あの人と。

Haru.

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After Story

期待

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「ユーキ!」

 今日はヴィルヘルムへ帰る日。そろそろ出発かと思った頃、サダン君が現れた。どうやら僕に内緒で連れてきてくれたらしい。最後に会えて嬉しいです。

「サダン君……見送りに来てくれたの?」

「当たり前だろ! ……俺、絶対そっち行くから。だから待っててくれ」

「うん、待ってる。ラギアスも待ってるよ」

「ばっ、ラギアスは関係、ない、し……」

 あれれ、思ってた反応と違った……? なんだか満更でもなさそうな……ううむ、これは……これはもしかするともしかするかもねぇ……そうなると僕の事情で引き離してしまうのは申し訳ないなぁ。

 ちなみにラギアスとは一応こっちに残りたいかどうかは話し合い済みです。でもラギアスは真っ直ぐな目で迷うことなく、

「俺の主人はユキ様だけです。ユキ様の行かれるところへ着いていきます」

って言ったの。サダン君のことはいいのかって聞いたら二度と会えないわけではないしいつか向こうが来ると僕に約束しているからそれを信じるんだって。自分の想いが変わることはないから気長に待つって言ってた。まだ若いから勢いで決めて欲しくないとも。

 ……純愛だなぁ……狼の獣人が一途って本当なんだね。僕、死ぬ気で応援するよ!! 協力は惜しみません!!

 そういうわけで、まだ付き合ってるわけじゃないけどラギアスとサダン君は遠距離的な感じになる。僕とサダン君が文通をするから、それを通じてラギアスも一緒に……とか思ってます。

「と、とにかく! ユーキは待ってろ! 俺がいないって寂しくて泣くんじゃねぇぞ!」

「ふふ、うん。サダン君を信じて気長に待つね。あ、ラギアスと2人で話してきていいよ?」

「う、いや……そ、そうだな、世話に、なったし……? 最後にお礼くらい、な!」

 しどろもどろなサダン君は見ていて微笑ましくて、なおかつちょっと楽しいです。

「ラギアス、2人で話しておいで。寝室使っていいから」

「ありがとうございます」

 2人が寝室に入っていったのを見送り、僕はお茶をくぴり。聞き耳をたてるなんて野暮なことはしないよ! だって僕もダグと2人でイチャイチャしてるところを聞き耳立てられたくないもん。

「ユキ様、そろそろヴェールを」

「はぁい」

 お茶を飲み終わったところでリディアにヴェールを被せてもらい、薄手のローブを着たら準備は完了。ヴェールのレースが豪華になったのとローブのフリル感が増したのは気のせいだと思いたいです。

「大変よくお似合いですよ」

「……むう」

 フリフリなのがなぁ……

「可愛いぞ」

「ならいいや」

 僕がちょろいのは相変わらずです。ダグにどう思われるかが僕にとっての1番なんだもん。リディアの呆れた視線は気にしない気にしない。

 今日も今日とてかっこいいダグに飛びつき、そのまま抱っこしてもらえば大好きな金色が優しく輝いているのがよく見えた。幸せだなぁってしみじみ思ってぎゅうっと首に抱きつけば優しいキスが降ってきて。僕幸せ!!

 ダグにグリグリと抱きついて幸せな気分に浸っているうちにサダン君とラギアスは戻ってきた。なんだかサダン君の顔が赤い……? 何かあったなぁ、とは思うけど大人な僕は何があったのかなんて野暮なことは聞きません。

「ではそろそろ出発しましょうか」

「はぁい」

 僕を抱き上げて手が塞がってるダグにローブのフードを被せてあげて、最終準備はおしまいです。僕がダグに抱き上げられたままなのは対人恐怖症をちょっとでも和らげるためだよ。これからコルンガの騎士さん達に囲まれるからねぇ……ちょっと不安だから僕の最大の精神安定剤のダグとひっついておくのです。療養中のためあまり動かないように、っていうのが表向きの建前です。


