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家族の記憶
9P
しおりを挟むほとんど完璧に剥ぎ取ったから土台も写真も傷はついてない。中から引っ張り出した写真は裏向けで、小さく“クソガキ”の文字。
俺の字か?表に向けると、子供の頃というよりは19か20くらいの俺ともう1人の人物が写っていた。
写真の写りからして俺が自分で撮ったらしい。マジか。写真嫌いの俺が?合成じゃないだろうな。
そう疑いたくなるほど俺は楽しそうな笑顔を浮かべていて、隣にいる男の子は眠っている。汚いな、よだれを垂らしているぞ。
場所は屋敷の昼間の縁側、柱に寄りかかって熟睡している男の子の傍らには本がある。
これは参考書か?ノートも分厚い辞書も、シャーペンと消しゴムも散らかっていて……うっ!頭が痛ぇ。ズキンズキン奥が響いて、視界が揺れる。
「ノル、大丈夫か?無理せず、倒れる前に見るのも考えるのもやめろ。この写真は完全に、俺が知らないノルの思い出だ」
兄貴が写真を覗き込み、息をのんだ。自分は知らないと。なら、この男の子がリアなのか?
頭痛が酷くなる。片手で頭を押さえ、壁に寄りかかって写真の中の男の子を見つめる。ジィー……
男の子も俺も半袖のティーシャツということは夏か。こいつが見た目のまんまのガキなら、散乱してんのは夏休みの宿題だな。
その夏休みの宿題を俺が見てやってんのか?何で俺がガキの宿題を?しかも楽しそうに?
でも、よく見ればこの男の子が子供の頃のリアなんだと断言できる。目は閉じていてわからないが、顔のパーツのバランスや体の感じが面影がある。
半パンの裾から延びる脚は昔から華奢で綺麗だったのか、全くゆがみがない。そして長い。
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