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その後無事に神官さんから解放され、所変わってここは夜の街、月夜街。
この街に入れば一度現世を忘れ立場を忘れ己が何者かも忘れて情欲に任せ遊ぶ場所。
とは言うものの、実際のところ貴族がこの場所に脚を運ぶ事は無いようで、周りをみても荒っぽい人間は居ても毛色の違う人間は居ない。
それに貴族ならそもそも自分ちに呼ぶんだろうしなあ。
夜の街である月夜街の見た目は慣れ親しんでいた、元の世界のホテル街のようにギラついた雰囲気は無く、道行く人に声をかける呼び込みの人間も居ない。
あるのは中世ヨーロッパに近いこの世界からすれば極々普通の建物が大通りの両端にずらりと並んでいるだけだ。違うのはその建物の1階部分の大通りに面するところが全て窓になっていて、そこから準備をする美少年や美少女が見える事かな。
そこから見える煌びやかに着飾っている子達の着ている物が、夜会で着られるドレスよりも大きく肩から胸元まで空いたていたり背中が空いていたり。
流石に脱ぎ着している者は居ないが、その艶やかさに周りの目否が応でも目がいく、本来ははずなんだけども。
「あんな別嬪がここになんの用なんだ…?まさかの売るつもりか?」
「それなら一体いくらなんだ。ありゃ月姫と並ぶぞ。いやそれ以上か?」
そう、注目の的は何故か実質客呼びの為のガラス越しの子達ではなく、この俺になっている。
目立つのは慣れてるけどこんなにあからさまに値踏みされるのは久々。だめだ、人恋しい今、こんなあからさまな視線に晒され続けてたら否が応でも満たされなかった本能が疼く。平然を装いつつも、独りでに準備をはじめた自分で自分にため息が出る。くそ。
それに俺の顔が目立つのはいつもの事。
黒髪が珍しいこの世界、流石に地毛のままこの街に入るのは嫌な予感がしたし、いつもきちんと学んでる俺は変身薬で髪をよく居る茶色染めた。
なのにこれだけ注目されるのは別の理由があるんだ。
それは、この月夜街など色を売るのは基本的に受け入れる側のみ。つまりネコや女の子だけってこと。
なのに俺はオメガらしい、華やかな顔立ちに小さめで身長は百六十をちょっとすぎたくらい。
この世界は皆身長が高く、皆俺より二十は高い。
愛される事を前提としたこの性によく見られる、骨格は華奢で、男にしては肉付きの良い身体付き。
そりゃ今から普通通りに、つまり抱く側として利用する人間には見えないから騒がれてるわけだ。
売る側の人間ならぜひ買いたい。そんな話ばかり耳に入る。
もちろん俺も抱く側としてここに来たわけじゃない。っと、目的の店についたみたいだ。
「すみません、あの太陽の方の人間を身請けする事って出来ますか。」
「ようこそヴェガへ。え、あの…は、はい?」
店へ入り、受付であろう初老の男性へ声を掛ける。
何かを整理していたのか後ろにある棚からこちらへ振り返った彼は俺を見るなり素っ頓狂な声を上げていた。そうじろじろ見ないで欲しいんだけど。
そう、俺がここに来たのは一重に人を買う、もとい身請けする為。でもネコを、この世界で言う月の人間を身請けしてもしょうがない。ネコ同士でしたところで俺の発情期は収まらない…誘う事は誘うだろうけど。
それに月は奴隷を買うより何十倍も値段が高い。身元がしっかりしていたり、犯罪歴などが一切ない為だ。だから奴隷を買うよりも身請けという形で安全を買おう、という考えに至った訳。
その値段はというと、それはもう目が飛び出でるくらいだ。
月を買う事が主流なこの世界なので月に比べて太陽が正直人気がないとはいえ、身請けする際の金額は国の管理する値を下回ることは無い。奴隷の数倍は高いけどね…手持ちの何割がふっとぶんだろうなあ…。
しかしその金額を払ってでも身請けしたい理由として、追加でもう二点ほど利点があって一つ目が月や太陽の身元が、ほとんどが食べれなくなりしょうがなく売られてくる子達な事にある。
食べられなくなる、という事は庶民であり後から大事に発展することも少ないだろうという事。後からお貴族さまでしたとかいう事も無いしそれが原因の余計な事に巻き込まれる事もない。
もう一つが一番の決めてで、奴隷のように必要最低限の暮らしではなく、ほぼ全ての店に月一で国からの監視が入り従業員である売り子達の健康チェックなどがあるらしい、って事。
見た目中世ヨーロッパのこの世界で娼館なんて不安過ぎたけど、国からの健康チェックだなんて、案外しっかりしてるのが超好感もてた。病気はいかん。
えーっと、少し話が逸れたけどそんなこんなで思い立ったが吉日と言わんばかりにやってきた俺が今居るこの店。ヴェガという名の店はこの街で唯一タチを、太陽を買える店。
逆にほかの店で買えないのかよって話だけど、それだけ皆相手が居ないって事なんだろうな。
よその国は知らんけど、少なくとも待ちですれ違う人は女性の割合が男性に対して圧倒的に少ないし、男は男でデカくて逞しいのが多いから。
なんで俺が監視や健康チェックを知ってるかって?
