あの人と。

Haru.

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After Story

悩殺

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 優しくて強い僕の旦那様にぎゅぅうっと抱きつき、いつか僕も強くなるぞ、と決意したらばっと離れてちゅっと一瞬触れるだけのキスをする。擬音ばっかりだとか気にしない!

「僕頑張る!」

「……あまり頑張り過ぎるなよ?」

 一瞬きょとんとしたダグが苦笑してそう言い、僕の頭を撫でてくるのにすり寄ってエネルギーを補給! 気合は十分ですよ!!


 そのあとはまたお屋敷の案内を再開してもらった。ついでに温室もぐるっと1周して軽く植物を眺めました。

 2階はダグの部屋とお義兄さんのお子さんの部屋とお客さん用の部屋がいくつかと音楽室とあの肖像画の部屋、談話室などなど……音楽室にはピアノが置いてあったから今度弾かせてもらおう。ヴァイオリンとかは個人で管理してるらしくて音楽室にはなかったよ。

 肖像画の部屋ももう一度見たかったんだけど、ダグに止められました。なんでってちょっと不満げな視線を向けると……

「俺のことを忘れて絵に夢中になるだろう」

……だって! ちょっとむすっとした表情で確信しました! ダグったら絵にまで嫉妬してるんですよ! もうもうもう、僕のダグ可愛い!! ダグの絵だから夢中になるのに! ダグの可愛さに悶えそうになった僕はダグを構い倒したくなって少し屈んでもらって頭をわしゃわしゃと撫でてからちゅーっとキスを贈った。そうしたら嬉しそうに笑ったダグも可愛すぎて危うくエンドレスになるところでした。

 3階はお義父さん、お義母さん、お義兄さん、お義兄さんの奥さんのお部屋とか書斎とかとかプライベートな部屋ばかりが集まってるんだって。僕なら好きに行き来しても怒られないって言われたけどそんないきなり突撃したりしないよ!

 ちなみにそれぞれの階に使用人さん専用のスペースもあって、そこで使用人さん達が休憩をとったりするんだって。だから僕たちはそこへ立ち入らないのがマナー。だって仕える相手がいたら休めないもんね。僕もそこは近付かないようにします。



 一通り回ったら体力皆無の僕は疲れちゃって最終的にダグに抱えられてダグの部屋へと戻った。戻るとちょうどお昼時で、リディアがご飯を用意していてくれたのでダグに食べさせてもらいました。

 好奇心も満たして食欲も満たせば、今の僕に残るのは疲れと睡眠欲で。これはもう寝るしかないと暖かい午後の気温も相まってダグにしがみつくようにあっという間に眠りについたのでした。


 目が覚めたらもうすぐおやつ、という時間だった。僕は仰向けに寝転んだダグの上にうつ伏せに寝かされていて、ダグはそのまま頭の下へクッションを敷いて本を読んでいた。僕がいるから完全に腕を浮かせていて、僕だったらすぐに疲れて読むことを断念していそうな体勢です。

 本を読むダグがかっこいいなぁ、とぼんやりと眺めていると、身動いだことで僕が起きたことに気づいたダグが本を置いて僕を抱きしめて起き上がった。

「おはよう、ユキ」

 甘い微笑みとともにキスをされて僕は悩殺されましたよ。

「……おはよ、ダグ」

 僕からもキスを返して抱きつけば今度は深くて甘いキスをされました。寝起きで力が入らなかったことも相まって腰がすっかり抜けましたよ!! そんな僕をダグは可愛い可愛いと撫でくりまわしてきて恥ずかしいやら嬉しいやらで無言になるしかありませんでした。

 顔が熱いなぁ、と思いながらダグから構い倒されているとリディアがやってきた。僕とダグか甘い空気を出しているときに現れるなんて珍しいです。

「ユキ様、マリオン様がお茶をご一緒にどうかと。出来れば奥方様もご一緒したいとのことですが」

 なるほど、それを伝えにきたのか。お義兄さんの奥さんには会ってみたいし……

「……ん、わかった。リディア、用意をお願い」

「かしこまりました」

 パパッと髪の毛と服を整えてもらい、準備が完了したらダグに抱き上げてもらって出発です。



 お茶会の会場はお義兄さんの部屋だった。リディアがノックして、許可が出てから入ればカウチにはお義兄さんと真面目そうな切れ長美人な人が座っていた。多分美人な人がお義兄さんの奥さんだろう。

