あの人と。

Haru.

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本編

43 side.リディア

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 ──私は、どうすれば……



「母上!!!!!」

「レイ!!!!!」

 我が国の王太子殿下と……あれはたしかドラゴスニアの王太子殿下……

 バタバタと部屋へ入ってきた方々に、希望の光が見えたようでした。
 たしかドラゴスニアの王太子殿下は魔法に長けたお方。我が国の王太子殿下も魔法は得意でいらしたはず……


「お願いします!!! ダグラスを、ダグラスの治療をお任せできませんか!!!!!
ユキ様の想い人なのです!!!!」

 いてもたってもいられず無礼とは承知の上で殿下方に必死に頼みました。後ほど処罰されるされることとなっても構いません。ダグラスが助かるならば……!

 申し訳ありません、ユキ様。このような形でユキ様の想いを晒す形となってしまいました……


「なにっ……?! ローレンツ、頼めるか?!」

「ああ、勿論だ。
サイード! お前達はあいつらを捕縛しておけ!」

「はっ、かしこまりました」

 ドラゴスニアの王太子殿下は連れてきた護衛達に第3王子達の捕縛を命じるとダグラスの元へ駆け寄り、直ぐに治癒魔法をかけ始めました。

 ああ、これでダグラスは助かる……

 私は直ぐにもユキ様に魔力回復魔法をかけねば……この魔法はかなり魔力を消費する上にかなり複雑です。
 失敗は許されません。心してかからなければ……

 1つ深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから魔法を構築します。

 第1段階魔力放出孔封鎖……完了

 第2段階魔力回路修復……完了

 第3段階魔力循環機能修復……完了

 第4段階魔力回復促進……完了


 ……よし、ユキ様に魔力が満たされ始めました。ここまでくれば魔力欠乏の心配はありません。
 しかしやはりこの魔法は魔力が随分と吸われますね……! 

 ですがここでやめるわけにはいきません。あとは封鎖した放出孔を解放し、ユキ様の体力回復を促進すれば終わりです。
 ……まぁその体力回復促進に1番魔力を使うのですが。

 少々魔力が足りるか心配になると、ユキ様に当てた手にどなたかの手が重ねられ、魔力が送られ始めました。

 どなたかと思い、その手の持ち主を確認すれば王妃陛下でした。

「俺の魔力も使え。いくらでもやる」

 ……ここはお言葉に甘えましょう。
 さあ、残りを一気にかけますよ。

 第5段階魔力放出孔解放……完了

 第6段階体力回復促進…………完了

 くっ……! やはり最後で魔力が随分と取られました。
 しかし、魔法は成功しました。これでユキ様が魔法を使えなくなるような事態にはなりません。
 ……よかった……

「っはぁ……おわった、か? これかなり魔力取られるんだな……」

「ご協力ありがとうございました。正直1人では最後まで魔力がもっていたかどうか……本当に助かりました」

「いや、いいんだ。ユキのためだからな。
……これでユキはもう安心なんだよな?」

「はい。なにも心配はございません。あとはお目覚めを待つだけでございます」

「ならあとはダグラス、だな……」

「はい……」

 ダグラスはどうなったのでしょうか?

 ダグラスがいる方を見れば、丁度そちらも魔法をかけ終えたようです。

「よし、これでもう安心だ。あとは目が覚めるまで寝かせておけばいい」

 よかった……ダグラスも無事なようです。本当に感謝の念が絶えません。

「本当にありがとうございました……」

「いや、元はと言えばこちらの者がやったことだ。こちらこそこんな目に合わせてしまい申し訳無い」

「いえ、ユキ様の想い人ををお救い頂き本当にありがとうございました」

「なぁリディア、そのダグラスがユキの想い人って本当なのか? この前ユキが俺らに会いに来た時のやつだろ?」

「……はい、事実です。あの日ユキ様はご自身の想いに気づかれたご様子でしたが、それ以前から私はユキ様の想いに気付いておりました」

「ん? なんでだ?」

「その、ユキ様から以前、ご相談を受けたのです……抱きしめられる腕への感じ方に差があるのはなぜか、と……もっとも安心感があるのはダグラスだと仰っていましたので……」

