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柒号
19P
しおりを挟む彼らが月の子供だと言われる由縁の1つだが、10番目の月子が誕生すれば“拾”となるだろう。しかし、11番目は?2文字になるのか、もしかしたら数字になるのかもしれない。
「俺達ってさ、兄弟はいても親はいないんだよなぁ。マジであの月が産んだなんてありえないし」
「神が……気まぐれで」
「はははっ、気まぐれすぎるでしょ。まさかユラが神様だなんて言うと思わなかったなぁ。でもまぁ、そうかもしれないね。会ってみたいな。会って、俺達を産んだ理由を聞きたい」
「理由、か。もう1人の神が生み出してこの世界を壊そうとしているハウンドやリンクスを駆除するため、対抗す――」
「わぁー、ユラ、大丈夫?君にしてはよくしゃべるし、ド偉いファンタジーなこと言っちゃってるけど?」
「…………半分、冗談。半分、本気だ」
笑えない。ヒロキの笑顔が引きつった。本当に、ユラにしては有り得ない発言だ。神様だの世界を壊すだの、どこからそんな考えが出てくるのやら。
2人は同時にまた月を見上げ、笑った。ユラは目元の力を抜きわずかに口角を上げ、ヒロキはそんなユラの肩をバンバン叩いて肩を震わせ大笑い。
ユラは冗談を言うような性格ではないし、冗談が通じないタイプだ。だからこそ今のこの時間が珍しく、ヒロキにはくすぐったく感じた。
お互い今日は、良いことがあった。心が軽くなったのだ。ひとしきり笑い合った後「ふぅ」と息を吐くと月に背を向けた。
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