 部屋を出て、周りをあまり見ないようにダグにしがみついているうちに飛竜の元へ着いた。飛竜は来た時と同じ場所に用意されていて、近くにはマスルール様達もいた。

「神子様、我が国へお越しいただきありがとうございました。是非また機会がございましたらお越しください」

「こちらこそ、ありがとうございました。……迷惑もおかけしてしまって申し訳ありません」

 せっかく計画してくださったのに、結局問題が起きて帰国になっちゃったからなぁ……まだ後処理とか残ってそうだし本当に申し訳ない。

「いえいえ、迷惑などと。神子様の満足いく結果にならなかったことが申し訳ないくらいです。しばらくはどうかゆっくりとお身体を休めてください」

「そうします」

「では、どうか道中お気をつけて」

「はい。本当にありがとうございました」

 最後にサダン君にもお礼とお別れの挨拶をしてから飛竜に乗り込み、コルンガの騎士さん達と共に僕達はヴィルヘルムへと飛び立った。


 ダグにもたれかかって若干うつらうつらとしながらお喋りをし続けて数時間後、飛竜の速度が落ちてどんどん降りて行っていることに気付いた。

「着きましたよ、ユキ様」

「へ? ……早くない?」

 行きはもっとかかったと思うんだけど……一体どういうこと??

 頭にはてなを浮かべつつ、周りが何も違和感を覚えてない様子だったから間違ってないのか、と促されるままに着陸した飛竜から降りてみると……

「久しぶりだね、ユキちゃん」

「お義父さん!? あれ、お義母さんも! え、どうして?」

「ふふ、驚いているね。さぁ、疲れただろう? 屋敷に案内しよう」

「えっ、えっ……」

 狼狽えてるのは僕だけで、お義父さんは楽しそうに笑って僕の手を取りそのまま優しく引っ張っていく。ダグはポンポンと僕の頭を叩いて横に並び、僕の反対の手を取った。2人に挟まれながら首をかしげる僕はまだまだ状況を把握できず、とりあえず促されるままに歩いた。

 案内された部屋で僕はダグと並んで座り、向かいにはお義父さん達が座った。すかさずお茶を出してくれたのはヴェルナーさんだ。優しい香りのするそれをゆっくり飲み、ホッとしたところでお義父さんは口を開いた。

「少し落ち着いたかな? 留学が短くなってしまった代わりに少し息抜きを、という話になってついでだからうちの領地に来てもらうことになったんだ。一度ここも見て欲しかったからね」

「あ……ここ、リゼンブル領……?」

「そういうことだよ。ちなみにコルンガの騎士はここまででコルンガに帰って、ここから城へ帰るときはヴィルヘルムの騎士がこっちへ来る。数日はここでゆっくりできることになっているから、好きに過ごしていいからね」

 好きに過ごす……リゼンブル領で……好きに……

 リゼンブル領ってことはつまりダグの生まれ育った場所ってことで。このお屋敷もダグの実家ってことで。こ、これはダグの生まれ育った場所を探検しなければ……!!

 そ、それに……!! 実家なら……!

「ダグの幼い頃の絵姿とかありますか!?」

「ああ、あるよ。見るかい?」

「ぜひ!!」

 やったぁ!! ダグの小さい頃……嬉しい……ずっと見てみたかったんだよ。なんでこの世界には写真がないのって何度思ったことか……これでダグの小さい頃が見れる!

 ソワソワしだした僕のためにお義父さんは絵姿を飾ってある部屋へとすぐに案内しようと申し出てくれて、僕はダグと手を繋いでルンルンとお義父さんについていった。

「……そんなに見たいか?」

「見たい! 絶対可愛いもん!!」

 こんなかっこいいんだから、小さい頃から顔が整っていたのは間違いない。子供らしさのあるダグなんて可愛いに決まってるよ! 食い気味で答えた僕に乗り気じゃなかったダグは微妙そうな顔をしつつも僕を止めることはなく、僕のテンションは高いままでした。
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