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柒号
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しおりを挟む――それから、3人は無事にチユニの元に帰ってきた。ハクトとライトは医療室へ、ヒロキはチユニに事情を聞かれて説教されたのち自室へ。
事情を聞かれるよりも説教の方が倍以上長かったが、話の内容をヒロキは覚えていない。全部、完全に聞き流していた。それはもう見事に右から左への通り抜け。
チユニもそれに気づいていたのだろう。最後にはその態度にあきれ果て、部屋から出ることを禁じた。
「ふぅ、見張りなしの軟禁かよ。主も甘いよなぁ。あとでレンマから話を聞くか」
実はすでに、レンマも帰ってきている。教室で勉強していた偶数号が現場に駆けつけたものの、ヒロキ達が撤退してすぐに黒い影は消えてしまったんだと。
だからレンマ達はヒロキが説教されている途中で帰ってきて、ヒロキと入れ替わりにチユニと話をしている。
これからチユニは戦闘部長と諜報部長と長い長い会議に入るのだろう。なにせ異例の事態だ。月の卵もないのに襲撃されるなど、ましてや黒い影の男が新たに出現するなど。
黒い影は消えてしまったが、そう遠くまで移動していないはずだ。と、さっそく部屋を抜け出そうとした時だった。
「っ!く、うっ……」
突然、ヒロキの全身を激痛が走る。心臓をわしづかみにされ、ギュッと強く握られるような苦しみに息が詰まり床に膝を突く。
両手で胸を押さえ、どんどん早く激しくなる鼓動にきつく目を閉じる。声が出せなくても、他の月子に心の中で助けを求めることはできる。が、しない。
すぐに治まる発作のようなもの、死ぬわけじゃないとわかっているから。自分への罰として1人で耐える。
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