「やぁ、ユキちゃんにダグラス。座ってくれ」

「はい」

 ダグにカウチにおろしてもらい、ダグも隣にぴったり寄り添って座ればお義兄さんはにっこりと笑って僕たちを見た。

「今日もラブラブだね」

「えっと、はい」

 ちょっと照れちゃいます。

「仲が良いのはいいことだよ。ユキちゃん、隣が妻のクレアだ。……怖くはないかい?」

 奥さんはクレアさんというらしい。綺麗な名前でものすごくしっくりきます。お義兄さんから気遣わしげな視線を向けられてクレアさんを見てみるけれど、うん、怖さは感じない。多分視線から僕を気遣ってくれているような雰囲気を感じるからかな? 一見生真面目で少し気も強そうに見えるけれど優しい方なんだろうなぁ、としみじみと思う。

「大丈夫です。よろしくお願いします、クレアさん」

「……よろしく。ユキと呼んでも?」

「はい!」

「ありがとう」

 ふ、と一瞬頬を緩めたクレアさんに思わず見惚れてしまいました。だってすごく綺麗だったんだもん。クレアさんはキリッとかっこいい系のモデルさんみたいで美しいって言葉が本当によく似合うのです。そんなクレアさんの微笑みはもう殺人兵器並みの破壊力です。

 また見たいけれど、多分クレアさんはあまり表情が動かない人なのだろうなぁ、と。だって今もまた無表情に戻っちゃってるもん。滞在中にまた見れたらいいな。

「なぁクレア、ユキちゃん素直で可愛いだろう?」

「そうだな。俺とは大違いだ」

「お前も可愛いよ」

「ふん、どうだか」

 ふい、とそっぽを向いたクレアさんの耳が赤くなっているのを発見して、もしかしてツンデレ? とつい見つめてしまった。だって僕の身近にもツンデレ属性いるもん。かなりツンの割合が高いけどね。誰とは言わないけど。

 ……お茶を出すときにリディアからにっこりと笑みを向けられたのは気のせいだよ、きっと、うん。気のせいだと思わせてください。

 ちなみにクレアさんをみるお義兄さんの視線は優しいです。ベタ惚れに違いないね。僕の周りには険悪なカップルがいなくて幸せです。

「そうやって素直じゃないお前も可愛いよ。愛している、クレア」

「……俺も」

 うわぁ、可愛い……いいなぁ、ツンデレってこういう破壊力があるよね。デレた時の破壊力がものすごいんだよね。常にダグにベッタリで甘々な空気を出しちゃうからツンな態度を取れないのです。ダグに可愛いって言われたら嬉しすぎて舞い上がって感情が全て出ちゃうもん。ツンデレだったらダグをもっと悩殺できるかなぁって思っちゃうのですよ。

「ユキちゃん、クレアも可愛いだろう?」

 デレッデレに嬉しそうなお義兄さん。そうだよね、そうなるよね。ツンデレ属性のデレは破壊力がすごいもんね。

「はい、クレアさん可愛いです」

 僕もクレアさんみたいにダグを悩殺したい! という感情を察したのかダグが僕の耳元へ顔を寄せまして。

「俺はそのままのユキが好きだぞ」

「ダグ……大好き!」

 ガバッとダグに抱きついてからまたツンデレできなかった……と思ったけどもういいや! だってダグへの想いを抑えるなんてできないもん! ダグもそのままが好きって言ってくれてるし僕はこれまで通り素直にダグへ感情を出していきます!

 それにね、ちらっと想像しちゃったのです。もしもダグからツンとした態度を取られたらって……悲しいです。かなり辛いです。僕が話しかけてもツンとして素っ気なくされたら僕泣いちゃいます……ダグに嫌われたって三日三晩は泣きます。僕がされたら嫌だから僕もしないのです! 
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