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伍号
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しおりを挟む――さて。一方その頃のハクト。
「く、うっ……無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理っ!もう、やだぁっ!」
とかわめきながらも、奇跡的に残りのハウンドはこの場に留まらせている。というのも、残りのハウンド全部、ハクトを追いかけている。
全力疾走で逃げ回っているハクト。追う9体のハウンド、大変腹を空かせているようだ。獰猛な金色の瞳はギラつき、口からは汚いよだれを垂らしている。
一瞬でも止まってしまえばハクトは確実に食われる。それこそ一瞬で。
体力が月子で1番乏しいハクト。無慈悲にも、その時は刻一刻と迫ってきていた。止まるよりも早く、食われてしまう。
なぜならハウンドの群れが2つに分かれた。片方は先回りし、ハクトの逃げる先へ待ち伏せするようになったのだ。人間の子供以下の知能のはずなのに、有り得ない。
しかし実際、5体のハウンドが取り囲むように前方からハクトに飛びかかった。
「うわぁぁぁああぁぁぁぁ!もうだめだぁぁぁぁっ!!」
泣き叫んだハクトは止まるしかなかった。止まって、迫りくる死への恐怖に怯え震え、うずくまる。9体のハウンドが、一斉に飛びついた。
瞬間、ハウンド9体は空中で停止した。口を大きく開けたまま、体をいくつもの赤黒い棘で貫かれて。
「はぁっはぁっはぁっはぁっ……なん、ちゃって…………く、うっ……」
赤黒い棘はハクトの体から、外側に向けて飛び出ていてハリネズミのよう。彼は直前にナイフで首を斬りつけ大量の血を流していた。
食われる前に攻撃はできた。が、致命傷を与えただけで倒せてはいない、1体も。
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