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黒いカラス
3P
しおりを挟む黒いまぶたが開かれ、異様にギラつく金色の瞳が姿を現した。まさか。大きな象に使う麻酔を10本も打ったんだぞ?20分で切れたというのか。
物を破壊する咆哮を封じるため口には強固な金属の口輪をはめているが、もはや変態チックに密着していればカラスの小柄な体などすぐに壊されてしまう。
慌ててサクマが1歩踏み出し、彼女の肩を引っ張り下がらせるとハウンドの背後から体を押さえつける。
「へぇ、早いね。その特注の拘束具も壊されちゃうのかなぁ?ちょっと検証してみよう」
「検証するな!くそ、何て力だ……もうヒビが入っている。壊れて逃げられたら嫌だろう!?さっさと麻酔を打てっ」
「あー、解ぼ……研究のお預けは嫌だね。よいしょっ……」
サクマが体を張って守ってくれているというのに、研究のことしか頭にないカラスは両手に麻酔が入った注射を持って渋々、黒いオーラを発する黒い体に突き刺した。
一気に麻酔を入れてすぐに抜き、また新しい注射を両手に持っては突き刺す。を、6回繰り返す。
途中で暴れるハウンドに力負けしたサクマが飛ばされ尻餅をついたが、そこへすかさず5羽の小カラスが参戦。
黒いハウンドに黒い小カラスが襲いかかり、しかし小カラスは怖かったのか威嚇しかしない。すぐに復活したサクマが覆いかぶさると、小カラス達は薬品棚の上に並んだ。
カラスは的確な場所に、的確なタイミングで麻酔を注射していく。ふざけてはいても、“天才”と呼ばれるにふさわしい頭脳を持っているので必要な真面目は真剣に発揮する。
他の人からはただ単に早く研究を再開したいがため、だと思われるが。それもまたカラスの思惑。
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