あの人と。

Haru.

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After Story

抱えているもの

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 暖炉前でイチャイチャと過ごした日から早1週間。レイのお手伝いも再開して元気に日々を送っています。ちなみに現在はお手伝いの休憩中。

「う~ん……」

「どうした、唸って」

「んー……気になること? があるというか……」

 うん、気になること、だよね。

「何かあったのか?」

「僕ではない、んだけどねぇ……」

「ダグラスか?」

「ううん、ラギアス」

「浮気か?」

 そう言ってニヤリと笑ったレイ。ラスも楽しそうな表情をしてらっしゃいます。

「違うっ! 僕が浮気なんてできるわけないでしょ?!」

 滅多なこと言わないでよ! ほら見てよダグの視線が一瞬ギラッてなったよ!! お仕置きされたらどうしてくれるのさ……あの日は……うん……思い出したくない……

「くっくっく……まぁそうだな。ユキがダグラス以外を好きになるなど万に1つもないな」

「でしょ? もうほんとダグってかっこよすぎるよね。ダグの好きじゃないところなんて見当たらないし」

 えっと、その、えっちの時に意地悪になるのも、嫌いじゃないです、よ? あ、ああいうのが好きってわけじゃないけどないけどその……僕を痛めつけようとか苦しめようとしてされるわけじゃないし、意地悪の中にも優しさを感じるから……なんてね。

「ユキー、惚気はいらないよー。ラギアスのことじゃなかったの?」

「じゃあ惚気はまた今度で。リディアあんまり聞いてくれなくなったからものすごく言いたい」

 前はお風呂とかで気が抜けてついつい惚気ちゃったりして、リディアも聞いてくれてたんだけどね、もうお腹いっぱいですって止められるようになっちゃったんだよ。今まで言えてたのが言えなくなって……! どれだけダグがかっこいいかを語りたい……!

「ユキ、どんどんオープンな性格になってきたね。前だったらいちいち顔を赤くして照れてたのに」

「もう僕の中に溜まりすぎて吐き出さないと爆発しそうなの……! ダグがかっこよすぎるのが悪い……!」

「あー、はいはい。また今度ね」

「絶対今度聞いてもらうからね?!」

 しまった、って顔してももう遅いよ! 絶対今度捕まえて散々惚気るから!!

「あー……とりあえずラギアスのことで何かあるなら聞くぞ」

「あっそうだった。んー、多分ラギアスに何かあったのかなぁ? 最近なんかちょっと様子がおかしいというか……ふとした時に微妙に顔を顰めたりしててね……せっかく増えてた笑顔も少なくなったんだよね」

 なにか思い詰めたような感じで顔を顰めるの。すっごく心配です。

「ふむ……」

「僕の護衛の騎士さん達と何かあったのかなって最初は思ったけど、そういうわけでもなさそうなの。兵舎で何かあったのかなぁ……」

 護衛の騎士さんとぎこちない様子はないの。ラギアス以外の騎士さんに変だなって思うこともないし。ダグも気にかけておくって言ってくれたんだけど、ダグってもう兵舎で暮らしてるわけじゃないから夜とかに何かあってもわからないし……

「他の騎士には聞いたのか?」

「ううん、まだ。他の騎士さんが気付いてないとして、ラギアスがそっとしておいて欲しいって思ってたら……周りに聞いてまわるのは悪いでしょ?」

「たしかにね。んー、でも、誰かに聞かないことにはしょうがないよね。周りへの聞き込みがダメなら本人に聞くしかなくない?」

「ラギアスにかぁ……教えてくれるかなぁ……」

 出来れば僕でも役に立つなら頼って欲しい、けど……どうかなぁ。前は信じたい、って言ってくれたけど今回も信じて相談してくれるかどうか……たしかに頼りないだろうけど、悩みって誰かに聞いてもらうだけでも楽になったりするし、話だけでも聞かせてくれないかな?

「ユキの思い切りの良さは長所だと私は思っている。1度突撃してみたらどうだ。放っておくっていう選択肢はユキの中にないのだろう?」

「……うん、たしかにそう、だね。うん、1回ラギアスに聞いてみる!」

 たしかに放っておくって選択肢は最初からない。明らかに何かありそうなのに何もないって言われたら今度は周りに聞いたりしよう。何か動かなくちゃ次にどうしたらいいかわからないし、グダグダしてたらそのうちにラギアスはどれだけ苦しむかわからない。うん、頼ってくれないかもってうじうじするくらいなら当たりに行こう!!