 ユキ様、重ね重ね申し訳ありません……口止めされていましたのに……

「あー、確かにそれは誰が聞いたってダグラスに気があるとしかとれないな」

「はい……すみません、このお話をしたことはどうか内密に……ユキ様には王妃陛下や国王陛下に言わないように、と言われているのです……」

「ん? ああ、なんだユキはそんな風に思ったのが俺たちに悪いって思ったんだな! ははっ、そんなこと気にしなくてもいいのにな。
わかった、今の話は聞かなかったことにしとくよ」

「寛大なお心痛み入ります」

 

「それにしてもまさかユキがダグラスのことを好きになるとは……ラスはこれで本格的に失恋、だな」

 王太子殿下が楽しそうにおっしゃいました。

「なんだ、ラシルドは神子が好きなのか?」

「ああ。出会って早々求婚して一度振られている。それでも諦めないと言っていたが……ま、望みはないだろうな」

「くっくっく……あいつも恋をするようになったか。初恋はあっけなかったな」

「面白いからラスにはユキがダグラスを好きなことは言わないでおくか」

「まだしばらくは初恋に浸らせてやると……くっくっく、後になればなるほど失恋の傷は深くなるだろうに、お前も悪趣味だな」

「諦めないと言っておきながら行動に移さんあいつが悪い。実際にあいつがユキに会ったのは一回だけだ」

「なにやってるんだあいつは」

「ああ、本気で恋をしたことがないからどうしたらいいかわからない、とか言っていたぞ」

「くっくっく、それでモタモタしているうちに神子は他の男を好きになった、と。阿呆だな、あいつ」

「ああ、ただの阿呆だ」


「俺もラスはアホだと思うが今はそんなことよりもこの状況をなんとかしないとダメだろう」

 王妃陛下の言葉に殿下方ははっとなり周囲に指示を出し始めました。
 第3王子達は竜人用の手枷・足枷で拘束されていますね。あれは竜人の力を全て封じるそうですのでもう安心です。あ、第3王子の応急処置だけはされたようです。

「王妃陛下、此度のこと誠に申し訳ございません。
事後処理にあたり、暫くの滞在をお許しいただきたい」

「……許可しよう。ただし、此度の騒ぎの原因となった竜人達はそちらで抑えて頂きたい。処罰等はこちらで考えることになるだろうが、竜人を抑えるのは人間では心許ないからな」

「かしこまりました。寛大なお心痛み入ります」

「ああ。

レイ、ロイがどうなったかしらないか? 第3王子達の対応を任せてたはずなのにこっちに侵入させやがって……」

「ああ、父上なら竜人達によってかなり強力な拘束魔法がかけられていたようで、足止めをくらっていました。
ここに来る前にローレンツのとこの竜人を1人置いてきたので、今頃はもう拘束も解けて事後処理のために大臣達を集めているところではないでしょうか」

「それでか! はぁ……ま、終わったことはもう仕方ない。俺たちも事後処理に回ろう。

ラギアス、ダグラスを隊舎へ。
リディアはユキを頼んだ。
2人とも目が覚め次第報告するように。

あとは……廊下の壁、か……この部屋に一切傷が付いていないのは流石神子の間、ってとこだな。血は浄化すれば大丈夫だな」

 王妃陛下はそうおっしゃって一瞬で浄化魔法を部屋にかけました。ダグラスの血だまりや、飛び散っていた血痕がなくなり、もとのお部屋に戻りました。

「ん、これでよし、と。
じゃ、俺らはもう行くからユキを頼んだぞ」

「かしこまりました」

 王妃陛下方に続き、ダグラスを担いだラギアスも出て行き、部屋には私とユキ様だけが残されました。……いつのまにか倒れていた騎士達がいなくなっているのは竜人の方々が対処してくださったのでしょう。

 さて、これで今回のことはとりあえず一件落着、ですかね。事後処理等は陛下方にお任せして私はユキ様を休ませなければ。


 ……ユキ様がダグラスをお好きだということを口止めするのを忘れました。
 ……大丈夫、ですよね……? 言いふらされたり……しませんよね……?
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