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プロローグ
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しおりを挟むmoon child。直訳すると、月の子供。惑星である月が生命を生むのか?否。そうだと仮定されるだけであって、実際に彼らが月の子供だという確証はない。
何せ彼らは突然、何の前触れもなくこの世に生を受けるのだから。
1人目が発見されたのはもう10年ほど前か。シトシトと雨が降るある日の深夜。彼女は仕事帰り、全く人通りのない交差点の中央に真っ白いオブジェを見つけた。
漆黒の闇に溶け込むことのない、場違いすぎて深夜だということを忘れてしまいそうなほどの純白。
それは、とても巨大な鶏の卵のよう。身長162cmの彼女が見上げるその卵は、すでに割れていた。
真っ二つでもバラバラになっているでもなく、真ん中あたりに穴が開いていて中身は不在。雨に交じって何か、透
明でやや粘着質な液体がこぼれている。
彼女は仕事に疲れて夢でも見ているのかと思った。が、頬をつねればリアルな痛み。そして、卵の殻の後ろには足が見えた。
人間のものにしては白い、白すぎる健康的ではない2本の足が投げ出されていた。
恐る恐る近づき、その正体を茶色い瞳に映すと、もう1度頬をつねってそれが現実であることを確かめる。確かにそれは、彼女の目の前にいる。
見た感じ20代前半くらいの青年、全裸の青年が、卵の殻に背を預けたままうつむきぐったりしていた。
雨に打たせている肌はなるほど。もうずいぶん前からそうしているから冷たい雨ですっかり冷え、ここまで白くなったようだ。しかし、裸体か。
どうやらこの青年はこの巨大な卵から生まれた未知の生命らしい。彼女はそう悟った。
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