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追われる者
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しおりを挟む心配そうにするセイフォンを押しのけ、彼は赤くなった目を擦りながらアタシに手を伸ばした。
「感じたよ、筆頭の魔法。冷たくて、苦しくて…………温かい魔法。なんだか……すごく、体が軽く楽になった。ありがとう」
「何もしてないわ。魔法なんて二次元的なもの、アタシが使えるわけないじゃない。全部、シャオリンが頑張ってできたことよ。よく頑張ったわね、偉い偉い……」
震える2つの手は背中に回され、アタシは彼を受け止め抱きしめる。優しく囁き、ゆっくり頭を撫でる。
シャオリンの方が年上だとか、性別が逆転しちゃってるとかは関係ない。アタシはシャオリンを受け入れ、シャオリンはアタシを心から信じてくれた。
だから彼は乗り越えられたの、自分を。
誰も巻き込みたくないから、誰にも見られないところで1人で苦しむ。人前では明るく振る舞って、1人になると背負っている影に襲われる。
その影をさらけ出す、勇気が必要だったの。それをアタシは、脅迫という形で彼の背中を押した。
上手くいくかはわからなかった。失敗すればさっきのセイフォンのように敵意むき出し。もう二度と信頼してくれないし、スカーレット・ローズを抜けるって言われるかもしれなかった。
でもアタシは信じていたから、シャオリンを。彼がアタシを信じて、さらけ出してくれたから彼は1歩前に進めたの。
「お茶飲みたい。それから………………イチカが握ってくれたおにぎり、取ってくれるかな?」
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