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参号
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しおりを挟む「数年前、あなたが殺したと言われている男の子は私の弟です。あの時のこと、私は全然怒ってないし恨んでませんから。だから今のあなたに怒っています」
「なっ……え?あの時の…………えぇ?」
いきなり強烈なビンタを食らい頬を押さえることもせず茫然としているレンマは、女性を見つめる。
レンマの闇に深く関わる人物が目の前にいる。しかもまさかいきつけのゲーセンの従業員だったとは。数年でも子供の成長は早い。
言われるまで全く気付かなかった。よく見れば昔の、あの時の子供の面影がある。
「あなたはあの時、命がけで私達を守ろうとしてくれた。でも弟はあなたの真後ろにいたハウンドが怖くて飛び出した。あなたが殺したんじゃないのに自分のせいだからって全て受け止めるのはやめて」
「ごめん。けど、わいがもっと早う動いとったら、弟君は助けられたんや」
「だから殺したも同然?違うでしょ。嘘を真実にしないで!そんなの、私達に対する冒とくよ……」
女性は涙ながらに語った。弟を失って以来またレンマに会いたい、会って話がしたいと思った。嘘の噂を知ったから。
でも月子研究所に行くのは怖い。だから学校に通いながら、あのゲーセンでバイトをするようになった。
レンマがゲーセンを転々としていると聞いたから。いつか自分の所にも来ると信じて待った。そして再会したが、彼は自分のことを覚えていない。
あの時の怯える女の子と、背がグンと伸びて大人っぽくなった女性とでは一見別人と思えるくらいの成長ぶり。
彼女は待ちに待った再会に喜んだ。だが声がかけられない。弟が死んだのは自分のせいだと思い込んでいるのだから、名乗り出れば彼を傷つけてしまうと思ったから。
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