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涙のあと
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しおりを挟む部屋に入ることは何度もあった、でもちゃんと見たことはなかった。ちゃんと、それぞれらしい生活がそこにはあった。
その1つ1つに触れて、感じて、チユニは心を震わせた。こんなにも人間のように個性を持って、しっかりちゃんと生きた証を残してくれたんだと。
彼らが生きた証は、確かにこの世界にある。場所に、人々の心に、動物達の心に、ちゃんと刻まれている。
「ねぇお月様。あなたが本当にmoon childを生み出したのかどうかはまだ分からないけれど、死なせてしまってすみません。でも私は感謝しています。彼らとの素晴らしい思い出をありがとうございます」
目を開いたチユニは両手を地面の上に乗せ、撫でる。いまだに解明されていない謎、月が月子を産んだのか?
答えはもうどうでもいい。ただ彼女は感謝を述べたかった。謝りたかった。彼らの育ての親として、仲間として、友として。
「ねぇ、お月様。もしも……もしも、私のわがままを聞いていただけるなら、1つだけ……」
そこで、口を引き結んだ。月面を撫でる手に力がこもる。弱いチユニの心がその言葉を吐き出そうとした瞬間、背後で「チユニはもう強くなったんだよね?」と声が聞こえた気がした。
「いえ、何でもないです。大丈夫、私はもう大丈夫。ありがとう」
声にハッと我に返ったチユニは顔を上げ、何かを振り払うように首を横に振った。
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