そりゃまあ情報源はもちろん、セフレ。よく色町を利用するやつが一人居るからね。四人いるセフレの一人だ。ヘラヘラしたお調子者だけど、いろいろ情報通なので助かってる。発情期に連絡した時断られたのは根に持ってるけどな…ずっと根に持つけどな多分。
この街に入れば一度現世を忘れ立場を忘れ己が何者かも忘れて情欲に任せ遊ぶ場所。
とは言うものの、実際のところ貴族がこの場所に脚を運ぶ事は無いようで、周りをみても荒っぽい人間は居ても毛色の違う人間は居ない。
それに貴族ならそもそも自分ちに呼ぶんだろうしなあ。
夜の街である月夜街の見た目は慣れ親しんでいた、元の世界のホテル街のようにギラついた雰囲気は無く、道行く人に声をかける呼び込みの人間も居ない。
あるのは中世ヨーロッパに近いこの世界からすれば極々普通の建物が大通りの両端にずらりと並んでいるだけだ。違うのはその建物の1階部分の大通りに面するところが全て窓になっていて、そこから準備をする美少年や美少女が見える事かな。
そこから見える煌びやかに着飾っている子達の着ている物が、夜会で着られるドレスよりも大きく肩から胸元まで空いたていたり背中が空いていたり。
流石に脱ぎ着している者は居ないが、その艶やかさに周りの目否が応でも目がいく、本来ははずなんだけども。
「あんな別嬪がここになんの用なんだ…?まさかの売るつもりか?」
「それなら一体いくらなんだ。ありゃ月姫と並ぶぞ。いやそれ以上か?」
そう、注目の的は何故か実質客呼びの為のガラス越しの子達ではなく、この俺になっている。
目立つのは慣れてるけどこんなにあからさまに値踏みされるのは久々。だめだ、人恋しい今、こんなあからさまな視線に晒され続けてたら否が応でも満たされなかった本能が疼く。平然を装いつつも、独りでに準備をはじめた自分で自分にため息が出る。くそ。
それに俺の顔が目立つのはいつもの事。
黒髪が珍しいこの世界、流石に地毛のままこの街に入るのは嫌な予感がしたし、いつもきちんと学んでる俺は変身薬で髪をよく居る茶色染めた。
なのにこれだけ注目されるのは別の理由があるんだ。
それは、この月夜街など色を売るのは基本的に受け入れる側のみ。つまりネコや女の子だけってこと。
なのに俺はオメガらしい、華やかな顔立ちに小さめで身長は百六十をちょっとすぎたくらい。
この世界は皆身長が高く、皆俺より二十は高い。
愛される事を前提としたこの性によく見られる、骨格は華奢で、男にしては肉付きの良い身体付き。
そりゃ今から普通通りに、つまり抱く側として利用する人間には見えないから騒がれてるわけだ。
売る側の人間ならぜひ買いたい。そんな話ばかり耳に入る。
もちろん俺も抱く側としてここに来たわけじゃない。っと、目的の店についたみたいだ。
「すみません、あの太陽の方の人間を身請けする事って出来ますか。」
「ようこそヴェガへ。え、あの…は、はい?」
店へ入り、受付であろう初老の男性へ声を掛ける。
何かを整理していたのか後ろにある棚からこちらへ振り返った彼は俺を見るなり素っ頓狂な声を上げていた。そうじろじろ見ないで欲しいんだけど。
そう、俺がここに来たのは一重に人を買う、もとい身請けする為。でもネコを、この世界で言う月の人間を身請けしてもしょうがない。ネコ同士でしたところで俺の発情期は収まらない…誘う事は誘うだろうけど。
それに月は奴隷を買うより何十倍も値段が高い。身元がしっかりしていたり、犯罪歴などが一切ない為だ。だから奴隷を買うよりも身請けという形で安全を買おう、という考えに至った訳。
その値段はというと、それはもう目が飛び出でるくらいだ。
月を買う事が主流なこの世界なので月に比べて太陽が正直人気がないとはいえ、身請けする際の金額は国の管理する値を下回ることは無い。奴隷の数倍は高いけどね…手持ちの何割がふっとぶんだろうなあ…。
しかしその金額を払ってでも身請けしたい理由として、追加でもう二点ほど利点があって一つ目が月や太陽の身元が、ほとんどが食べれなくなりしょうがなく売られてくる子達な事にある。
食べられなくなる、という事は庶民であり後から大事に発展することも少ないだろうという事。後からお貴族さまでしたとかいう事も無いしそれが原因の余計な事に巻き込まれる事もない。
もう一つが一番の決めてで、奴隷のように必要最低限の暮らしではなく、ほぼ全ての店に月一で国からの監視が入り従業員である売り子達の健康チェックなどがあるらしい、って事。
見た目中世ヨーロッパのこの世界で娼館なんて不安過ぎたけど、国からの健康チェックだなんて、案外しっかりしてるのが超好感もてた。病気はいかん。
えーっと、少し話が逸れたけどそんなこんなで思い立ったが吉日と言わんばかりにやってきた俺が今居るこの店。ヴェガという名の店はこの街で唯一タチを、太陽を買える店。
逆にほかの店で買えないのかよって話だけど、それだけ皆相手が居ないって事なんだろうな。
よその国は知らんけど、少なくとも待ちですれ違う人は女性の割合が男性に対して圧倒的に少ないし、男は男でデカくて逞しいのが多いから。
なんで俺が監視や健康チェックを知ってるかって?
そりゃまあ情報源はもちろん、セフレ。よく色町を利用するやつが一人居るからね。四人いるセフレの一人だ。ヘラヘラしたお調子者だけど、いろいろ情報通なので助かってる。発情期に連絡した時断られたのは根に持ってるけどな…ずっと根に持つけどな多分。
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