さつき

さつき

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青春 連載中 長編
春の入学式。隣の席になった西村と水野は、ごく普通に会話を始めた。 けれど、二人の会話には一つだけ奇妙な癖があった。 「ねえ」 「ちょっと」 「それさ」 二人はなぜか、互いの名前を呼ばない。 クラスメイトの名前は普通に呼べるのに、相手の名前だけが口に出ない。 理由ははっきりしない。ただ、名前を呼んだ瞬間に今の関係が変わってしまう気がして、どちらもその一線を越えられないまま三年間が過ぎていく。 体育祭、文化祭、修学旅行。 同じ時間を過ごし、同じ景色を見て、何度も隣に立つ。 距離は近いのに、言葉だけがほんの少し届かない。 からかいでも、駆け引きでもない。 ただ「名前を呼ぶ」というたった一つのことができないだけ。 それでも二人の会話は続く。 「ねえ」 その一言だけで相手だとわかるから。 けれど卒業が近づくにつれて、二人は気づき始める。 このままでは、ずっと“名前のない関係”のまま終わってしまうかもしれないと。 三年間、呼ばなかった名前。 三年間、つけられなかった関係。 これは、名前を呼べなかった二人の、 静かで少し不器用な恋の物語。
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文字数 8,920 最終更新日 2026.03.10 登録日 2026.03.08
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