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月子の取扱説明書
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しおりを挟む「あ、カラスから電話だ。もしもーし?はいはい、今朝食中だよ。うん、大丈夫…………うん……了解、すぐに向かうよ。ありがと」
チユニのケータイが鳴ったその瞬間、8人の月子全員の表情が変わった。同時に彼女の方を向き、聞き耳を立てている。
ある者は真剣なまなざしを向け、ある者は今にも飛びかかりそうなほどにウズウズしている。皆、静かに彼女の言葉を待っているのだ。
やがてチユニは通話を切り、ユラからライトへと順に目を向け口元に笑みを浮かべた。
「皆で10番目の子を迎えに行こうか」
瞬間、7つの双眼と1つの眼は嬉々とした。
チユニの言葉の意味を瞬時に理解したから。彼らは少しも隠すことなく喜び、大いに騒いだ。そのすぐあと、食堂のヌシに一喝食らったことは言うまでもない。
彼らは食べかけの朝食を一気に胃の奥へと押し込むと、チユニが運転する大きな車に乗り込む。
運送用のトラックをとても頑丈なものに改造したもので、運転手にチユニ、助手席にライト、荷台に残りの7人という配置で発進。
車で移動の時は差別にならないよう、ローテーションで毎回助手席に座る人が変わるようになっている。彼らは皆、チユニのことが大好きだから。
「今回はライトだったね。そう遠くはないから大丈夫だとは思うけど、もし……ね、ハクトと代わるんだよ?」
「わかってますよ。ふふっ、相変わらず後ろからの突き刺さるような視線が痛いです。まぁ、もう慣れましたが」
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