異世界転生オメガ俺、逆ハー築く

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「ええ、その、太陽を…ですか？えっと…月へなるのではなく？」

「客に向かってそれを言うんです？失礼どころの話じゃないと思いますけど。」


初老の男性は数分あたふたした後、後ろから名簿の様なものを持ってきた。お、買えるのか？と期待したところ、彼の口から出たのはおおよそ夢を買いに来た客へ言う言葉じゃない。
彼が可哀想な程動揺していなければ、彼が言った言葉は
お前のような人間にうちの店は勿体ないので、それでも利用したければ自分を売れ、
そう取れる言葉だ。貴族なら問答無用で言われた時点で相手を不敬罪に問える。
俺は貴族じゃないし、オロオロしてるおじさんを目の前にしてさすがに喚いたりしないけども、言葉には気をつけた方がいいよおじさん…と呆れた。


「も、申し訳ございません！け、決して深い意味はありません！その、貴方様が余りにもお綺麗なので月夜街にいらっしゃるのが不思議で、あの！」

「大丈夫ですよ、何も問題にしたりしません。それで、太陽はこの店に何人居ますか？」

「お、お許し頂きありがとうございます…。こちらが当店の太陽の者になります。計五名と少ないですが、どの者も見目を含めトップクラスの月と比べても遜色ない者たちです。」

「ありがとうございます。へえ、ハーフも居るんですね。」

「ああ、グルドですか。お目が高いですね。そちらは淫魔の中でも上級とされるインキュバスとのハーフでございます。訳あってこの店に居ますが、問題などは一切ございません。魔族国からの証明印もございます。」

「うーん…。」


渡されたメンバー表には見目が良く身体も逞しい太陽達がずらりと五人。
普通、月が数十人居るのが当たり前な月夜街で、しかも太陽が居るのがこの店だけと言うことを考えれば需要の低さが分かる。思ったよりも少ないな…、と覗き込めば、ある一人が目に付いた。
他四人は人族らしく、前提条件としてこの世界の"普通"よりは顔が良い事を除けば、これと言った特徴が無いのに対して、俺が目を付けた太陽は見てわかる特徴があった。悪魔風の角だ。
それも羊型、と言うのかな…ぐるりと一周円を描くように丸くなっていて、その角も側頭部を覆うほど大きい。魔族国とこの国は同盟関係にあるとはいえ、どちらかと言うと不干渉に近いという。
そんなこの国で魔族への馴染みがあるわけが無い。
太陽自体が需要が低いのに、さらに魔族となると人が寄り付かんだろこれは…と思い聞くとインキュバスだと。
うーん、それは…、色町向きというかなんというか。魔族国からの証明書とか、実質魔族国から追放された奴って事だがそれ言って大丈夫なのか？いや勝手に魔族を売っていたりしたら同盟条約違反になるからだろうけど。


「まずは身請けする前に会ってみたいです。この子の一夜を買いたいんですが一夜いくらですか？」

「ええ、本当ですか！気に入る者が居たようで安心致しました。こちらの太陽は一夜、銀貨三枚でございます。前払いですが如何いたしますか？」

「三枚ですね、はい。今からでも？」

「確かに頂戴致します。申し訳ございません、準備がございますので半刻ほどお待ち頂けますでしょうか？もし良ければそちらのソファーでお待ち下さい。後でお茶菓子などもお持ち致しますので。何かお好みはおありでしょうか？」

「分かりました、じゃあ焼き菓子を頼めますか。」

「かしこまりました。ではお待ち下さいませ。」


数分悩んだ末出した結果、一先ずは一夜、買ってみることにした。
仕方ない、心惹かれるのがその子しか居なかったんだ。俺は自分の好みに従順なの。

月夜街は夜しかあかない街。つまり今は夜。
普通なら準備の為に半刻、慣れた言葉で言うと一時間も待つなんて事無いはずなんだけど、その理由は容易に予想が付く。大方売れてないんだろうし、雑用とかの裏方作業でもやってるんだろ。
元々身請け前に信用出来るかどうか数回通うつもりだし、それを考えれば、一時間くらい待つのだってなんとも思わないしな。
席に着いたあと出てきたお菓子はマドレーヌだった。ん、なんだこれめっちゃうまい。
あの店主さんの応対ではここがセフレの月夜街随一のサービスだって言う言葉はもう信じてなかったけど、良いサービスするじゃん。