アイデンティティ

那月

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 後にやってきた部下からタオルを受け取った俺は、適当に髪を拭きながら自宅フロアの風呂場へ。可哀想なキセルや銃はあとできっちり手入れしてやるからな。

 
 熱いシャワーを浴び、髪と体を洗う。もしかしたら左頬が腫れているかもしれねぇ。部下の1人が左頬を見ていたからな。

 
 シャワーを頭から浴びながら頬に手を当てる。リアのあの泣きそうな顔、心底傷ついたって顔をしていた。

 
 けどな、俺がそんな素直じゃねぇやつだって知ってんだろ?俺が自分から面と向かって、勢いで告白すると思うか?

 
 心底惚れた、命を懸けて守り通したいって思えるやつに本気で告白するなら俺からするさ。けどな、勢いでなんて青二才がするようなものだ。

 
 しかるべき時に、雰囲気を作ってからちゃんと俺から想いを伝えてやる。それを断るも受け入れるもお前次第だ、リア。

 
 お前との“約束”は、少し見えてきた気がするぜ。足を滑らせたのは、意識がブッ飛んじまいそうなくらい頭に激痛が走ったからだ。

 
 今も頭の奥がズキズキと痛む。あの岩のバツ印。あれがもしも俺が想像しているものだとすれば、リアとの約束はきっと――

 
「ノルっ!池に落ちったって聞いたが、大丈夫か!?どこも怪我はしてないか?頭は打ってないか?」
 

「いっ!うわっ、びっくりさせんじゃねぇよ!池に落ちたくれぇで怪我をするような俺じゃねぇよ、見くびんなっ」
 

 またズキンッ!と頭に電撃のような痛みが走ったのと、ドタドタッと慌ただしく走ってきたアランの声が耳をつんざいたのが同時。


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