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いい湯だ、な?
10P
しおりを挟む「あ……すまん。僕、もう寝るわ。邪魔してすまんかったな、おやすみ」
鴉の足にくくりつけられた手紙を読んだ瞬間、孤月さんが顔色を変えて立ち上がった。
「早く行け――ングッ!?」
「うん、ありがとう。すみません。おやすみなさい」
おしゃべりが過ぎる影秋の口を手で塞いで、ガッチリ押さえる。全くしゃべらないか、余計なことまでベラベラしゃべり過ぎるか、2つに1つしかないな。
せっかく来てくれたのに、行ってしまった。登場から退場までが一瞬だったかのような体感。孤月さんのあの悲しそうな苦しそうな顔、心臓がギュッと握られたみたいに苦しかった。明日また会えたら、もう1度謝ろう。
これ以上孤月さんに傷ついてほしくないからとはいえ、とっさに影秋の口を手で塞いでしまうなんて、自分でもビックリ。
すぐに振り払われるとか、何かしらの抵抗があると思ったけれど、孤月さんが去るまで彼は大人しかった。そう。大人し、かった。
孤月さんの姿が見えなくなった瞬間、口を塞いでいる右手に激痛がはしった。顔を向けると、影秋の真っ白い歯が俺の右手に食い込んでいる。というか、鋭い八重歯が刺さってる!?
「ごめん、影秋」
俺は素直に謝って手を離すと、彼は無言でものすごい睨んできた。
いや、そんなに睨まれても、悪いのは影秋でしょうが。なんて言えるわけもないので、噛まれた右手に目をやる。
手の平と指に、影秋の歯形がくっきり。おまけに血が滲んできていて、つい笑ってしまうよ。右手は噛み傷、左手は切り傷なんてね。
左手の傷よりも痛い気がするんだけど。あぁ。治るのかな、これ……
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