忍びゆくっ!

那月

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いい湯だ、な?

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「あ……すまん。僕、もう寝るわ。邪魔してすまんかったな、おやすみ」


 鴉の足にくくりつけられた手紙を読んだ瞬間、孤月さんが顔色を変えて立ち上がった。


「早く行け――ングッ!?」


「うん、ありがとう。すみません。おやすみなさい」


 おしゃべりが過ぎる影秋の口を手で塞いで、ガッチリ押さえる。全くしゃべらないか、余計なことまでベラベラしゃべり過ぎるか、2つに1つしかないな。


 せっかく来てくれたのに、行ってしまった。登場から退場までが一瞬だったかのような体感。孤月さんのあの悲しそうな苦しそうな顔、心臓がギュッと握られたみたいに苦しかった。明日また会えたら、もう1度謝ろう。


 これ以上孤月さんに傷ついてほしくないからとはいえ、とっさに影秋の口を手で塞いでしまうなんて、自分でもビックリ。


 すぐに振り払われるとか、何かしらの抵抗があると思ったけれど、孤月さんが去るまで彼は大人しかった。そう。大人し、かった。


 孤月さんの姿が見えなくなった瞬間、口を塞いでいる右手に激痛がはしった。顔を向けると、影秋の真っ白い歯が俺の右手に食い込んでいる。というか、鋭い八重歯が刺さってる!?


「ごめん、影秋」


 俺は素直に謝って手を離すと、彼は無言でものすごい睨んできた。


 いや、そんなに睨まれても、悪いのは影秋でしょうが。なんて言えるわけもないので、噛まれた右手に目をやる。


 手の平と指に、影秋の歯形がくっきり。おまけに血が滲んできていて、つい笑ってしまうよ。右手は噛み傷、左手は切り傷なんてね。


 左手の傷よりも痛い気がするんだけど。あぁ。治るのかな、これ……


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