「ああ、いい表情になった。それでこそユキだ。今夜にでも行くつもりだろう? 私も力になれることがあるなら協力するから何かあれば言うといい」

「俺も俺も!」

「ありがと!! 何かあったら頼らせてもらいます!」

 レイとラスも力になってくれるなら心強い! 早速今夜突撃だ!!







 夜、ダグを引き連れてラギアスの部屋へ向かった。ラギアスは突然の訪問に困惑しながらも迎え入れてくれましたよ。ダグに椅子を二脚持ってきてもらったから今日は3人とも座れます。ちなみにミニテーブルもセット済み! リディアに用意してもらったリラックス効果のあるお茶も置いて準備完了! ラギアスのお悩みを聞き出します!

 ラギアスは困惑したようにお茶と僕とダグに行ったり来たりと視線を巡らせていたけど、僕とダグがなんでもないようにお茶を飲み始めるとラギアスも同じくそっと飲み始めた。

「ラギアス、単刀直入に聞くね。ラギアスは、今何か悩みごとを抱えてない?」

「なんのことですか」

「……僕じゃ頼りない?」

「頼りないとかではなく、悩みなどありません。ご心配をおかけして申し訳ありません」

 聞いてくれるな、とでも言うように切り上げようとするラギアス。本当に聞いて欲しくないのならば僕はこれ以上何も言わずに去るべきなのだろう。でもラギアス、知ってる? ラギアスは何かを耐えようとする時、自分の右手を左手でぎゅっと押さえるんだ。無意識なのかな? 助けを求めないためなのか、手を出さないためなのか、僕にはわからないけれど……やっぱりラギアスは何かに苦しんでいるんでしょう? 僕はこのSOSサインを見逃すわけにはいかない。

 そっと立ち上がってラギアスの横へ行き、かがんで硬く握られた手を包んで優しく優しく撫でる。

 まったく、爪が食い込んでるじゃんか……少し血も出てる。こんなに力一杯握ったら痛いでしょ?

「ユ、ユキ様……」

「ラギアス、僕はね、ラギアスが初めて笑顔を見せてくれ時、本当に嬉しかったんだ。すっごく周りを警戒してたラギアスが、漸く肩の力を抜ける存在になれたんだって、すっごく嬉しかった。でも……最近、ラギアスから笑顔が消えちゃった。その代わり、苦しそうな表情を見るようになった」

 じっとラギアスの瞳を見つめてゆっくりと伝える僕はラギアスの瞳が一瞬揺れたことを見逃さなかった。

「僕はたしかに頼りないかもしれない。実際ラギアスが抱えてることを打ち明けてくれても、僕が力になれる保証はない。でも、僕はそれでも、ラギアスの味方だよ。ラギアスが何を抱えていたとしても、僕は味方になるよ。僕はラギアスの笑顔がもう一度見たい。そのためならなんだって力になる。ねぇラギアス、ラギアスが抱えていることを、僕にも背負わせて?」

「俺も背負おう。お前のことは俺の大事な部下以前に勝手に友人だと思っている。何を悩んでいるのかは知らないが、言うだけ言ってみろ。それにユキはお前が打ち明けるまで居座るつもりだぞ」

 ダグラスさんよくお分かりで。僕はラギアスが助けを求めてくれるまで何時間でもここにいるつもりです! ラギアスを友達って思ってたのは知りませんでしたけども! ずるいよ、僕だってラギアスと友達になりたい!!

「ラギアス、誰かに悩みを打ち明けるだけでも、楽になることもあるよ。僕はラギアスが1人で悩んでいるのを見ているのは辛い。ラギアスだって誰かに頼っていいんだよ。助けを求めていいんだよ。それとも僕は……信じられないかな?」

「いえ! ユキ様が信じられないなど……!」

「なら、聞かせてくれないかな? 僕を、僕達を頼って?」

「……わかり、ました。お話し、します」

 僕が退かないと伝わったのだろう。ラギアスの肩から力が抜けて、漸く話す体勢になってくれた。

 ここからが、勝負だ。
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