あの人と。

Haru.

文字の大きさ
116 / 396
本編

113 side.ダグラス

しおりを挟む
 やりすぎた……

 昨晩、俺の服を着ているユキの可愛さにやられ、暴走すまいと堪えていた俺に拘束バインドをかけて一度発散させてくれたユキの健気さに、気分があまりにもあがってしまった。

 俺のために頑張ってくれたユキを今度は俺が気持ち良くしてやろうと張り切ったらやりすぎたんだ……断じて抱き潰そうとしたわけではない。

 前に風呂場でしてくれた時は、すでに前夜に致していたから流石に最後まではしなかったが、今回はそうではなかったからつい、な。

 まさかこんな……こんなに熱を出すなど……

 くそ、昨日の俺に今すぐやめろと言ってやりたい……!

 俺とユキでは体格も体力も何もかもが違うとわかっていたはずなのになぜ加減をしてやらなかったのか……ユキは俺を許してくれたが俺は自分が許せない。

 辛そうに眠るユキに何かできることを、と思うが正直こんな時役に立つのは俺ではなくリディアだ。俺にできることが少なすぎる。ほぼ無理を言って休みを取ったが意味はあったのだろうか……


「朝食はよく食べられましたが……昼食はどうでしょうね」

「……食べられないかもな」

 ユキは朝は俺も驚くくらいの量を食べた。まさかリゾットを2杯丸々食べるとはな。いつもなら一杯か多くとも一杯半ほどなのだが。

 それから熱が上がることを予想すると、治癒師もそうだろうと言った。これからまだ熱が上がるとしたら昼頃には食欲がなくなっているかもしれない。

「ふむ……夜も食べられないようならばその時は栄養満点のお飲物をご用意いたしましょう。もしかすると治癒師から栄養剤を投与される可能性もありますが」

「そうだな……」

 すまない、ユキ……

「まったく……そんな辛気臭い顔をしていたらユキ様が起きられた時に気を使われるでしょう。自己嫌悪に浸るのは構いませんがさっさと切り替えなさい」

 たしかにそうだ。

「……なら俺に何かできることはないか」

「知りませんよそんなの。ユキ様が起きられた時にお身体を支えるくらいでは? できることなど自分で見つけなさい」

 ……手厳しい。だがあまりにも正論で言い返せない。

「……少し頭を冷やしてくる」

「どうぞお好きに」

 少し素振りでもして頭を冷やそう。一度頭の中をリセットして冷静になれば何か思いつくかもしれん。少なくとも今よりは冷静な思考ができるようになるだろう。

 ユキが心配だからすぐに終わらせて戻ってこよう。







「は? ユキがベッドから落ちた?」

 いくらか頭を落ち着かせて戻ったところでリディアが告げた。

「ええ……打ってしまわれたところには治癒魔法をかけましたが……どうやらお手洗いにいこうと思われた際に私どもが寝室にいなかった為に自力でいこうとされたようで……」

「それで力が入らず落ちた、と……」

 しまったな、離れなければよかった。手洗いなどいくらでも俺が連れて行ってやったのに。

「すみません、近くに気配があればゆっくり休めないのではと、寝室から離れたのが失敗でした」

「いや、俺も部屋から離れていたからな……」

 リディアを責めることなどできない。元はと言えばユキの現状は俺のせいだしな。悪いのは俺だ。

「私どもはなるべく寝室でいた方が良いかもしれません」

「そうだな。扉を何度も開けては音がうるさいだろうから最初から開けておこう」

 ユキは扉が開いていても眠れるようだからその方がいいだろう。万が一寝室から出て部屋にいても、扉が開いていたら音でわかるだろうしな。

「それがいいでしょう」

 2人で音を立てないようユキの寝室の扉を開けて固定し、中へ入りそっとユキを見守る。

 苦しそうだな……熱も少し上がってきている。これだと頭も相当痛いだろう。

 ユキは眉根を寄せており、息も僅かに荒かった。額にそっと手を当てれば朝よりも少し熱く感じる。

「リディア、器はないか」

「器? どれくらいのです」

「水を溜めて額に乗せるタオルを冷やせるくらいのだ」

「ございますよ」

 リディアに器を用意してもらい、そこへ魔法を使って氷と水を出す。

「タオルもどうぞ」

「ああ、すまない」

 器をサイドテーブルへ置き、あまり音を立てないように浸したタオルを固く絞ってユキの額に乗せた。そのままゆっくりと頭を撫でていれば少しだけユキの表情が和らいだ。

 よかった、少し楽になったか……

「できること、あったではないですか」

「そう、だな……」

 これくらいしかできないが少しでも辛さが和らいだのなら嬉しい。




 昼にユキを起こした時、案の定ユキは食事を取れなかった。また熱が上がっているようで抱き上げれば相当な熱を感じた。そろそろ治癒師を呼んだ方がいいのではないか。

 寒いと言ったユキに冬用の寝具をかけ、ようやく暖かくなったと再び眠ったところで治癒師を呼ぼうとすれば、その前にユキが再び寒いと起きてしまった。

 ユキは寒いと身体を縮こめ、ガタガタと震えている。しかしこれ以上寝具を増やせば息苦しくなるためかけられない。

 ならばと俺が掛布の中へ入り、ユキを抱きしめれば暖かいと、安心したように眠った。

 ユキから伝わる熱は随分と熱い。これは危険なのではないか。

「リディア、治癒師を」

「もう呼びました。すぐ来るそうです」

 流石リディアだ。仕事が早い。

 熱いユキの身体をさすってやりながら待てば治癒師は本当にすぐにやってきた。

 僅かに掛布をめくり、素早く診察していく治癒師。しかしやはり寒かったのか診察が終わって掛布が戻された途端にすり寄ってきたユキをそっと抱きしめ、隙間ができないよう掛布と毛布でくるんでやる。

「ふむ……解熱剤を投与した方がよろしいですね。構いませんか?」

「許可を取らねばならないような危険があるのか?」

 治癒師が使う薬は安全なものばかりでそんな危険が伴うなど聞いたこともないが……流石に用量や使い方を誤れば危険もあるだろうが。

「いえ、用量さえ守れば危険なことはございませんが、針を刺すことになりますから。神子様のお身体に治療とは言え針を刺すなど、と申されては何もできません」

「それならばかまわん。はやくユキを楽にしてやってくれ」

 正直なところユキの身体に針など刺したくはないが、このままではユキが辛い。針の痛みより苦しみの方が辛いだろう。針の傷は治癒師かリディアかに後で治させればいい。

「では投与いたしましょう。神子様の体重はお変わりありませんか?」

「ええ、前の報告の時と変わりません」

「ならば用意していた分で大丈夫ですね。ダグラス殿、神子様の腕を」

「ああ」

 なるべく寒い時間を減らしてやれるように掛布の中で先に袖を捲ってから片腕を治癒師に渡せば、さっと消毒をして素早く解熱剤は投与された。針の跡は言うまでもなく治癒師が治癒魔法で綺麗さっぱり治した。

 これでユキの辛さは少しマシになるだろうか……

「昼食は食べられましたか?」

「いいえ、食欲がないようで……」

「ふむ、ならば栄養剤をと言いたいところですが、少し様子を見ましょう。解熱剤を投与したことで少し回復なさるかもしれませんし、ご夕食も食べられないようでしたらにいたしましょう。それまでも数回ご様子を診に参ります」

「ええ、ありがとうございます」

「何か異変がありましたらいつでもお呼びください」

 夕食か……食べられるといいのだが……


 少しでもユキが回復してくれることを願いつつひたすらユキを撫で続けた。
しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

処理中です...