嬉しんだよね~」


 包み込むようにバックハグをし、耳元で彼女はそう言う。
 そして、そのまま自然の流れで僕の口元へと近づいていき……


「ダメです」

「ふぎゅ!」


 しっかり手で押さえ、ガードする。


「そういう事をするのは志望している大学に合格してからって言った人はどこのどなたですか?」

「もう我慢できないよ~!あと半年もあるんだよ~!?」

「ダメです。願掛けでやっているんでしょ?それならちゃんと最後までやり遂げないとダメじゃないですか」

「うぅ~、こんな願掛けをした半年前の私を呪ってやりたい。で、でも、このスプリットタンでキスしたら凄い気持ち良いよ~!そろそろ君も我慢できないんじゃない?」


 チロチロと二股の舌をこれ見よがしに動かしながら、彼女は言う。


 ……正直に言うと確かに我慢は限界に近い。
 何なら今も彼女の様子を見て、ゴクリとつばを飲み込んでしまった。

 ……いや……で、でも。


「…………それでも、ダメです!」

「メッチャ葛藤してたね~」

「流石にやると決めたものは最後までやりましょう。逆に目標を達成した暁には好きなだけさせてあげますから」

「……君にそこまで言われたらしょうがないな~。ちゃんと頑張るよ~。でも、君の方こそ覚悟しておいてね~。本当に容赦ないから~」


 彼女はニヤニヤとしながら、煽るように僕の頬を人差し指でつんつんしてくる。


「うっ…………男に二言はありません!」


 そんな彼女の手を一旦払いのけながらも少し間を開けてそう意気込む僕に微笑みながら、彼女は僕の額に軽くキスをした。



「よっし、一先ず今はこれで我慢!」



 ニカッと笑う彼女に釣られて僕も同じように笑う。





 僕らの間にはいつまでも温かく、甘い空気が流れ続けるのだった。













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