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柒号
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しおりを挟む痛い。苦しい。辛い。心臓が大きく脈打ち、呼吸がさらに荒くなる。生み出される衝撃波が強くなり、無意識に浮遊する物がライトに襲いかかる。
心がこれ以上傷つかないよう、防衛反応。ティッシュの箱、本、ペンが次々とライトに体当たりする。
ライトという名の体内に侵入した病原体を排出、殺そうとするヒロキの心。次第に物が大きくなり、ユラの道具箱から予備のクナイが飛び出した。
真後ろから飛来するクナイに気付いているし、避けることもできるライトは、しかし動じない。微笑み、優しくヒロキを抱きしめた。
「俺はヒロキを愛しているよ」
「っ、やめろッ!だめだッ!!」
瞬間、ヒロキの心は崩壊した。壊れたヒロキの心は閉じ込められていたハルヒの心とライトの心に包み込まれ、新しく生まれ変わる。
我に返り顔を上げ力強く突き出された手から放たれた衝撃波は、ライトの背中に突き刺さろうとしたクナイを弾き飛ばした。
「はぁっはぁっはぁっはぁっ、はぁ、はぁ、はぁ……っ」
手を伸ばしたまま、ドッドッドッドッと激しく叩く心臓を落ち着かせようと荒い息を吐く。危なかった。本気でヒロキの心はライトを殺そうとしていた。
「………………うわぁー……怖かったぁ。でも、信じてたよ、ヒロキ」
「ふざけんなよ、馬鹿ライト。マジで、俺も怖かったし。えげつねぇ愛の告白だこと。はぁ。マジでありえねー……」
止めていた深い息を吐き、グッタリとヒロキの肩にもたれかかるライト。力なく笑い脱力。まだ体が辛いはずだ。
誰よりも怖かったのはライトだろう。全てをわかったうえで、信頼だけで乗り切ったのだから。これがライトの、仲間を信じる力。
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