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距離
11話 いつもの呼び方
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入学してから、もうすぐ一か月になる。
最初はぎこちなかった教室も、今ではすっかり落ち着いていた。
休み時間になると、クラスのあちこちで笑い声が聞こえる。
グループもだいたい決まってきて、席替えの話なんかも出始めていた。
水野は自分の席に座りながら、ノートを開いていた。
隣では西村が教科書を読んでいる。
静かな時間。
でも、なんとなく落ち着く。
水野は少しだけ横を見る。
西村は特に何も言わない。
でも、しばらくすると——
「ねぇ」
やっぱり声がする。
水野は顔を上げる。
「なに?」
西村はプリントを持っていた。
「これ今日の宿題?」
水野は少し覗き込む。
「それ昨日の」
「まじか」
西村は少しだけ困った顔をする。
水野は小さく笑った。
それから少しだけ沈黙。
水野はノートに目を戻す。
そのとき、ふと思う。
最近、西村とよく話している。
特別なことは何もない。
ただ隣の席で、短い会話をしているだけ。
それでも、毎日続いている。
水野はペンを動かしながら言った。
「西村」
呼ぶ。
西村が顔を上げる。
「ん?」
水野は少しだけ考える。
何を言おうとしたんだっけ。
さっきまで思っていたことが、少しだけ消えていた。
「……なんでもない」
西村は少しだけ首をかしげる。
「なんだよ」
水野は笑う。
「忘れた」
「適当だな」
「そう?」
また少し沈黙。
水野はノートに目を戻す。
でも、さっきのことが少し気になっていた。
呼んだ。
ちゃんと呼んだ。
「西村」って。
でも、そのあと何を言うか分からなくなった。
理由は分からない。
別に変なことじゃないのに。
水野はもう一度、横を見る。
西村はまた教科書を読んでいる。
普通の顔。
何も気にしていないみたいだった。
水野は少しだけ安心する。
そして、ふと口を開く。
「西村」
また呼ぶ。
西村が顔を上げる。
「ん?」
水野は一瞬考えてから言った。
「それ、次の授業のやつ?」
西村は教科書を見る。
「ああ、そう」
それだけ。
普通の会話。
でも水野は少しだけ思った。
さっきより、少しだけ言いにくかった。
ほんの少しだけ。
理由は分からない。
でも、なんとなく。
その日の帰り、廊下を歩きながら水野は思った。
もし西村が自分の名前を呼んだら。
きっと、少し驚く。
でも——
もし自分が西村の名前を呼べなくなったら。
それは、どうなんだろう。
水野は少しだけ首を振った。
そんなこと、あるわけない。
そう思いながら教室に戻ると、隣から声がした。
「ねぇ」
水野は振り向く。
「なに?」
その会話は、今日も変わらなかった。
最初はぎこちなかった教室も、今ではすっかり落ち着いていた。
休み時間になると、クラスのあちこちで笑い声が聞こえる。
グループもだいたい決まってきて、席替えの話なんかも出始めていた。
水野は自分の席に座りながら、ノートを開いていた。
隣では西村が教科書を読んでいる。
静かな時間。
でも、なんとなく落ち着く。
水野は少しだけ横を見る。
西村は特に何も言わない。
でも、しばらくすると——
「ねぇ」
やっぱり声がする。
水野は顔を上げる。
「なに?」
西村はプリントを持っていた。
「これ今日の宿題?」
水野は少し覗き込む。
「それ昨日の」
「まじか」
西村は少しだけ困った顔をする。
水野は小さく笑った。
それから少しだけ沈黙。
水野はノートに目を戻す。
そのとき、ふと思う。
最近、西村とよく話している。
特別なことは何もない。
ただ隣の席で、短い会話をしているだけ。
それでも、毎日続いている。
水野はペンを動かしながら言った。
「西村」
呼ぶ。
西村が顔を上げる。
「ん?」
水野は少しだけ考える。
何を言おうとしたんだっけ。
さっきまで思っていたことが、少しだけ消えていた。
「……なんでもない」
西村は少しだけ首をかしげる。
「なんだよ」
水野は笑う。
「忘れた」
「適当だな」
「そう?」
また少し沈黙。
水野はノートに目を戻す。
でも、さっきのことが少し気になっていた。
呼んだ。
ちゃんと呼んだ。
「西村」って。
でも、そのあと何を言うか分からなくなった。
理由は分からない。
別に変なことじゃないのに。
水野はもう一度、横を見る。
西村はまた教科書を読んでいる。
普通の顔。
何も気にしていないみたいだった。
水野は少しだけ安心する。
そして、ふと口を開く。
「西村」
また呼ぶ。
西村が顔を上げる。
「ん?」
水野は一瞬考えてから言った。
「それ、次の授業のやつ?」
西村は教科書を見る。
「ああ、そう」
それだけ。
普通の会話。
でも水野は少しだけ思った。
さっきより、少しだけ言いにくかった。
ほんの少しだけ。
理由は分からない。
でも、なんとなく。
その日の帰り、廊下を歩きながら水野は思った。
もし西村が自分の名前を呼んだら。
きっと、少し驚く。
でも——
もし自分が西村の名前を呼べなくなったら。
それは、どうなんだろう。
水野は少しだけ首を振った。
そんなこと、あるわけない。
そう思いながら教室に戻ると、隣から声がした。
「ねぇ」
水野は振り向く。
「なに?」
その会話は、今日も変わらなかった。
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