忍びゆくっ!

那月

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僕の居場所、存在理由

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 平仮名と漢字が滅茶苦茶に並べられて、しかも途中からは字が曲がってミミズみたいになっとる。


 文章の初めには“華神”、最期には“秋双兄”と書かれとる。ということは、僕達華神一族に宛てたみっ君からの手紙。


 でも、これじゃあ読めへんよ。みっ君は忍が使う暗号を教えられてはなかったようやし。なるほど?これは自己流やな。


 読む方法はあるはず。何か手がかりはないんか?みっ君の気持ちになって考えてみるかぁ。みっ君やったら……みっ君やったら…………あかん、わからんわ。


 考えれば考えるほど、みっ君の顔が思い浮かんで上手く集中できひん。この僕が、なぁ。


「何してんの?そんなに眉間にシワ寄せちゃってさ」


「ひぃやぁっ!?と、冬夜。監察に向かわせとったウルシが風霜光秋からの手紙を持って戻ってきてな……」


「手紙?」


 近くの町にいる知り合いの研ぎ師に預けとったた武器を取りに行っとった冬夜が、音も気配もなく背後に現れた。


 音も気配もないのはいつもの事やからええけど、登場の度に背後からフゥッと首に息を吹きかけるのはやめてほしいわ。背筋がゾワッてなる。


 悪びれた様子もなく僕の手から手紙を取り上げた彼は、首を左右に傾けながら「変なのー」って言っとる。


 まったく、冬夜は僕の双子の弟の癖に頭の中は丸っきりの子供。こんなんがよう新しい華神の当主になれたもんやわ。


 性格は最悪やけど、頭はええし腕の立つ忍なんよなぁ。この強さが“憎しみ”というただ1つの感情から来とるんやから、僕は時々怖くなる。


 いつもは鈴之宮の小夏ちゃんをさらにアホにしたような性格の冬夜。けどたまに、機嫌が悪くなると僕と同じ色の瞳が暗く氷みたいに冷たくなる。


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