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本物の偽物
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しおりを挟むつまり、今の彼女の右目にはライトと同じ景色が見えている、ということ。最悪だ。
「あぁぁぁ、嫌だ嫌だ嫌だ。もうほんっとうに嫌だ。僕しかいないなんて。返してよ、ライトを。僕は知っているんだ、ライトは本当は1番諦めが悪いんだって。だから、そこで見ているんで――ぐっあぁぁああぁぁっ!!」
「爆ぜろ。クスクスッ……おしゃべりが過ぎるよね。このアンテナ、触角?面白いねぇ」
「ヤメテ!コロサナイデッ!」
チユニにしがみつき震えているミレイナを背に庇い、新しく習得した血の鎧をまとったハクト。血でできた2本のナイフを手に構えるが、1歩も動けなかった。
血が、ハクトの体の内側で爆ぜた。目から、耳から、鼻から、口から血が噴き出すだけでなく、体のあちこちから皮膚を突き破って血が飛び出す。
全力の本気モードで戦うよりも大量の血を体外に放出し、失血多量すぎて倒れた。体内に戻すことも、できないくらいに血が足りない。
大きな血の池に倒れたハクトの頭にある、昆虫の触角のような髪をつかみ引っ張るアーシルにミレイナがタックル。
元々の体の弱さでもう長くはもたない彼女は、それでも仲間と、主であるチユニを守ろうとアーシルの腕に噛みついた。
「エッ……ライ、ト――」
「痛い痛い。末っ子はおっかないなぁ。って、あれ?口がきけないんじゃなかったっけ?あ、そっか、これか!すっごーい、メカだ!しかも可愛い!」
軽く振り払われただけで尻餅をつき、激しく咳き込むミレイナの頭をガシッと両手でつかむアーシル。
猫耳カチューシャに気付き、子供のように目を輝かせて取り上げれば「ほい、パス!」と、後ろに向かって放り投げた。
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