忍びゆくっ！

我慢と決意

２P

「今回の事が落ち着いたら、ちゃんと考えてみるよ。甘夏ちゃんは、誰かいい殿方でも決まったのかい？」


　俺が苦笑してそう問いかけると、彼女は一瞬目を逸らしたのちにまた俺に目を向けた。


　大きく息を吸い込み、１度止めてからゆっくり吐き出す。そして背筋をピンッと伸ばすと口を開いた。


「私、風霜光秋さんのことが好きです。友達としてではなく、正式に旦那様になってもらいたいという意味で」


「…………」


　俺の時が止まってしまって、唖然としているのをいいことに彼女はさらに続ける。


「光秋さんのことを想っているのは小夏も同じです。私も小夏も本気ですが、私は……光秋さんだけは、あの子に譲る気はありません。だからどうか、光秋さんも本気でお考えください。お願いいたします」


　ひ……ひえぇ。これはこれは、大変な時にとんでもなく大変な話になってしまった。


　ついさっきまで祝言だのお嫁さんだの全く考えることなんてなかったのに、今では俺のお嫁さん候補が２人もいる。


　それも、幼なじみの甘夏ちゃんと小夏ちゃんだなんて。


「小夏の気持ちを私が伝えてしまうなんて、知られれば確実にあの子に怒られます。だってあの子は、ずっと何年もこの気持ちを自分の中に閉じ込めていたんですから」


「な、何年も？」


「えぇ。７年前にはすでに気にしていたかと……ですが、私の方が光秋さんをお慕いしていると確信しています」


　今日の、というより今の甘夏ちゃんは逞しいというか、やけに積極的だ。普段は小夏ちゃんがいるから大人しくしているのか？


　本気で将来のことを考えているから、本当に俺のことを想ってくれているから、ここまでできるのかもしれない。