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当主の器
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しおりを挟む普通よりも少し大きな鴉は、彼が使役している忍鴉だ。
彼によれば、さっきの鴉はウルシという名前らしい。他にもクロやスミという名の鴉がいるらしいけど、俺には全く見分けがつかない。
あんまり聞いたことがないけれど、他の皆も使役している動物とかいるんだろうか。
俺も、何か小鳥でも飼ってみたいなぁ……なんて。自分の体の世話もろくにできないくせにって笑われそうだな。
「さぁ。みっ君の我儘は聞いたんやから、今度はみっ君が僕の言うことを聞く番やで?」
そう言って彼が俺の手に握らせたのは、白い包み紙と湯呑み。
「2人が来る前に、ちゃんと全部飲んでな?僕、きっちり見とるからな」
ニッコリ微笑むその目は「逃げるんやないで?」と、俺の目を射抜いた。
そのとたんに、ソレを持つ手がガタガタと震えだす。
俺はソレが、小さい頃からずっと大嫌い。毎日飲んでいるのに、全然慣れないくらい不味いから。不味いのを通り越して、飲んだら吐きそうになる。
ソレは白くて、苦い。それにザラザラした粉末だから、口の中に残って飲みにくい。俺が恐怖するソレの名は、薬。
「あーもー、早よう飲まんと僕が飲ませるでっ!」
「やっ、あ!」
「こら、小さい子供みたいに暴れんと大人しゅう……飲み込み!」
「ん、むむ……ゴクッ……はぁ、はぁ。うぅ、苦いぃぃ……うえぇぇ……」
「泣くほどかいな。情けないなぁ。まぁ、かく言う僕もお薬は嫌いやけど。お薬を飲まなあかんほど弱ったりせぇへんからなぁ」
結局、孤月さんが俺の顎をつかんで、無理やり薬と白湯を流し込んだ。
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